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エロゲ レビュー ブログ
【瑠璃色の雪】
瑠璃色の雪 PC98版

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メーカーAIL
シナリオ■■■■■■■■■□ 9.5
グラフィック■■■■■■■■■□ 9.5 (PC98版)
キャラクター■■■■■■■■■■ 10
音楽■■■■■■■■■ 9
お世話になりました■■■■■■■■■■ 10
総合【S+】 95点

記憶に残る冬の暖炉ゲー

評価高すぎないか!?と思われる方もいるかと察しますが、これはぶっちゃけ思い入れ点も込み込みになっているかと。DOS版の発売年が1997年ということですが、このとき僕はエロゲ歴1年目とかでして、初めて骨を与えられた犬のように強烈にハァハァした作品として elf「下級生」と共に記憶に残っている作品です。ですので、今冷静に本作をプレイしてもここまでの高評価にはならないとは思うんですけどね。でもそんな客観的になれない作品として心に根づいている作品です。

とはいえ、ゲームとして実際たいしたことないかと聞かれれば「NO」で、本作の作品完成度は非常に高くDOS版時代のエロゲ代表格と所々で評されるのも納得の出来です。


【シナリオ】
というわけで、瑠璃色の雪ですね。今の感覚でプレイしてしまえば古さや粗さは否めないのでしょうが、そんな文句は言わせないッスよ!

親の死をきっかけにして幼馴染の実家が大家を務めるアパートで一人暮らしを始める主人公。引越しの日に誤って爆破してしまった床下で発見した壺を開けてみるとその中から金髪の雪女瑠璃が現れて……、といった感じなのですが、メインヒロインの瑠璃に加えて、ヒロイン勢は、幼馴染、双子、同級生、後輩、教師、未亡人、バイト仲間、敵対勢力(退魔師)、と幅広く基本的なスペックを抑えており、どのヒロインもその属性に見合った超王道のストーリーです。もうこれぞ元祖!って感じがします。

オカルト色が強いかといえばあまりそういった印象もなく、瑠璃の「雪女」という設定が積極的にシナリオに絡んでくるのは退魔師の綾霞シナリオくらい。他のヒロインルートのときはさっさと主幹からはずれてしまうので、『冬の学園恋愛モノ』といった雰囲気の方が近いかもしれません。特に瑠璃なのですが、メインヒロインを張っていて肝となる設定の中心人物であるというのに、実は父親が淫魔で、それゆえに黒髪のはずの雪女でありながら金髪をしていたり宙に浮いたりできるという設定だけ特徴的であるものの、シナリオ自体は非常に薄い。つまりメインヒロインでありながら一番空気という可哀想な子です。


冬休み直前から物語は始まり、ヒロインにより差はありますが、大体1ヶ月くらいがゲーム期間となります。毎日何か行動を起こすと15分刻みに時間が進んでいくのですが、学園内や街中を歩き回り各ヒロインと出会い小イベントをこなすことで愛情度を上げ、ヒロイン特定イベントを通ると個別ルートに入る、といった感じですね。

システムは、エルフの同級生シリーズを参考にしたような、場所選択と時間経過を基としたSLGとなっていて、当時としてはかなり高い完成度だと思います。時間をつぶすのが億劫な部分もありますが、冬休みという期間内で町中徘徊してヒロインたちと時間を重ねていく過程がよく描けています。


一番良かったのは双子の妹、若葉ルート!普段は強気でノリのいいこのクラスメイトが、ルート内だととても女の子していてイイ感じです。その辺にいそうな女子高生っぽくて。彼女は、成績優秀でおしとやかな双子の姉に対して負の感情を抱えていること(まぁ逆もまた然りなのですが)に加えて、過去に駆け落ちの経験があるため家族と諍いを持っており、それがルート一番の山場である居候騒動につながっていきます。家族とうまくいっていない同級生、という設定がたどる王道的なシナリオ展開で、高校生らしいちょっぴり切ない温かなシナリオです。

各Hシーン前、主人公の部屋での会話や、年明けのバスケシーンは若葉ルートの真骨頂、ぶっちゃけ好きになります。また各ヒロイン、愛情度等に応じてEDが2つずつ用意されているのですが、若葉ルートのED1は全EDの中で一番好きです。普通に別れてしまっていた二人が数年後に同窓会で再会するという、理想を追いがちな純愛ゲーではあまり見られないタイプのビターで大人っぽいEDです。


続いて評価できるのは綾霞、雪那ルートですかね。綾霞ルートは、その退魔師という役柄上、瑠璃の雪女という設定や、主人公の父親の死の伏線などが絡んで一番このゲームの設定が生きているルートかと思います。雪那さんルートは、つつましくも楽しく懸命に暮らす雪那と娘との間に、主人公が新しい父親役として関わりだしていくハートウォーミングなストーリーです。ただ、この人雪女で片親なのにその設定を生かした展開が全くないんだよな、そのあたりがちょい残念(Win版にはあります)。

他、幼馴染の一線を越える陽子ルート、先輩への憧れが愛情に変わった途端に転校という現実に悩む恵ルート、生徒との恋愛を悪しとしてお見合いに走る担任教師の香織ルート、昔の男に美人局をやらされているバイト仲間の美弥ルート、積極的になりたい優等生の双葉ルート、があります。今考えても、どのルートも短めのシナリオながら人間模様や心理描写など、よく描けていると思います。

ちなみにテキスト増量、全原画差し替えのWin移植版もプレイしたんですが、やっぱり98版の方がいいな。新たなシナリオ展開やギャグ掛け合いのレベルが増してるのは確かにいいんですけどね~、98版の原画が大好きだったのでやっぱりどうしても見劣りしてしまいます。また、好感度が低いのに選択肢を誤ると、主人公がヒロインをレイプするという、アイルお得意の陵辱シーンに突入することができまして、これがシナリオに深みを生み出し、エロシーンのバリエーションを広げる味付け役として凄く効果的だったのですが、実はこれも98版にしかありません。何でだ。


だいぶ昔の作品ですんでどれもシンプルで、大きな山も二転三転するような展開も今の長編ゲームほどにはありません。それでも、冬を前面に押し出した雰囲気で、温かな雰囲気を保ったルートばかりです。まさに王道を走る読後感バッチリのテキスト、登場人物のキャラ作りの巧みさに、キャラ同士掛け合いのテンポの良さ、グラフィックもかわいい、Hシーンは濃く、場合によってはレイプになってしまうバリエーションの幅。トータルバランスの非常に高い、エロゲのお手本となるような名作だったと思います。


なので今から瑠璃色の雪をプレイしてみたいという方は、PC98のエミュを入れ、フロッピーディスクの98版でプレイするべきでしょう…といっても大変な手間ですが。。。



【グラフィック】
原画もシナリオ同様リバ原あきさん。シナリオ、原画の両方担当とはハンパじゃないですね。後のWin移植版も実はこの方なんですが、別人としか思えない退化具合。98版時代の絵柄はあんなに魅力的なのに…ということは98版瑠璃色的な絵柄をどこかで見ることはもう無いということですね…寂しい限り。園村姉妹などデザインが一新されていてもはや別人状態なのですが、Win版の黒髪ポニーテールよりも青髪ショートの方が断然かわいい。他、総じてPC98版のが良くてレベル違いすぎます。

あと、ブランド柄そうなのかわかりませんが普通の一枚絵よりもエロシーンの一枚絵がとてもうまいです。表情とか構図とか、とにかくエロシーンが濃いんすよ。 ねぇ。


【キャラクター】
全体のキャラバランスはとてもよいです。まず主人公がちょっと異色で、オタク系のくせにかっこいい。メガネ君で発明ばっかしてるド理系引きこもりタイプであるというに、言うこと為すこといちいち面白くてかっこいんすよ。そんなギャップがたまらないのか女子どもに非常にモテる主人公です。また彼と、陽子の兄である寿との掛け合いは非常に面白いです。

ゲイの店長や、マッドサイエンティストの科学部長、イケイケな香織の友人など、サブキャラもクセがあって面白いキャラばかりですね。

一番好きだったヒロインは双子妹の若葉と雪女未亡人の雪那さん。ふたりとも元気良くてさっぱりした性格ですんで、プレイしていてとても気持ちがよかったのを覚えています。実際こんな人いたら引くわ、という変人ヒロインや萌えヒロインが多い18禁ゲームという世界ですんで、竹を割ったようなキャラと気持ちよく結ばれる展開は普通ではありますが凄く好きですよ。ちなみに雪那さんのおかげで若妻属性開眼っすよ。そのアネさん気質なノリの良さや余りにも所帯染みた貧乏キャラが哀しい哉ギャグとしてうまく機能してしまっているため、シリアスな恋愛シーンや随一に濃いエロシーンとのギャップに萌えます。

こういうことは気づきにくい部分なのかもしれませんが、このゲームに出てくるヒロインたちは、とても「等身大の人間らしさ」に満ちています。上記もしましたが、この手のゲームの女の子キャラというものは、超人であったり変人であったり、またオタク共の理想を追求したような性格やノリであったり、やはりそれはゲームの中でのこと、なかなか現実味に乏しいことが多々あります。しかし本作のヒロインたちは、皆その発言や行動、考え方などが妙にリアルで、現実にもその辺にいそうな感じがするようなキャラばかりで、そこが本作にそこはかとなく惹きつけられる理由のひとつなのかもしれません。


【音楽】
これといって特筆するものも無いですが、鋭い笛の音を使ったり、シンプルにアレンジされたBGMは真冬の凛とした雰囲気によくあっていましたし、温かいシーンや屋内で使われるBGMもじんわりとよく馴染んでいたと記憶しています。基本的にはシナリオ自体が起伏の少ない穏やかなストーリーなので、音楽もそれに併せて控えめな感じにしたという印象です。古い作品ですんで、あまり高い評価はしづらいですが、それでもいまだに思い出せるBGMなんかもあったりするので、いい印象を持って頭に残っているということでしょうね。


という感じで瑠璃色の雪です。
とにかくPC98版瑠璃色の雪は僕にとってのある種バイブルでしたよ。マジで。



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【闘神都市Ⅲ】
闘神都市Ⅲ



メーカーALICE SOFT
シナリオ■■■■■■■■ 8
グラフィック■■■■■■■■■□ 9.5
キャラクター■■■■■■■■ 8
音楽■■■■■■■■ 8
不遇感■■ 2
総合【A】 84点

名シリーズゆえのハードル

アリスソフトの年末リリースであることに加えて14年ぶりの闘神都市シリーズ、ということで、2008年最大級の期待をもって迎えられた本作ですが、あまり世間の評価は芳しくないようです。ですがプレイしてみると、確かに突っ込みどころはあるものの、そんな言うほどじゃなくね?むしろ良くね?という十分すぎる出来です。作品にかかる過度の期待、そしてそれ以上の結果をさらりとこなす体力を持つアリスソフトだからこその厳しいハードルだったといえます。

【シナリオ】
闘神都市で毎年開かれるトーナメント式の闘神大会――、出場者は女性をパートナーにすることを義務づけられており、勝利すれば対戦相手のパートナーを24時間好きにできる、また優勝者には「闘神」の称号が与えられ、闘神だけが入ることのできる特区での豪奢な暮らしが生涯保障される……というのが闘神都市シリーズの共通設定ですね。

闘神になったもののそれっきり失踪してしまった父親の消息を確かめることと、剣士としての自分の腕試しのため、闘神大会に出場しようとする主人公ナクト・ラグナードと幼馴染の羽純・フラメル。ふたりが幼少時に影響を受けたカラーの戦士レメディアや屈強な各出場者が集う中、ナクトはその手に優勝を掴むことができるのでしょうか…てのがⅢの導入になります。

シリーズ前作「闘神都市Ⅱ」が発売された14年前は、僕はこの手のゲームは全くやっていませんで当然今も未プレイなのですが、Ⅱは既プレイの方々から神ゲーとして崇め奉られていますね。

皆さん感じていることかもしれませんが、確かに主人公のナクト君はまったく成長しません。大局を見ずして不条理に対して一人つっかかっていく青さは、別にイライラするようなことも特にないですが、自分のスタンスと闘神大会の現実の差にあれだけ打ちひしがされた1年目があったのですから、せめて2年目の段階ではもう少し人間的に変わっていてほしかった。ライバルたちの倒し方も、腕をあげるというよりは弱点を探すといった感じで、爽快感に欠けます。自分が強くなるのではなく、相手を弱くするロジックですからね。あとは、回想シーンが非常にたるい。たいして内容が無いのに、時系列がバラバラに出てくるので、いまいち判然としません。

ついでに、2年目で晴れて闘神になった後、それまでのキャラが以降まったく出てきません。シナリオはもちろんのことエピローグすらありません。これは正直かなり寂しかった……。キャラクターの広げ方がうまいアリスだからこそ、そこのフォローは欲しかったような気がします。

ま、でもそこらへんからの物語展開は凄かったですけどねー。梨夢がコワイコワイ。絵とかもう怖すぎ。それから、闘神市長、市長夫人、そして前半からよく出てきていたフィオリ、闘神ボルトの本当の狙いと正体も明らかになり、最後は怒涛の展開が待っています……だからこそそれまでのキャラを使ってよ!!ということです。

でもやっぱりプレイしだしてからクリアまで一気にやってしまったのも確かなんで、面白かったんですよね。アリスソフトが作る、唯一無二の世界観は健在でしたし、奇人たちも満載でした。古畑ならぬ畑中さんも突飛ながらも言っていることが絶妙にセンス良くて笑えたし。

また、ランスシリーズで設定として活かされているルドラサウム世界がベースになっていますので、ランス好きならところどころで描かれる設定自体を楽しむことができます。魔人なんかはストーリー上よく出てくるものの、悪魔に関する描写がほとんど出てこないランスシリーズですので、今作で色々と描かれたのは良かったです。エティエノが具体的に登場するなんて誰も予想してなかったでしょうし。こうやって作品を超えて設定がリンクしていくのって制作陣の勢いを感じますね。


【グラフィック】
キャラ絵ですが、メインのMIN-NARAKENさんの絵が非常に良いのに加えて、織音さんの絵が個人的に大好きなので、死角なし。このふたりの絵は、好きな絵師をあげろと言われたらあげるであろう二人なので、満足です。アリスは枚数も多いし、背景も文句なしにきれいなので、なんら不満に思うところはありません。羽純、ハムサンド、エティエノの絵がかわいすぎる。

前作がどうだったのかはわからないのですが、2年目がある、というのは驚きました。そこまでが布石で、物語の折り返しでOPが流れた時はかなりグッときましたね。確かに公式HP上で紹介されているのにほとんど出てきていないキャラもいましたし、それまでOPムービーが流れていなかったので、そうといえばそうなのですけどね、気づきませんでした。街から締め出され、1年間修行し、再度戻ってくる時間の空白をアップテンポな曲にのせてOPムービーで表現したのはとても効果的だったと僕は思います。インパクトもありました。

それと、戦闘シーンが3Dなのですが、別に3Dである必然性は感じませんでした。システム的にも、ランスや大悪司などで使われている形式のほうがゲーム性があります。今後の作品に向けての実験的な意味合いもあったのかもしれませんね。


【キャラクター】
さすがのアリス、魅力的なキャラクター満載です。個人的に好きだったのは、男性キャラだとあまりにもいぶし銀の鉄騎臣と豪快な親父ボーダー・ガロアですかね。あとは主人公の親父レグルスが好きだったんですが、復活後もうちょっと活躍してほしかったな。おっさん復活後も足ひっぱってんだもん

主人公ナクトは、皆さんが言うほどヘタレてはいないと思うんですよね。最後の方とか男らしかったし。ただまぁランスや悪司と比べたら、圧倒的にカリスマが不足していることは否めないです。男性キャラの造形も非常に強いアリスソフトですが、本作は主人公含めて総じて弱い印象ですね。

主要どころの女性キャラだと、羽純と桃花が好きでした。特に桃花は、最初はお兄様お兄様ちょっとうざかったのですが、二年目でのナクトに対してツンでありながらもしっかり協力してくれるところとか、最後まで実に良い働きをしてくれました。
メインヒロインの羽純とレメディアは前半は良かったのに二年目からはほとんど出てこないためちょっと印象が薄れがちですね。でも羽純の声の人、彩世ゆうさんという方ですが、とてもいい声してます。これからもチェキします。

対戦相手だと実は双子のハムサンドと、チョイ役と思いきや結構ストーリーに絡んできた盲目の少女エムサさんが○。素直で元気いっぱいなナミールと、対照的に落ち着いたキャラのエムサさん、ともに魅力あります。


世間的には虫使いのアザミが大人気みたいですね。ぬへーっとした飄々さとわたあめ食べてる時などの花が飛ぶ立ち絵がかわいらしい。二年目はなにせパートナーなんで、そりゃあメインヒロインたちを喰ってしまいますよね。

ま、でもハッキリ言って主要キャラたちよりも町の住民のほうがキャラえらい立ってましたね。「いいのいいの気にしないで」が頭に残る宿屋のマルデさん、アホ毛が取れると180度性格が変わる道具屋リココ、最初からナクトに好意的な酒場のアリサ(と伊集院さん)もかわいかった。色情狂の記者シャリーや性堕修道女ポロロム、転落貴族の呪師タタールもストーリーへの咬ませ方がうまかったです…等々、まぁお遊び要素が入るキャラはよく生きるってことすね。

うーん、こう書くと、やっぱり男性キャラが女性キャラに比べて弱いかな……とはいってもそれはランスなどと比べてってだけで、普通に考えたら十分すぎるほどなんですが。


【音楽】
OP、EDの「get the regret over」は、アリスらしいゴリ押しのギターリフとロックなドラムでかます曲です。片霧烈火さんはこの手の曲によく合いますね。人選正しいです。

BGMは全体的によい出来で、さすがのアリスといったところ。「get the regret over」をアレンジしたラストダンジョンの曲や、最終決戦のギターが唸りまくる曲はかなり燃えます。あと「Hazumi -lovers-」「sweetz」が、メロディとアコースティックな音色が綺麗で良かったかな。


以上闘神都市Ⅲでした。
はっきり言いますが、これは十分良作の部類に入ります。いろんな評価サイトで叩かれていますが、それは闘神Ⅱが凄すぎたというだけで、この作品をアリスソフト以外のどこかが出していたら、かなりの話題になりえるレベルの作品だと思います。



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【終末の過ごし方】
終末の過ごし方



メーカーアボガド・パワーズ
シナリオ■■■■■ 5
グラフィック■■■■■□ 5.5
キャラクター■■■■□ 4.5
音楽■■■■■■ 6
寂寥感■■■■■■■■ 8
総合【D】 53点

語らない美学

変わったソフトをサクッとやりたいなーと思った時に勧められてプレイしてみた「終末の過ごし方」です。確かに半日もかからずにサクッと終わった上に、設定がド変化球の作品でした。1999年4月発売の終末ものなので、ちょうどノストラダムスだなんだと終末ブームが過熱していた時期でしょうかね~。

【シナリオ】
週末に訪れる世界の終末。でも「スワンソング」や「クロスチャンネル」的な退廃的大作を期待しちゃいけんです。何もかもがあっさりしています。ただ、その"あっさり風"に敢えてもっていくという、上記2作とはまた違うアプローチを以って退廃感を出すことに成功しています。これは評価できる。短い制作期間と、色々なあるべきものを削ぎ落としたテキストで逆に「終末の過ごし方」という世界を確立させているのは、見事でした。

ただ、雰囲気作りの一点突破にはベターだったとはいえ、それはつまりシナリオやキャラの薄さにもつながるわけですから、まぁ隙間にプレイするライトなソフトってイメージがどうしても強くなってしまいますよね。それは致し方ないところですし、制作側もわかっているところでしょう。


基本的には世間が終末を受け入れたその後の世界の話なので、とても穏やかです。ただ、毎日冒頭に流れるDJ WALKのラジオ番組、これが世界が終末に向けて動いているということを実感させる唯一の媒体となります。日常生活場面で、何か狂気的な描写が描かれたり、残酷なシーンが描かれることは全くありません。あくまで語らない美学を貫き通しているのですね。作品スペックからするとこの判断は◎。

もう通わなくてもいい学校になんとなく通ってしまっている主人公のメガネが、憧れているクラスメートのメガネや、幼馴染のメガネ、心臓病のメガネなどと最後の週末に心を通い合わせるゲームです。


【グラフィック】
線が細く薄い塗りの水彩画調のグラフィックで、儚げです。これといって好みの画風でもないのですが、高橋しんみたいな印象をちょい抱かせます。終末という意味では「最終兵器彼女」の影響を受けている感じです。

あ、でも時期的にはこっちのが早いのか。 え、それって凄いことかも。


【キャラクター】
終末もので何故全員メガネなのかが激しく謎ですが、そこは考えてはいけないとこなのでしょう。唯一主人公の男友人でメガネをかけていないのがいるのですが、こいつもコンタクトです。ヒロインのうち二人は主人公と結ばれるわけでもなく、サブキャラと結ばれます。また、メインヒロインと思しき優等生風メガネっ子が援交経験者であったりと、実にひねくれた設定を起こしてきています。ま、まぁ、この作品を純愛系大作として心待ちにしていた人ってのもレアケースだと思いますし、ここは受け入れましょうね。

メガネっ子好きにはたまらない設定なのでしょうか……取り立ててメガネ好きではない私にはわからない世界です。縁のあるオシャレメガネとかは大好きなんですけどね~、普通のガリ勉メガネばっかなんだもん。

その中でもキャラが良かったのは、まぁ強いて言えば保健室を診療所として開放している留希先生でしょうか。彼女のあけすけな性格は、この終末を迎えようとしている世界にとって少し浮いており、だからこそ大切にしたくなります……が、彼女はサブキャラとくっついてしまいます。


【音楽】
音数を必要最小限まで少なくした音楽、空きすぎている間が非常に寂しく、終末感を否が応にも煽ります。この作品の中では、音楽が一番評価できるかな。


以上、終末の過ごし方でした。終末もののゲームは根強いファンが多いですが、この作品も例に洩れずファンが多そうですね。ちょっと空いた時間や大作と大作のつなぎにはいいと思いますです。



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【さかあがりハリケーン】
さかあがりハリケーン



メーカー戯画
シナリオ■■■■■■■■ 8
グラフィック■■■■■■■■■□ 9.5
キャラクター■■■■■■■■ 8
音楽■■■■■■■□ 7.5
丸戸風味■■■■■ 5
総合【A】 81点

日常とは斯くあるもの

いや、個人的にはなかなかツボでした。“個人的に”という言葉を使ったのは、どうやら「期待しすぎた」というのが大方の評価のようだからですね。まぁそれもわかります。戯画+ねこにゃん+学園モノというと、どうしても超名作「この青空に約束を―」を想起してしまいますし、それと同等の雰囲気は事前情報からも満載でした。むしろそれ以上の期待感が持てる設定だったといってもいい。実際、ねこにゃんさんの画力はこんにゃくをはるかに上回る魅力を放っていましたし、テキスト自体もかなり丸戸さんの書き方を意識していると感じました。「~なわけで。」とかね。


【シナリオ】
……とまぁそういわけですがこの作品は、木緒なちさんが描く、普通の生活をベースにした普通の学生たちによるごくごく普通の物語です。「この青空に約束を―」のように、これでもかというほどの温かい泣きと、それを為す際の熱さが際立つシナリオ展開ではありません。もっとライトで普通です。シナリオも短めです。そこが多くのユーザー的には肩透かしだったのかもしれません。これだけの材料が揃っているのですからもっと“狙って”ほしかったのでしょう。


ただ、僕はこの作品かなり好きです。

まずひとつ、なんといっても雰囲気が抜群です。ほどよく都会でほどよく田舎、そこにいるのはごくごく普通の高校生と、地元に根ざした市民たち。「学校を楽しくしよう」「学園初の文化祭を開こう」という無理のない高校生らしいテーマに則って、ストーリーは爽やかに進んでいきます。

駅前がそのまま作中背景に出てきた聖蹟桜ヶ丘と、奈都希ルートでみなとみらいが出てきていたので保土ヶ谷あたりもかな? つまり坂の多い多摩丘陵の住宅地を舞台にしているわけですが、この東京近郊の住宅街というあまりにも現実感溢れる舞台が、日常的な高校生活という作風に実にマッチしています。


もうひとつ、日常的な気だるい描写というものが好きです。わたくしごとですが、僕は派手で心躍るハリウッド映画よりも、静かで台詞の間(ま)を持たせるような日本美的な邦画の方が好きです。どちらが映画として優れているかはまた別の話ですが、つまり僕は、「普通」であることのリアリティ、こういった要素は個人的にツボなのです。ゆえに、特に非現実的な事件が起こるわけでもなく、超人的なキャラがいるわけでもない、主人公たちが等身大の生活を送るだけのこのテキスト、実にツボでした。"普通だ"とはいっても、木緒さんのシナリオはテンポよく読ませる力を持っていますし、キャラも皆魅力的でしたので、だれることもなくおもしろおかしくサクサク進んでいきます。


何かと比較されてしまった対丸戸作品、確かに「この青空に約束を―」のライター丸戸史明さんは、その「現実的」という制限内で大きな感動を描く技術に長けています。でもゆえに、なんとなく普通のまま終わるべくして終わる「普通」、ちょっとわかりにくいですが、そういった"小さくまとまるリアリティ"にはやや欠けるのだと思います。

皆でがんばっているのは、現実の自分たちでも出来るレベルの当たり前のこと。現実の高校生活に見合った出来事や人々。ゆったりと穏やかに流れていく時間。その高校生特有の気だるい生活観をそのまま使うことは、大きな事件や感情の起伏が求められがちなこの手のゲームにはそぐわないかもしれません。が、それで良かったと思います、さかハリです。


さてさて、最もシナリオ的に優れていたのは奈都希ルートだと思います。奈都希にばかり焦点が当たるのではなく、絶妙なバランスですべての登場人物が生きている部分が好感度大、親世代がなしえなかった夢を子供の世代で果たすという題材も非常に温かかった。学園祭オープニングイベントを飾る主人公巧と奈都希の二重奏、母親との確執ですっかりコンディション最悪の奈都希……。案の定ミスによりくじけそうな時に母親が登場という狙いすました感満載の展開も、わかっていながらもホロリときてしまいます。

触れておきたい部分として、さかハリでは主人公たちの親世代がストーリーに深く食い込んできていました。彼らは学生時代、同じように学園祭を開こうとして大人の事情から失敗に終わったというトラウマを抱えています。そのトラウマに固執する奈都希の母親と、それを克服し子供たちの背中を押してやりたい巧やヤスの父親たちの和解が奈都希ルートでは重要テーマとなってきます。ハルルートでの妊娠騒動における、巧の父親やハルの保護者である校長の包容力なども欠かせない要素でした。地域社会の苦悩や親の責任などもテーマとして文化祭に組み込んだり、この手のゲームではあまりクローズされることのない親世代のマストぶりは、コレコレ!コレだよ!と思わせる設定でした。

一番好きなのはそのハルルートです。敢えて利用した「妊娠」という禁じ手とも言うべきテーマをもとに、友達、親の協力を得つつ"家族"を作っていく大団円的なシナリオは、ラストにプレイするのがふさわしいですね。最後の擬似結婚式での巧の挨拶と、ハルと吟次の涙にはこちらもグッときてしまいました。ちょっと無鉄砲やなぁ~と思うところも高校生っぽくていんじゃないすかね。思い込んだらまっしぐらだからなぁ、この年代は(遠い目)

あ、あと涼ルートの「夜の卒業式」、これ凄くいい発想ですね~。花束贈呈が花火とか最高に心に残るじゃないですか。彼女のルートはゆかりルートと対になっていますが、こっちですべてが語られますし、ゆかりも涼ルートの方がいい働きをします。ルート前半で涼がゆかりに投げかける言葉をそのままゆかりが涼に返すシーンは泣きです。テーマは過去との決着ですかね。これもまた暖かいハッピーエンドです。

…と、まぁ木緒さん結構好きなので基本的に褒めてばかりいますが、やはり個別ルートの薄さは否めません。正直、学園祭開催決定までの共通パートが一番おもしろい共通ルートでは皆で盛り上がっている雰囲気がよく出ていたものの、個別ルートでは、「ん? 何この急展開」と、シナリオの短さゆえに、二人が過ごしているはずの時間や仲間たちとのコミュニケーションが薄く見えてしまう場面も正直それなりにありました。

推奨順は、奈都希⇒涼⇒ゆかり⇒ゆじゅでじゅ⇒ハル これでガチ!
特にゆかりルートより涼ルートを先にやっておかないと、ゆかりルートは何が何だか……?になってしまいますよ。


【グラフィック】
ねこにゃん無敵。いいですねーこの人の絵は。パルフェ、こんにゃく時代よりもさらにうまくなっています。キャラグラは、僕が今までやったねこにゃんゲーの中でもトップクラスですね。めちゃくちゃかわいいし表情も魅力的、すばらしっすね。

そして、背景!背景凄すぎるんですけど。淡い色調で文句なしに綺麗なうえに非常に緻密で、更にその豊富さも満点です。このシーンだけのためにこれほどの背景CGを!という場面も多々ありで、驚嘆を隠せません。背景の閲覧メニューを作ってほしいほどです
メニュー画面でも使われている坂の上から街を見下ろす景色ですが、思えば戯画HPでさかハリが発表された時もこの背景画が使われていました。「振り返っても"元気"になる―」という文言、奈都希グラフィック、そしてこの背景。衝撃を受けたものです。

いやもう、本当にグラフィック関連は非のつけどころのまったく無い文句なしの出来!文句なし10点!! ……と言いたいのですが、一枚絵CG数が少ない、あまりにも少なすぎる。もうちょっと何とかならなかったのかなぁ、とは思うものの、まぁ逆に立ち絵とエフェクト、前述の背景が非常に多いため、そこまで気にはならなかったというのが正直なところではありますけどね。


【キャラクター】
上記したとおり、ありふれた高校生活の中で、等身大高校生としての範囲内で動き回るキャラクターたちは非常に魅力的です。主人公は確かに事前設定では物凄い求心力を持ったカリスマなイメージを抱かせましたが、実際のところはきっかけの動力になったあとは、仲間と共に悩みながら行動する普通の男の子でした。でも元気よく責任感もあるので好感度は高いですヨ。どなたかのレビューに、「台風は発生時には暴風だけど、一度進みだしてしまうと中心は静かだ」のような表現がありまして、これは見事に言い得ているなぁと思いました。

ヒロインは努力型ドジっ子、姉さん幼馴染、頭脳型無口少女(実は明るい)、お天気転校生、コンプレックス地味っ子と、この手のゲームの定番設定どころがバランスよく揃っている感じです。その中でも、主人公一派として常に大活躍する高スペックガール、ハルが一番のお気に入りヒロインですかね。彼女の健気さと、無鉄砲に見えつつもその実気ぃ使いなところはたまんない。個別ルートでの巧への気遣いと二人の空気の作り方とかすごくたまんない。無茶してるようでいい女でした。

続いて良かったのは、メインヒロイン奈都希、時に元気に時にしおらしく、萌え度抜群でした。周りとバランスとるために存在しているような柚も、シナリオは弱かったものの、かみかみキャラと声はとても生きていました。他ヒロインルートの時の方がいい味出してたかな、柚は。それから、クールにふるまいつつも実は明るい猫かぶりな涼も大好きですよ。Sっ気たっぷり風音さんの声が見事にはまったゆかりも魅力的でした。

しかしなんといってもヤスでしょう。ヤスあってのさかハリ(笑)。「主人公の信頼を受ける魅力溢れる男性友人キャラクター」というのは、名作足らしめる要素のひとつだと僕は常々思っています。ヤスは笑い9:熱さ1くらいの割合ではありましたが、両サイドで活躍してくれました。

親世代連中や、脇役のグリグラ、ルートあんのかよ!の安野加代先生も脇役なりに出すぎず引きすぎずいい感じ。あ、でもユミ先輩の設定と歩先輩の発明品はシナリオ立てていくのに際してちょっと反則技だな~。キャラ自体が良かったのであまり気にならないのですが、そこだけ非現実設定作んなくても……と思いました。



【音楽】
OP、EDは可もなく不可もなく実に普通。BGMの方が良かったですね。メインBGMになっている「愛しき暴れん坊」、これは作品によく合ったコミカル調の曲ですね。それから、泣かせ所で流れる「明日が楽しくあるために」、巧が校内放送をジャックした時などに流れる「回りきった後で」あたりはとても印象に残っていますし、何度も上記している「普通さ」「優しさ」によくあった暖まる曲が多いです。


以上さかあがりハリケーンでした。
青春ものは凄く好きなんだけど、プレイ後に凹むわー。



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【こなたよりかなたまで】
こなたよりかなたまで



メーカーF&C
シナリオ■■■■■■□ 6.5
グラフィック■■■■■■■ 7
キャラクター■■■■■■■ 7
音楽■■■■■■■■□ 7.5
なんという肩透かし■■■■■ 5
総合【C+】 69点

MOTTAINAI

熱烈なファンを多く持つ、2003年におけるF&C渾身の一作。僕が知ったのはごく最近なのですが、F&Cで旧作だってのにプレイを決めたのは、とにもかくにもOPムービーを見てしまったから、そして「かにしの」で知名度を大きく上げた健速さんがシナリオ担当だったからでした。

【シナリオ】
病により死期が迫った主人公とその周囲の人々の暖かい話です。加えてクリステル・V・マリーという不死の吸血鬼が出てきますが、彼女のルートを除いてあまり本筋にその設定は作用してきません。シナリオはいまや人気ライターの仲間入りの健速さん。「遥かに仰ぎ、麗しの」でも感じましたが、穏やかな世界観と優しいキャラクターを描くのが非ッ常~~にうまい方ですね。この作品からもその雰囲気は万遍無く発揮されています。彼の真骨頂であると聞く「そして明日の世界より――」もプレイしてみたいところです。

ただ本作惜しむらくは、短いっ…!設定も素材もすばらしいのにその設定を生かすだけの量が圧倒的に足りない。どのルートも主人公の死に対して中途半端に終わります。もちろん余韻をもって終わるというのもありだと思いますし、そうすることで完成度が高まることもあるのですが、こと主人公の死という前提で走っている本作に関しては、その事実としっかり向き合って乗り越えるシーンを描ききってほしかった。特に幼馴染の佐倉佳苗ルートでそれを如実に感じました。

 ◇遥彼方・・・主人公。佳苗に自身の死を言い出せず(言い出さず)にいる。
 ◇佳苗・・・彼方の幼馴染、彼方が死ぬことを知らない。彼方のことが大好き。
 ◇耕介・・・彼方の親友で彼方が死ぬことを知っている。佳苗のことが好きだが、佳苗が彼方のことを好きなのを知っている。

この設定は神設定でしょう。設定だけでご飯三杯はいけそうです。こんな設定ですので、ベタベタにガッツリ生かして欲しかったのですが、実際のところは佳苗が自ら気づいて比較的サクッと受け入れて、すぐに前向きな歩みを進めてしまうんですよ。それはもちろんすばらしいことなんですが、求めてたのちがう!これ僕の泣きちがう!死を知るときの衝撃、彼女の中における大きな葛藤や、彼方の死を介しての耕介との絡みなど、彼女の物語はこう言ってはなんですが、「容易に」感動的に掘り下げることが出来たはずです。もっともっと膨らませてほしかったなぁ。これは本当にもったいないと言わざるを得ないですね。

同様に、クリスを囮として使いながら魔物を一掃する使命を負っている二十重ルートでも、患者の死と毎日向き合っている看護婦いずみルートでも、「彼方の死」という設定は、もちろんそれが大前提にあるからこその「こなかな」ではあるのですが、直接的にシナリオの山場への布石として使われていないのですね。

ここは、僕の期待とシナリオの狙いにズレを感じている部分で、本作は、彼方のどうしようもない運命をヒロインと共に乗り越えるのではなく、救われているのは常にヒロイン側なんです。彼方は自分の死に対する葛藤を既に受け入れているので、かなり達観してしまっていて常に救う側に立ってしまう。これが切なくもあり、シナリオ的にはもったいなかった点であるといえます。

物語冒頭で、彼方の身体にかかる負荷を知らされる強烈な場面があります。学校で教師たちに気を使われている場面や、病院での最初の場面など、非常に死が私生活に食い込んでいるものとしてリアルに描かれます。それほどまでに死の近さを見せ付けたのだから、そういった側面を土壇場まで泥臭く生かし続けても良かったのではないかなあと思いました。


クリスがシナリオ、キャラともに群を抜いていたと思います。クリスのみENDがふたつあり、ENDとして綺麗なのはBADの方だったかな、と。彼方が決めた自分の在り方、現実を受け入れ世界の流れるままに過ごすこと、これを貫き通し彼方がクリスを残して死んでしまうENDです。こちらはラストシーンがとても綺麗…ですがとても寂しい結末で、クリスがめちゃくちゃ可哀想なんです。

プレイをすればわかるのですが、クリスの健気さに皆ヤラれます(笑)。ですのでどうしても彼女を幸せにしてあげたくなる…というわけでのクリスTRUEは、彼方が環境を捨て、クリスの孤独を救うために吸血鬼として生き続けるENDなのですが、救われたような、でも助かっちゃう彼方に煮え切らないような…。かつてクリスと彼方との間で交わされていた約束の伏線も、それ自体はとても良いのですが、なにぶん説明不足で薄いものですからとってつけたようになってしまい、もったいなかったです。それから、クリスを追う妖怪の登場なんかもあまりにも唐突すぎて、「え、これ何かの伏線だったっけ?」と読み返してしまうほどに蛇足な雰囲気が満載でした。


なんというか、どちらかというと良いところばかりなのですが、その分量の絶対的不足によりどうももったいない気分に陥るシナリオ群です。ですので、まぁ全体としてC評価くらいかなって思っているのでバランスをとるのもあり敢えて厳しめのシナリオ点です。

しかしそれでもこの作品を神作品と崇める方が実際多いのも確か。音楽と雰囲気は最高峰なので、時間をあまりかけずに優しい世界に浸りたければ是非。



【グラフィック】
原画はしゃあさんという方です。ちょい幼いですが、うまいですね。何ですかねこの人、本業ではないんですかね。ただ惜しむらくは、少ないっ…!エロシーンを除いたら、OPムービーでほとんどのCGが出てきてしまいます(笑)。

OPムービーが歌と相まってかなり切ないですね。ラストで夕焼けをバックに登場人物たちが歩いている一枚絵、これプレイ後に見ると実に泣けてきますね。なぜかって、それは本編中ではありえない組み合わせの一枚絵であるからです。あれで夕焼けはずるいよ。本編よりもOPムービーのが感動したかもしれません。



【キャラクター】
キャラ造形はとてもうまいです。非常に優しい人たちばかりで、この終末的な雰囲気に非常にあっています。もう彼方の設定が設定なものですから、なにげないキャラのなにげない優しいセリフでグッときてしまいます。その中でも頭ひとつ抜けているのがメインヒロインのクリス。非常に明るいキャラですが、その裏では、不老であるがゆえの孤独と身の危険を半永久的に抱え続けています。それを救うのが彼方になるわけですが、もうクリスルートを通ってしまうと、彼女の繊細さにヤラれて幼馴染の佳苗が霞んでしまう。

それから友人の耕介がこれまたイイ奴でイイ奴で…。シナリオのところで上記しましたように、彼は葛藤を抱えながらも彼方と佳苗のためにあれやこれやと尽くしてくれます。時には言葉で励まし、時には拳で励ましてくれます。こういうのを親友と呼ぶのでしょう。



【音楽】
BGMはどってこたないですが、OPの「Imaginary Affair」、これがまぁ実にすばらしい。僕が今までプレイした全エロゲの中でも1,2を争うくらい良いOPテーマなのではあるまいか。正直なとこ、5年以上前に発売されている本作をプレイしたのは、この歌を聴いたからといっても過言ではありません。暖かい日常を感じさせる非常に"切ない"曲です。

メロディはもちろんすばらしいのですが、歌詞がまた切ない。これ一見、明日という日を迎えよう的な単純な歌詞なのですが、明日を迎えることすら困難な彼方視点の歌詞となっているからです。

EDの「こなたよりかなたまで」も静かで優しい良曲です。作中BGMはホントどってことないんですが、この2曲があまりにも良すぎます。

やっぱI'veは間違いないっすね。


以上です。
エロゲーなんてエロビデオをゲームにしただけだろ、とか言ってる奴にぶつけるには、ファーストインプレッション、世界観、キャラ、そしてシナリオの"短さ"的に取っ付きやすくていいのではないでしょうか。ま、そんでその後こんにゃくでもやらせれば、シナリオ、キャラ、システムの格段の向上によりもうエロゲーの虜…になってくれるかもしれません。やっぱはじめてエロゲやる奴にageとかTYPE-MOONみたいな作品やらせると途中で投げちゃいますからね。



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【ショコラ ~maid cafe "curio"~】
ショコラ ~maid cafe "curio"~



メーカー戯画
シナリオ■■■■■■■□ 7.5
グラフィック■■■■■■■□ 7.5
キャラクター■■■■■■■■■■ 10
音楽■■■■■■■ 7
翠っ…!■■■■■■■■■■ 10
総合【B+】 78点

バズーカ竹槍混合部隊

メイドカフェを舞台にし、当時大変話題になった本作品。戯画+シナリオ丸戸史明+原画ねこにゃんから成る最強チーム三部作の一発目です。全体の完成度という点では、後二作にはとてもとても及びませんが、続作にあたる「パルフェ」という超名作を生む世界の土台をここで作り出したというだけでも功績は大きく、そのあまりにも温かく抜け出せない雰囲気は既に確立されています。

【シナリオ】 
再婚して長期の新婚旅行に出てしまった父親のカフェ経営を突如まかされた主人公、結城大介。同僚たちや義理の妹、家出娘などと時間を育みながら仕事にも恋愛にも打ち込んでいく、ってな感じのこのショコラ、まずプレイした人なら皆頷いてくれると思うのですが、シナリオの完成度にものすんごい落差があります。もうホントものすんーごい落差。「これが本当にあの丸戸さん?」と思ってしまうくらい、たいしたことないシナリオが多いのです。

美里、すず、チロルは「まぁ普通」、真子とさやかにいたっては「出来が悪い」と言い切ってしまいます。丸戸さんにしては、とかでなく普通の基準でみて悪い。後者ふたりは、Hシーンに、よくあるシナリオをとってつけたようなもので、違うライターなんじゃないか?と思ってしまいます。つまりこの作品に敢えて高評価をつける理由は、大村翠秋島香奈子、この2人に全魅力が集約されているからだといっても過言ではありません。この二人のルートは個人的に是非プレイしてもらいたいレベルで、そのシナリオとキャラクターは後のパルフェクラスといって良いでしょう。


むしろ翠なんてまるねこ三部作の中でも一番好きですよ僕は。カトレアも海己も里伽子でさえも翠の前では霞んで見える。翠の愛しさと切なさと心弱さは僕のツボを確実に突いてきます。翠ルートの果てに泣きがあるのではない、もはや翠が出てきた時点で俺は泣く。ここに因果の逆転が生じるまさにコレはゲイボルグ大村。翠と大介は馬鹿をやれる友人同士でもあるのですが、実は翠は大介のことが大好きです。ですが翠は、大介と香奈子が本当は両思いであることを知っているのに加え、過去に大介と香奈子の駆け落ちを阻止したという負い目があるんですね。それゆえに自分の気持ちを誤魔化そうとして、しきれない翠の葛藤が翠ルートを良シナリオとする肝です。

でも、ショコラの真ヒロインは香奈子です。これは彼女にだけ大掛かりなシナリオ展開があることや、彼女にだけアフターストーリーが用意されていることからもわかります。次作「パルフェ」で仁がキュリオ1号店を訪れたときそこに翠がいたってのもそうですし(香奈子ENDだと翠は1号店に残り、翠ENDだと二人で2号店開きますからね)、「この青空に約束を」のサイドストーリー内で、さえちゃんの大学同期である香奈子が結婚するというくだりが出てくるのも裏づけになりますね。うぅ……、翠。。。

そしてその香奈子ルートは実際一番シナリオが良いです。天邪鬼な香奈子に対して、過去の因縁を乗り越えようとする大介の努力はたまらなく応援したくなりますし、特にキュリオに住み着いた喫茶店の妖精チロル、これは香奈子が自作の絵本の中で理想の自分を投影して作り出した存在なんですが、チロル攻略が伏線となり香奈子の攻略がきくようになるのは面白い仕組みといえます。さらに香奈子アフターストーリーのラストで、無愛想だった彼女がチロルと同質の屈託無い笑顔を浮かべることができるようになるシーンはショコラ泣き所"東の横綱"といえるでしょう。あとコロッケね、冷えたコロッケ。丸戸さんはこういう伏線使いが巧みだよなぁ。


そして香奈子ルートの翠、ホンットやばいです。彼女は、大介の最大の理解者でありながら大介への愛情を隠し続けている幼馴染で、さらに大介の想い人香奈子の最大の理解者でもある・・・こんなあまりにも切なすぎる設定乗り越えて結ばれて欲しい!!しかしながら本当に結ばれて欲しいがゆえに、結ばれない結末が実に似合ってしまう(泣)。香奈子アフターストーリーでの翠は、胸をかきむしるほどの切なさを見せます。10年間の思いにけじめをつけ大介に別れを告げるシーン涙なしには語れねぇよ!!!

あ、今もキーボードを叩きながら視界がぼやけそうだ…。このシーンがまさに"西の横綱"であり、一番感動できる両シーンともに香奈子ルートなんですね。あー翠には幸せになってほしい…うぅ。

おっと、ふたりのことしか書いてませんね。でもまぁそれでいいんです。2:8の法則みたいなもんで、ショコラ部隊は他が雑魚でもこのふたりさえいれば常勝軍団になりえます。


あと及第点出せるとしたら、美里ルートかなぁ。彼女はヤクザの組頭の娘なので、その設定にまつわるルートになっていくわけですが…大介が組頭にタンカを切るシーンとバラさんは実に熱かったですけどね。なんというか、出来の単純なエンターテイメントというか。翠、香奈子ルートに比べちゃうとやっぱりレベルが違うのは否めないっす。



【グラフィック】
ねこにゃん大先生ですんで、総じてかわいいです。特に翠。でもまだやっぱり粗があって、絵によってバランス感のバラつきが目立ちます。パルフェ以降、きちんとした線でキャラがより生き生きと描けているのを知っている身としては、全体的におっとりしすぎな印象を受けますかね。

ま、でもかわいいですけどね。特に翠



【キャラクター】
正直なとこ、翠を除いてそこまで魅力を感じるヒロインたちではないです。シナリオも関係しているのでしょうが総じてパンチが弱い。単純な平均値で言えばまぁ6点くらいが妥当なところなんですが、とにもかくにも翠という俺的最強キャラがいるので、10点をつけさせてください。翠だけで、他キャラの弱さを補ってなお余りある魅力、そう捉えてください。シナリオで上記した通り、彼女の立ち位置の設定があまりにも切なすぎるし、それを隠しつつ非常に明るく振舞うキャラが最高です。また、翠のキャラクター造形は声優さんの演技も大貢献していますね。彼女の声質と抑揚はこの翠というキャラクターを抜群に生かしています。

丸戸シナリオは総じて主人公がかっこいいですが、本作の大介も例に漏れず非常にかっこいいです。やるときはやる男、ここぞというときに女の子に対する強烈な求心力を見せる姿は素晴らしいです。それが顕著に表れるのはやっぱり香奈子ルート。必見です。

そして、忘れてはならないのがキッチンスタッフのバラさん。大人の包容力で皆を見守り、料理の腕も一級品、果ては○暴を圧倒する実力と存在感。翠ルートで、翠から大介の代わりとして愛情を求められるシーン、さらにその後大介に翠の本当の気持ちを諭すシーンがありますが、ここでのバラさんはダンディズムの極みでした。


【音楽】
OPの「CREAM+MINT」、I've Sound と KOTOKOの組み合わせは敵無しなんで悪いはずがないです。あぁ、そういや戯画まるねこ三部作はどれも主題歌はI've+KOTOKOなんですね。彼女らもまるねこ名チームの必須条件であったようです。
音楽は、作中雰囲気にとてもあった、やわらかい曲が多いです。温かいシーンに合わせて流れる「溜め息とレモンティー」「eternal ties」も、泣かせる曲といった感じではなく控えめな曲ですがそれはそれでいいですね。


とまぁショコラでした。
まぁ言ってしまえば翠ゲーなんですよ。翠がいなきゃ評価高くないっすよ。



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【放課後恋愛クラブ】
放課後恋愛クラブ

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メーカーLIBIDO
シナリオ■■■■ 4
グラフィック■■■■■■□ 6.5
キャラクター■■■■□ 4.5
音楽■■■ 3
タイトル負け■■ 2
総合【E】 43点

キャラグラ一本勝負

放課後恋愛クラブだなんて、なんてすばらしい響き。しかもかわいい子ばかりというのもなんというエロゲ的展開。こんなクラブあるんだったら、是非一度入ってみたい・・・でも実際あったとして入ったら友人からの嫉妬と失笑の国賊扱いは必至

【シナリオ】
お気に入りの女の子を、まずは活動の場であるファミレスでツーショットに誘い、盛り上がれば放課後デートや休日デートで好感度を上げていく、とまぁ非常にチャラい感じです。

シナリオ的に良かったのは、悪友から恋愛へのステップアップがテーマとなっている和美シナリオ。彼女は主人公たちの仲間であり主催側の人間なので、「興味は無いけどその場にはいるようにしている」的なスタンスを最初持っているのですが、主人公と恋愛クラブを通して改めて接しているうちに主人公への想いに気づいて自分でとまどいを感じていく過程はとても微笑ましいです。

それからメインヒロインの早苗シナリオも超王道で○。彼女は主人公のことが密かに気になっていたのでクラブへの参加を決めたのですが、果敢にアタックをかける後輩っ子の前に引き気味のスタンスをとってしまいます。成績優秀でおしとやかなお嬢さんというヒロインの王道を地でいく彼女ですが、自分が「普通の恋する子」であることを求めようとしてきます。このへんもこの手の王道ヒロインの典型ではありますが、まぁいいものはいいですよね。

しかしこの作品、ライトに感じるようでなかなか難しく、ネット上に転がっている攻略チャートを見なければ大変。たるい会話が多いというのにメッセージスキップがきかないという劣悪環境なのでけっこうイライラしながらプレイすることになります。対象の数が多いためか、全体的にひとりひとりの内容は非常に薄く、「あれ、さくっとHシーンに来ちゃったなぁ」と感じること多々あり。シナリオテキストと呼べるようなものが無く、会話だけで話が進んでいくというのも印象を薄くさせる一端かもしれません。



【グラフィック】
淡くておとなしい絵柄でかわいいです。このゲーム一番の魅力はキャラグラでしょう。このゲームが発売された当時はまだ96年、他のエロゲと比べて本作品のグラフィックは異質なまでに綺麗で目立っていました。まぁもちろん他にも綺麗なゲームなどたくさんあったのでしょうが、原画のふんわりした感じと相まって絵柄の印象的なソフトだったんですね。

とはいえシナリオやシステムはお世辞にも良いといえないですし、ヒロイン数の多さからか一枚絵の数もとても少ないので、逆にいえば、このグラフィック面を評価できない人にとっては、本作がカス作品となってしまうのはほぼ間違いないでしょ。



【キャラ】
主人公は何の変哲もない、ホントそこらへんにいそうな男の子って感じです。特筆すべきこともなし…でもモテる。

ヒロインは、幼女~お姉さん、めがね文学系~芸能人まで12人いろんなタイプがいるので何かしら引っかかる方がいるのではないでしょうか。個人的にはメインヒロイン早苗の親友で、一歩引いて主人公に接している新体操ガール椎那が好きでした。彼女は実は主人公のことが好きな早苗の付き添い役として参加しているので、クラブの趣旨自体にはたいして興味を持っていません。だからこそ主人公に惹かれだした時、彼女の中で早苗への罪悪感という葛藤が生じることで魅力がグッと増します。と、思い出してみると彼女は青髪ポニーテール・・・ショコラ翠と一緒じゃないですか!。。。そういう属性持ってんのかなぁ。

しかし、こんな超恥ずかしいサークルを立ち上げ、さらに学園の人気マドンナたちを次々と引き入れた友人の威明君こそがこのゲーム最高の立役者であることは間違いないですね。かわいそうなことに彼は全然もてませんが。しかも女の子会員は学園のアイドルを12人も揃えておきながら、男会員は自分と仲間含めたったの3人。どこの超高級会員制クラブですか。これは他の学園生に刺されるよ。



【音楽】
記憶にないなぁ。。。これといって特筆することはありません。

以上、放課後恋愛クラブでした。


関連レビュー: 放課後マニア倶楽部

テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【遥かに仰ぎ、麗しの】
遥かに仰ぎ、麗しの



シナリオ■■■■■■■■ 8
グラフィック■■■■■■■■ 8
キャラクター■■■■■■■□ 7.5
音楽■■■■■■■■ 8
静謐感■■■■■■■■■ 9
総合【B+】 79点

良くも悪くも上品

ライター分業制が非常に面白い形で成功した好例といえます。ゲーム冒頭部分で主人公が左右どちらの寮に居を構えるかを選ぶ場面があり、その後は攻略ヒロインはもちろんのこと、主人公の性格も違えば構成立てもまるで違うため、ある意味違うゲームをやっているといっても過言ではありません。

【シナリオ】 
とある半島の隔離されたお嬢様学校「凰華女学院」分校に赴任した主人公、彼と生徒ヒロインをめぐる雰囲気抜群のラブストーリーです。

本校からの転校生たちを描く本校編のシナリオ担当は、いまやお気に入りライターとしてこの人をあげる方も多いであろう、健速さん。主人公は、誠実で行動力があり仕事もできるスーパーマン的描かれ方をしていますが、嫌味はまったくなく好感が持てます。まぁこの手の主人公にありがちな超鈍感なところは共通していますけども。

一方、もともと分校に入学してきた生徒を中心に描く分校編シナリオ担当は丸谷秀人さん。こちらの主人公は非常に人間臭く少し頼りない部分はあるものの素直で親近感があるため、本校編の司とは違った意味で好感が持てます。根強いファンを獲得している「ゆのはな」のライターさんですが、ゆのはなよりも遥かにいい仕事をしていると思います。

大方の評価はヒロインとの純愛を丁寧に描いた健速さん本校シナリオの方が高いようですが、個人的にはヒロインや仲間たちがドタバタと立ち回る分校編シナリオの方が好きでしたかね。しかしここまで主人公を違った人物として描き分けることを良しとしたPULLTOPの英断には少々驚きましたねー。


物語は基本的に一話完結型で進んでいくのですが、メリハリがきいていたかというと少し疑問なところ。終わり方も曖昧だし尺も極端に違ったりします。一話完結形式にするならばひとつひとつを綺麗にまとめて欲しかったかな。このへんうまいのは丸戸さんを中心に添えたHERMITですね。

テーマもそうですし、シナリオ、出てくるキャラクター、世界観は、音楽も相まって非常に清廉な雰囲気に満ちています。それがともすれば起伏の平坦さにつながり少々物足りなくなることもあるのですが、それは空気感ゆえ、ここまでの雰囲気を作り上げたのは、PULLTOP見事といってよいでしょう。


さて、各ヒロイン。キャラ的には圧倒的に弱いですが、シナリオが最も面白かったのは、温室の主、榛葉邑那だと思います。彼女はそのスタンスから、何かしらの秘密がありそうな雰囲気が満載なのですが、各ルートで未消化のままなんとなく残っている色々な伏線を一気に回収する一番話の大きなシナリオです。最後にプレイするのが良いんじゃないかな。かにしのは、とにかく国を動かせるレベルの権力者ばかりが出てくるのですが、その最高峰の一角である蘆部一族に焦点が当たるのが邑那ルートです。特に、邑那お目付け役の李燕玲と邑那の義兄にあたる鹿野渉が非常にいい味出しています。

続いて仁礼家の桜屋敷をめぐる栖香ルートも、途中激しくエロ展開に流れてはいくものの、最後は家族の絆にホロリとさせられる良シナリオでした。彼女のルートは美綺ルートと対になっているのですが、多くを語られるのが美綺ルートなので、そちらを先にプレイした方がいいかもしれません。

並んで殿子ルート。打ち捨てられた飛行機を再び飛ばすため二人で時間を重ねるうちに恋に落ちていくという、最もまとまりが良くて綺麗なのがこのルートで、一般的な人気もこのルートが一番高いみたいですね。このシナリオは、健速さんの持ち味がすべていい方向に出ているルートです。好みは別として、本作を代表するシナリオといって良いでしょう。

日本経済の最高峰を担う風祭家の末女にして学園理事長みやびルートも、周囲のプレッシャーに屈せず必死になる彼女の不器用さと召使リーダの献身具合に萌えるシナリオかと思います。ラストの主従関係愛にはホロリとさせられます。ただ、わたくし、お子様系が正直苦手でしてね、いい子なのはわかるのですが……。

ってか、リーダ攻略させてよ!!!とだれもが思ったのではないでしょーか。僕も強烈に思いました。そうなんですよ、このルート、準ヒロインであるリーダの非攻略という現実に打ちのめされるルートでもあるのです。

さらに対人恐怖症という圧倒的負の感情からスタートして少しずつ近づいていく梓乃ルート、師弟ではなく「相棒」という関係で仲を深めていく美綺ルート、総じてひとつひとつのレベルが高いです。全体量がとにかく多く、共通パートが全くといっていいほど無いうえにひとりあたり7,8時間かかりますので、しっかり読み込んでいけば総プレイ時間50時間超えもありえるのでは・・・。社会人泣かせなゲームですが、終わったあとの達成感ハンパないです


【グラフィック】
原画家さんは藤原々々さん。個人的には少し幼いのですが、非常に綺麗な絵を描く方で、何枚かは思わず見入ってしまう程のレベルの絵がありますね。ただ、シナリオのボリュームとCG数があってないのが惜しい。欲しいところで無いのは残念な気持ちになるわけですが、そういった場面がとても多かった。

あと背景もう少しがんばって欲しかったですね。使いまわしが非常に多いので、鳳華女学園の広さがいまいち伝わってこなかったのも惜しいところ。特にただでさえ絵に広がりが出ない地下洞窟シーンなどはつらかった。このシーンに割く時間がけっこうあるだけにです。



【キャラクター】
主人公司は上記した通り、超行動派で頭のキレる男です。就職活動に失敗したとはとても思えません。本校編、分校編でキャラが違いますが、こいつは生理的に受け付けない、となる人はほとんどいないのではないでしょうか。

ヒロインは本校分校各々それなりにキャラが立っているのですが、全体を見たときに、非攻略キャラであるリーダ、鏡花、奏の3人の魅力が強すぎたのでは・・・と。そして立ち絵すら存在しない分校編のクラスメイトたち、やはりキャラが立ちまくっているうえに、地味にエピソードが付随していたり、ゲスト声優陣が豪華だったりと、実に立ち絵がないのが勿体無かった。まぁ立ち絵を用意したらしたで、「何でこんなに魅力あるのに攻略が(ry」と現リーダ、鏡花などと同じ流れになってきますかね。さらに攻略可能キャラよりも魅力的な非攻略キャラの方が多くなってしまうと、完成してないのに出すな、と叩かれることでしょう笑。

ここらへんはFDで補完なのかもしれませんが、一向に出る兆しもありませんし、出ないような気がします。


そうだなぁ・・・好きだったヒロインは、相沢美綺かな。シナリオの出来とキャラの魅力の順位が逆転しますね、かにしのは。元気で無鉄砲ながら実は気ぃ使い、って子は凄く好きです。他ヒロインでも彼女が関わるシーンは読後感が非常にいいですし・・・。皆さんの間で一番人気があるのは殿子みたいですね。確かに本校編では一番いいキャラしてますね。彼女は、その猫みたいな雰囲気もさることながら、声優さんの声がドはまりしているのがウケたんじゃないかなと思います。えーと、遠山枝里子さんですか。

それから司を支えてくれる同僚の暁先生は分校系ルートで大活躍します。男性キャラが温かいというのもPULLTOPの特長ですね。



【音楽】
人里離れたお嬢様学校、という設定にうまく合った落ち着いた音楽ばかり。しかしここぞというところで流れる「ともしびのうた」「夜明けを運ぶ風」が群を抜いて良く、必ず司がかっこいい立ち回りやセリフを言うところで流れるので、鳥肌もんです。「ゆのはな」の時も思ったんですが、PULLTOPは盛り上げどころにディストーションを使った曲を持ってくるのがいいですね。

さらにED「With A Smile」がすばらしい。この作品に非常に合った、穏やかで優しい曲です。


以上、「遥かに仰ぎ、麗しの」通称かにしのです。
2007年美少女ゲームアワードグランプリは伊達じゃないですよ。



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

基準みたいなの
★レビュー基準★

採点は基本的に甘く、正直言いましてA評価以上が多いと思います。

しかし、B評価であっても僕の中では十分すぎるほどの作品評価ですし、世間的には「名作」と呼ばれる類の作品群になります。僕は有名作品ばかりを選んでプレイしているので、なかなか全体バランスをとるのが難しいのです。個人的にはC+評価がついていれば人におすすめできるレベルかな~、と考えています。

◎シナリオ・・・シナリオ、設定、構成、展開の巧みさ
◎グラフィック・・・キャラ絵、ムービー、背景、ゲームとしての仕掛けや作りこみ
◎キャラクター・・・登場人物の魅力、声・演技の魅力
◎音楽・・・良い音楽が効果的に使われているか
◎+α・・・特筆点(まぁこれは点数も適当ですしオマケ的なもんだと思って下さい。総合点にも加味していません)

を大体の内容としてなーんとなく書いてます。

総合点は、大きめの比率を乗じたシナリオ点と音楽点、さらにグラフィック点、キャラクター点の4要素を加算して総合点を出しています。あくまで僕個人のものですので、目安程度に見ていただければ。

一応、未プレイの人のために決定的にやばそうなとこは全て反転してありますが、プレイを前提にして思い返すようにあーだったこーだったと書いているので、プレイ済みの方がテキスト自体は読みやすいのかなと思います。

それでは、よろしくおねがいします。




□■□■□■□■□■□■

ちなみに、

虎白荘→ Tiger Milk
管理人名→ Dirty Dream No.2

ともに、イギリスはグラスゴーが生んだ、Belle&Sebastian の作品名です。

え? エロゲと関係あるのかって?


全くないです (キリッ

test
testtest

これすなわちテスト

TEST TEST

テストだぜーーーー!!!!

テストテストてすとてすとてすとてすとてすとてすとてすとてすとてすとてすとてすとてすとてすとてすとてすとてすとてすとてすと

testtest

反転反転反転

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