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エロゲ レビュー ブログ
【スマガ】
スマガ



メーカーNitro+
シナリオ■■■■■■■■□ 8.5
グラフィック■■■■■■■■■■ 10
キャラクター■■■■■■■■ 8
音楽■■■■■■■■■■ 10
ポップ■■■■■■■■■■ 10
総合【A+】 89点

オシャレ!ポップ!リベンジ!

なんとポップでオシャレな作品なのでしょう。本来のNitro+とは全く違う路線ですが、その作品細部に渡るまで妥協無しの高クオリティを叩きつけてくる姿勢というものが、ニトロお得意のハードボイルド路線よりも、他のエロゲーと同じようなノリの本作をプレイすることで余計際立って見えました。

何か書き終えて読んでみると、ほとんどがネタバレになっていましたので、本レビュー伏字なしでいきます。これからプレイ予定の人は見ない方がいいかと思われます。

【シナリオ】
舞台は伊都夏市、この街は、空から落ちてくる原因不明の巨大悪魔(ゾディアック)とそれを打破する魔女(エトワール)の戦場となっている街。冒頭、主人公が何故か空から落下しているところから始まります。本人が記憶喪失であるために原因は不明、わけもわからぬままに地面への激突を待つ中、3人のエトワールが現れます。主人公のありえない登場の仕方にとまどうエトワールたち、しかし彼女らがゾディアックと対決している中、時間及ばず主人公は地面に激突死してしまいます。

目が覚めるとそこは天国、主人公の前に幼女の姿をした神様が現れます。主人公のことを「うんこマン」と呼ぶ下ネタ好きの神様は、彼が望むならば生き返らせてくれることを約束します。死の際、世界を背負って悪魔と戦い続けるエトワールたち、とりわけ前世で自分をかばい共に死んだ魔女スピカのことが離れないうんこマン。彼女と他エトワールを救う決意をした彼は、人生リベンジを神様に告げます。

と、いうわけで冒頭から一気に引きこみますね。この話、完全無欠のハッピーエンドを願ううんこマンの諦めの悪さが高じて凄まじく長く、また力の入ったシナリオ群となっております。シナリオ担当は下倉バイオさん、ニトロプラスの新しい柱になることは間違いありません。彼の魂の叫びが感じられる渾身作でした。

人生リベンジの前提は、一番直近で目を覚ましたところからスタートする、重要な選択を迫られる場面で記憶が甦る、この二点。時には失敗してゾディアックに殺され、時にはゾディアックに世界を滅ぼされ、うんこマンはこの条件下で繰り返し死んでは生き返り続け、最良の未来をつかみ取るために努力を重ねます。


まずはスピカ編「SHE MAY GO」。冒頭でスピカを救うことを決意したうんこマンですから、本ルートはスピカをなんとか救い近づくためにあれこれ試行錯誤するルートとなります。「超人じゃないから世界は救えない。でもおまえの涙くらい、拭くことはできると思うんだ」と告げるうんこマンは超かっこよかったですね。直後のスピカ泣き顔のCGもガハハグッドだー。うんこマンのいいところは、決して自分が世界を救おうとしないところ、彼は超人でも何でもないので、自分のできる範囲でエトワールを救いたいと考えているのですね。最後の戦いを終え死に行くスピカを受け止め、名曲アイノコトバに流れる展開は見事。セカイに絶望している彼女を支え続け、彼女の満足いく物語を受け止め、そして共に死に行く…本作全体の中で最も儚く感動的なルートでした。正直、すべてのリベンジの中で物語として綺麗にまとまっているのは一発目の本ルートだったと思います。

ガーネット編「SAD MAD GOOD-BYE」、鬱々としたルートでした。スピカを救うためにリベンジするうんこマンですが、節々の行動の違いにより運命が変わり、スピカは早々に戦死してしまうあたりが悲しかった。この世界の仕組みであるアルマゲストの秘密が明かされる本ルート、それはエトワールひとりの世界観が舞台世界を形作るという超設定。前世と違い本ルートはスピカではなくガーネットがアルマゲストになっているために違う展開を成しているという並行世界の作り方は見事。結局世界はどうでもよくて、一人の愛する人がいればいいと思っている彼女の世界観が独自の世界を作ってしまいますが、それが破綻してしまう物語でした。

ミラ編「SHOOT THE MIRACLE GOAL」、ハッピーエンドルートとなります。世界の根幹が提示されるルートでもあり、ゾディアック本体を叩くために宇宙の果てへ旅立ったりと無駄に壮大なルートです。と、いうかミラはいいですね。僕はロリじゃないですが、3魔女のうちで一番人間的に出来ていて、皆の幸せを願っていて、優しいのが彼女です。主人公がループし続けること、すなわち皆の行動を知りつつ行動していることに罪悪感を感じ諦めそうになった時、彼を抱きしめ「ヒーローに秘密はつきもの」「つらいけどがんばろう」と諭すシーンにはグッときました。

しかし何周も何周も死んでは立ち上がるうんこマンを見ていると、「全員幸せの結末を迎えたい」という彼の痛烈な思いを応援している僕自身に気付きます。何度も失敗しては蘇るある種の鬱陶しさが、徐々に努力と執念への共感に変わってきます。ですので、ミラの回でラスト、幸せな結末を迎えた時の「人生リベンジ、完了だろ?」、このうんこマンのセリフには熱くこみ上げるものがありました。

正直なところ、アルマゲストの設定とそれにまつわる物語の進め方には強引だなと思う部分もそれなりにあり、全体を理解し切りながら読み進めるには少しライターよがりなところがあるっちゃあります。ですが、ご都合主義上等で突っ走っている姿勢には爽快感すら覚えますし、「あの時よくわからなかった」という部分も、その後の誰かしらの考察や独白でちゃんと説明補完されていて、最後まで読めばなんとかわかって読み終えられるところは、よくサポートしきったもんだと思います。

このミラルートを以て、皆が一応幸せになる大団円ハーレムルートを迎え、とある少女が強い願いを込めて具現化した世界が本作であるという、伊都夏市設定の仕組みもわかります。アリデッドがアルマゲストを後輩魔女に譲っていることから、創られ管轄されていたこの世界も、独立した世界としてしっかり神様陣の手を離れ回り出しています。本来ならばここで終わりになるはずでしょう。

しかし、一度EDを迎えて始まる、さらなるハッピーエンドを目指しての別視点での物語。「まだあるんかい!」とうれしい悲鳴です。うんこマンが、一度幸せな結末を迎え物語の視聴者側にまわったことにより、新たに物語に挑戦する別のうんこマンからは声を聞くことができます。主人公にもCVがついていたのに何故かずっと無声だったことがここで初めて明らかになりますよね。基本的には同じ物語を追っていくことになるのですが、それまでの主人公が神側の視点に移っているため、ところどころで新しい主人公にアドバイスを送ることができます。これで世界が少し変化していくのですね。


さて、新スピカ編「SAKURA MAU GAKUEN」、いいタイトルです。彼女の世界への諦念を、信じる心でなんとか覆すルートです。二郎が作ったミラのロボットにスピカを会わせ、彼女の世界観を打破する流れはシナリオ勝ちだったかと思います。死んだと聞かされ続けてきたエトワールたちが実は生きていたという価値観をスピカが持つ、という流れですね。そしてラスト、気休めではなく本当に死んでいなかったエトワールたち…ミラも結局生きていて復帰しますしガーネットもゾディアックから奪還します。あれだけ物語山場の仕掛けを担ったミラが実は生きていたところはちょっと冷めましたが笑、未来に絶望していることがスピカ編の共通設定で、前主人公のスピカ編もその設定に準じた儚いラストでしたので、主人公のがんばりでそのスピカの世界観を覆しStarMineGirlハッピーエンド、たまらないですね!!

新ミラ編「SEE THE MAGICAL GOLD-STAR」、若干強引なサブタイトルです笑。学園祭の演劇を通して成長するミラ、劇の主役を務めることで距離を縮める樋ヶとパイオツニアなど、学園モノの体が最も出ているのが本ルートでした。ラストも友情部分が前面に押し出されていたところが僕好みです。終盤、ゾディアック本体をたたくために宇宙に出なければならない彼女に会うことを恐怖する中、日下部と沖のアシストを受けミラの言葉を聞く主人公。心を変えるのはたった一言の言葉で足りる。走り出すうんこマンに熱くなったのは僕だけじゃないでしょう。そして、時空を超えることにより1万年の彼方に行ってしまうミラに追いつくため、時空理論を二郎と共に学習しては一日の終わりに自殺をし、何千回も一日を繰り返し理論と記憶を蓄積し続けていたうんこマンの努力にも熱い涙がほとばしります。

新聞部部長の日下部ルート、「SWEET MEMORY GOES ON」。彼女は神出鬼没の忍者で妄想暴走キャラであり、どのルートでも変人サブキャラとして大活躍するので、普通の少女のように恋をするこのルートのかわいさは反則ものです。人生を繰り返しているうんこマンのからくりを知ることで、その存在に恐怖してしまう彼女。つまり、初々しく結ばれた二人は、うんこマンが何度もいろんな可能性を試して一緒になったのではないか、今結ばれている自分は彼にとって何人目なのだろうという恐怖ですね。これはある意味当然の感情だと思いますが、グレンツェンをふたりで出ることで記憶喪失になって改めて結ばれよう、というビターなラストでした。出る直前で物語が終わるのがいいですね。

しかし…妄想で鬼太郎化する彼女は、声優さんの怪演も手伝って凄まじきキャラクターを放っていますねぇ。


新ガーネットルート「SUPER MIND GAME」、うんこマン超がんばりました。新ミラ編と同様うんこマンが何千回もルートを繰り返し試み続けることで奇跡を起こす流れを追っています。ミラ編は、トリックを鮮やかに明かす「仕掛け」としての役割でしたが、二番煎じになってしまうガーネット編では、それを用いてじっくり物語を見せる「文章」としての役割を持たせている点にシナリオ作り込みの丁寧さを感じます。なにもできないのに走り続けゾディアックに向かっていく熱さ、幸せをつかんだガーネットのために神様に無理と言われながらも奇跡を起こす決意をする熱さ、死んでは学習し徐々に状況を進展させていく熱さ、正直ここまでループし頑張りを見せつけられると、主人公への感情移入度は相当数まで上がっていますので、fate士郎のような鼻につく「自己満足自己犠牲」みたいな変な印象も持ちません。

そしてヒロインの最後を飾る沖姫々ルート「SARABA MITSU GETSU」、正直なところ無乳ながら笑、他ヒロイン以上の魅力を持ち合わせている彼女(張れるのはスピカくらい)、沖ルートがなかったらスマガの評価は多少なりとも下がっていたことは否めないんで、待ってましたの展開でした。沖は一番最初のループから、真摯でまっすぐで、どのルートでもうんこマンの誠実さや反則設定を信じてくれるナイスヒロインですからね。その沖と互いに支え合い、かりそめの世界である舞台を打破するルートです。途中、沖の「諦めるな」には鳥肌。なんでここだけセリフが画面中央に出るのよ。ひぐらしの赤坂登場を思い出してしまうではないですか。そしてふたりでともにアリデッドの世界観をぶち壊すラストシーンは痛快でした。

本ルートは、それまで少しずつ明かされてきた世界の根幹を、物語の主軸に沿えて全てが明かされるルートでもあります。もちろん1周目のミラルートでざっくり語られるわけではありますが、それがより細かく正式に明かされるのが沖ルートです。現実世界が隕石衝突で崩壊する寸前、川嶋有里という一人の少女が大好きな先輩への告白を決意し呼び出したものの、その緊張から永遠に終わりのない世界を願ったことでこの舞台が形成されました。そして、このセカイを続けたいと思う一方で、無意識のうちにこのセカイを閉じなければならないという葛藤の果てに生まれたのがゾディアックです。さらに、その有里のセカイでの彼女自身の具現化が初代魔女のアリデッドというわけですね。


そしてラストのTRUEエンド「STAR MINE GIRL」長かった…物語も長かったですが、ここまで書いたレビューも長かった。死んでは生き返り、特定ヒロインと幸せな結末をつかみ、その度に新たな世界を紡ぎ、ついに世界の根幹にいるアリデッドを救って真の意味で全員が幸せになるハッピーエンドです。

ここはすぐピンと来ますが、このセカイを作った少女有里のあこがれの「先輩」がズバリうんこマンですね。有里と先輩が結ばれるだけでなく、現実世界を終末に陥れる隕石を破壊して本当の本当のハッピーエンドを迎えるラスト、各々の幸せをつかんだこれまでのルートも、並行しているパラレルワールドとして話にしっかり関わってきているところが良いですね。すべての並行世界における4エトワールが魔法を込めることにより、根幹世界の少女と先輩(うんこマン)のハッピーエンド―奇跡を起こす。ほんっとうに全員が全員幸せを掴みます。ご都合主義ではありますが、その爽快感たるやそんなもん関係ねぇってなもんですよ。奇跡を起こすのは魔法、信じる力だ!!
そしてエンドロールもまたポップでオシャレ。長かった…長かったよ。。。


ちなみに、すべて「SMG」にまつわるサブタイトルがついているのが良かったですね。ミラの「Shoot the Miracle Goal」はこれをもとにストーリーを組み立てたんじゃないかと勘繰ってしまうくらいに図ったようなタイトルでした。

うおー、めちゃくちゃ長くなってしまいました!


【グラフィック】
一番言及しておきたいのは、作品の構図、メニュー画面やコンフィグ画面、エフェクトなどにおけるポップ感です。正直今までプレイしたエロゲの中で最もサブカル的なツボというか洗練され具合を感じました。全体的に、大胆にホワイトを基調として用い、赤黄青で味付けしたデザインのポップさは非常にセンス溢れるものでした。

演出やエフェクトも細部までこだわりを感じ、スタッフの血の努力を感じます。どのエロゲにもある作品ムービーやシナリオにあわせたキャラの動きの部分も秀逸な出来ながら、ゲーム終了時のおまけ画面や早送りシーンなどキリがないくらいの独自の細かい画面演出の遊び心。

このあたりの演出面でのグラフィックは文句なしの満点レベル、過去最高峰です。

原画は津路参汰さん、総じて良い絵師さんです。CG枚数も相当数ありますし、表情差分もかなりの数、彼も気の遠くなるような仕事量であったことは間違いありません。ダメ!って人はいないと思いますが、若干絵が特徴的ですので、好みは分かれそうなところです。実は僕個人としては津路さんの絵はなんともいえないところです。いや、すごく上手な方だと思いますし、スピカとか沖とか文句なしにかわいいんと思うんですが、なんというかな、下半身とか全体的に肉感的にすぎるんだよなー。

他、背景や塗りも文句なしです。


【キャラクター】
なんといっても主人公うんこマン、彼ありきのスマガであり、彼なしには物語の盛り上がりはありえません。ガーネットのアルマゲスト効果によりトンデモ展開で悪魔になったりすることもありますが、基本的には彼はただの一般人であり、凡人がただひたすら皆の幸せを願い何度も何度も物語をリベンジし続けます。本来のニトロ路線のハードボイルドで出来る男って匂いはまったくなく、ダメなときはホントダメで、愛すべき人間臭さをもった主人公ですが、ことあきらめない一点に関しては凄まじいものがあり、何千回も人生リベンジし続けるその果てに彼がつかむラストシーンは鳥肌が止まりません。

ヒロイン勢で一番良かったのは、スピカと沖姫々。ただ、スピカのために人生リベンジを決意するきっかけの割には、スピカは後半に行くにつれ少々影が薄くなるのが寂しかったかな。ミラは、ヒロインとして、というよりキャラとしては非常に良かったですね。また、アリデッドと日下部雨火はその怪演が見事、日下部はキャラとあいまり独自路線を突っ走っていました。アリデッドは一色ヒカルさんですね、さすがのキャラづくりです。

他キャラクター、どいつもこいつもよく立っていますが、頭ひとつ抜けているのは、おっぱいに異常な執着心を燃やす宮本武。登場シーンのほとんどがギャグシーンとなります。しかし完全ギャグかと思いきやシリアスシーンでも結構いい働きをしますし、本作一番の名脇役と呼んでいいでしょう。


【音楽】
なんともレベルの高い、力の入った音楽群でした。まず、魔女3人にそれぞれテーマソングがあるのが凄い。しかもどれもいい曲なんですよ。特にスピカのテーマソングの「アイノコトバ」は大名バラード、「SHE MAY GO」のラストは非常に泣けます。これ、歌ってるの「Rio」となってますが、どうやらあの超人気AV女優のRioのようで…こんないい声してたなんて驚きです。ミラの「イデアリズム」も、サビのキャッチーさが頭に残ります。歌から入るイントロが魅力的なこれまた名曲。ガーネットの「真実の灯」はちょいスペイシーなイントロと力強いサビボーカルが印象的な曲です。3曲ともが違うタイプの曲ながらしっかり主張できています。

そしてリベンジを決め込むときに決まって流れる挿入歌が大槻ケンヂだというのが驚きです。何やってんすか、大槻さん笑

OPも名曲です。ロックの王道にして正解のスネア頭打ちのリズム、それに乗せたギターメインのアレンジときれいなメロディがバランス感バッチリ。BGMも量、質申し分なし。特に熱いシーンで流れる、同じリフをギター2本で重ねる「No.31」、日常の温かみのあるシーンで流れる「No.1」が良い。ギターストロークをうまく使った曲が歌もの、BGMともに多いのが特長です。ニトロプラスは音楽がバンド路線なので僕は凄く好きです。


以上!超長くなりましたスマガです。リトバスやG線上を抑えて、2chエロゲ版で2008年ベストゲームに選ばれたのもよくわかります。

好みはそれぞれなので評価は分かれるところでしょうが、少なくとも本作品すべての要素に妥協が一切ないどころか、むしろ他の追随を許すまじとする威勢がありありとみて取れます。ニトロプラスの次の世代のスタッフたちの、うんこマンのような努力の結晶がここにあるのだと思います。



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【リフレインブルー】
リフレインブルー

rb.jpg

メーカーelf
シナリオ■■■■■□ 5.5
グラフィック■■■■■■■■ 8
キャラクター■■■■■ 5
音楽■■■■■ 5
清涼感■■■■■■■■ 8
総合【D+】 58点

大人のための絵本

「エルフノベルシリーズ第一弾」という触れ込みで、ソフトパッケージも本をイメージしたものになっています。しかし10年経った今もシリーズ第二弾が出ません笑

【シナリオ】
とある女性・深景とひと夏の恋に落ちたのは7年前、東陽学園サマースクールのバス添乗員として再びその地を訪れる主人公。サマースクールに参加しているヒロインたちとの淡い恋模様や、7年前に置き去りにしてきた思い出が交錯し、話は紡がれていく…のですが、タイトルのように良く言えば穏やかで、悪く言えばノベル形式なのも手伝ってかったるいシナリオでした。

現地での時間は5日間、選択肢の行動に応じて前半で特定の女性との進路が決まり、中盤以降個別イベントに入る感じです。ひとつひとつはさほど長くなく、比較的さっくり終わっていく印象でしたね。

各ヒロインルートは、一応それぞれにEDが用意されてはいるのですが、あくまで7年前の思い出の人「深景」シナリオへの伏線消化としての役割が強く、それが良くもあり、女子高生たちが踏み台にされているあたり虚しくもあり…です。が、しかし各ヒロイン、中には由織など深景の思い出を越えて結ばれるヒロインもいるのですが、大体は、数年後に再会する、手紙が届く、絵本を買うことで消息を知るなど、「恋人になってハッピーエンド!」というエロゲ王道路線からはずれている結末ばかりで、大人な感じを受けますね。


各ヒロインの攻略順は大体固定されており、彼女らのルートを通ることで、少しずつ深景との7年前の事実がユーザー側に提示されてきます。例えば、つらい思い出を封印して他人の語った思い出を自分のことのように語る津賀島つぐみルートを経ることで、主人公も深景がもう死んでいることを思い出す、つまり自分も自己の辛い記憶を都合よく封印していた事実に気づくなどですね。この仕組みは評価です。このように、非常に綺麗なタイトル通り、ゲームをリフレインすることで徐々にフィナーレに向かっていく作品です。そしてラストに深景との伏線を解消しきるルートがあってENDってな感じで、海外に一人たたずむ様な静かなファンタジーを読んでいる雰囲気です。

悪くはないですが、ちょっと盛り上がりに欠けたかな。よくいえば、静かで穏やかな作品ということになるんですけどね。あと、ちょいちょい出てくる謎の少女が深景であるというのもあまりにもわかりやすい伏線でしたので、もうひとひねり欲しかった気もします。


【グラフィック】
下級生スキーとしては、門井亜矢さんは思い出深い原画家さんです。彼女の絵というだけでプレイしたくなります。メインヒロインが下級生のみこちゃんにそっくりだというのもご愛嬌。塗りも背景もさすがのエルフで総じて綺麗です。

【キャラクター】
まず主人公が結構いいですね。年齢設定もじゅうぶん大人な年齢ですので、若きヒロインたちとの接し方もヘタレな感じではなく好感を持てます。ヒロイン勢ですと、特に突き抜けた魅力のキャラがいるわけでもなく、皆横一線といった感じ。皆心になんかしらの悩みや傷を負っていますので、どこか翳りのあるキャラが多いかもしれません。

【音楽】
音楽に力を入れてほしかったなぁと正直思います。サウンドノベルを謳う以上、エフェクトや一枚絵を前面に押し出さない読み込む形式に特化するわけですので、逆に言うとシナリオと音楽にかかる負荷が極端に大きくなるわけですからね。とはいえ、作品の世界観を壊すような意味ではないですよ。作品の清涼感には貢献しています。


てなわけで、リフレインブルーでした。
とてもなつかしい作品ですね。海をモチーフにした静かな作品です。ちょっとのファンタジー要素を味付けに、ラスト綺麗にまとまる大人が読む絵本といった趣きです。


テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【パルフェ ~ショコラ second brew~】
パルフェ ~ショコラ second brew~



メーカー戯画
シナリオ■■■■■■■■■■ 10
グラフィック■■■■■■■■■□ 9.5
キャラクター■■■■■■■■■■ 10
音楽■■■■■■■■□ 8.5
雰囲気■■■■■■■■■■ 10
総合【S+】 96点

この作品を手本とせよ

まるねこ作品は気合入れて書きますよ。メイド喫茶を舞台にした「ショコラ」で注目された"戯画まるねこ"チームの続編…というか、まぁショコラをプレイしていなくとも全く問題はないのですが、設定を踏襲した発展作品ですね。

タイトルで「二番煎じ」を謳っていますし、全体的な設定はもちろん、ヒロイン勢も、ショコラのヒロインたちと同じような性格、属性をもったヒロインが揃っています。えてしてこの手のものは前作の壁を越えられないものですが、パルフェにおいてはあらゆる面でショコラを凌駕しています。むしろこちらがメインで、ショコラを「"プレ"パルフェ」と見た方がしっくりくるほどです。


【シナリオ】
ある日、主人公高村仁の元に、グランドオープン間近のショッピングモール「ブリックモール」から、仁の義姉である恵麻が経営していた欧風アンティーク喫茶「ファミーユ」に出店して欲しい旨の電話が舞い込みます。しかし、ファミーユは半年前の火災事故により店舗を失って現在休業中―。亡き兄と恵麻の大切な思い出であった「ファミーユ」に強い思い入れのある仁は、悪戦苦闘しながら開店準備を進めますが、直前にファミーユ予定テナントの真向かいの店が「キュリオ」の3号店であることを知り愕然とします。なぜならキュリオは、ファミーユがそのコンセプトを学び、模倣した、そのオリジナルとなる店だったから。

圧倒的な人気と実力を誇るキュリオを前にし、仁・明日香・かすりの3人だけでの始動を余儀なくされた開店の前日深夜、滑り込みで現れたバイト志望の少女、由飛。彼女の奇抜な立ち居振る舞いと歌声に魅かれてしまった仁は、直感的に彼女の採用を決定、開店メンバーが決定します……さて、転がりだした新生ファミーユはどうなっていくのでしょうか。


……というわけで、超名作パルフェですね。シナリオ担当は前作ショコラ同様、丸戸史明さん。ライター買いするユーザーも非常に多い人気ライターさんです。僕も彼のテキストはエロゲ界の中では1,2を争うくらいに好きですよ。非常に「馴染む」文章を書く人ですね。テンポよく明快で、無駄なテキストや誇張表現もなく、いたってシンプルです。泣き展開や伏線トリックを用いる際に有効な、「ファンタジー」「非現実」などの要素を盛り込むわけでもなく、あくまで現実的な日常を基本ベースにしているわけですが、そのシンプルさだからこそ文章の「うまさ」が際立ちます。


さて、その丸戸さんは、表に明確なメインヒロインをひとり立てる一方で、主人公との過去に強く関係した裏ヒロインを作ることで有名です。それは、メインヒロインの存在を吹き飛ばすほど、力の割かれたテキストに泣かせる演出が施されるもので、ショコラにおける香奈子であり、こんにゃくにおける海己でした。そして、丸戸史明さん十八番のそのカラクリの中でも最高峰といわれているのが本作パルフェの夏海里伽子ルートであり、そのシナリオ完成度といったらハンパではないです。本作は、全ヒロインルートがまるで山王工業高校バスケ部のように非常に高い質をもって安定していますが、こと夏海里伽子ルートに関しては頭ふたつ分くらい抜けているといって良いでしょう。

里伽子は、仁の大学同級生にして、前ファミーユにおける作戦参謀役だった女の子です。仁とも非常に良い仲でしたが、前ファミーユ放火騒動を境に二人の間には見えない溝が出来てしまっています。その原因となる、怪我した利き腕が動かないという伏線は、実は物語序盤からあらゆる箇所でばらまかれていて、共通パートや他ヒロインルートにおける彼女の行動やセリフひとつひとつが、「腕が動かない」と考えればよくわかる場面ばかり。彼女の立ち絵ですら伏線になっているこの仕掛けは実に巧妙で、本当に感心してしまいました。

主人公の仁は、親を亡くし、兄を亡くし、恵麻姉ちゃんと兄の店であったファミーユを無くし…と、大変な苦労人です。そして恵麻という「家族」のため、大学を休学してまでファミーユ再建という夢に賭けます。このくだりは本作の導入でユーザーを引き込む大前提の設定となっているわけですが、だからこそ頑なに「家族」を第一とする仁の信念と真っ向から対立する里伽子ルートのシナリオは感情が揺さぶられました。

ラストシーンは大号泣間違いなし。家族に対する信念を曲げず、里伽子を優先的に受け入れるには確かにその流れしかありません。数年後のエピローグ、我が子を抱けるまでに腕を回復させた未来にも涙ですし、里伽子の口癖である「しょうがないなぁ」を仁が発するシーンには…。くっ…、この文章を書きながら涙が出そうになってしまうほどです。

伏線の絡みから、そんな里伽子ルートと対になっているのはまーねえちゃんこと杉澤恵麻ルート、家族愛というと聞こえのいいブラコンシスコンっぷりは完全なるネタですが、物語に良い味付けをしていました。そして、そのあたりの身内に対する感情を飛び越えてゆく、というか既に飛び越えていた、というか…まぁそれが恵麻ルートの当然の流れであるわけです。

しかし、火事騒動の際、仁が、腕に重症を負ってしまった里伽子をほったらかしにして恵麻につきっきりだったこと、その間里伽子がひとり苦しんでいる一方で恵麻は仁にすがりっぱなしだったということ、そもそも里伽子が怪我をしたのは仁の亡き家族の遺影を回収しようとしたためだったことなどから、どうにも里伽子に肩入れしてしまう展開です。圧倒的なシナリオの泣きを持つ里伽子との対比ルートなので、ちょいとかわいそうな立ち位置に置かれてしまった人ですね、まーねえちゃんは。エピローグも腕の後遺症を克服している里伽子の方につい感動が寄ってしまうし…。とはいえ、恵麻ルート自体はとても良い出来なんですよ。


さて、里伽子&恵麻ルートばかり語ってしまいましたが、他のヒロインルートもとてもよく出来ています。メインヒロイン若き天才ピアニスト、風見由飛ルート。彼女の痛さには最後まで慣れませんでしたが笑、彼女のトラウマに玲愛を絡めた展開はよく描けていましたし、TRUE ENDにてそのトラウマを克服しピアノ大好きっ子に戻っていくくだりは感動的でした。だからこそ、由飛NORMAL END のピアノを諦めてしまっているエンディングはちょっと辛いです。彼女のルートは義妹である玲愛ルートと対になっていますが、玲愛は自分のルート以上にシナリオに貢献していましたね。由飛がピアノを弾けなくなり、姉妹がギクシャクしてしまった原因は、玲愛のピアノ挫折にあるのですが、それを当の玲愛が打開するシーンは非常に感動的です。

対して"カトレア"こと花鳥玲愛ルート、キャラの魅力に反して、特に目を見張る仕掛けもなく比較的淡々とツンがデレに変わる過程を描いていくのが彼女のルートです。ただし、後述のとおり彼女はキャラクターにN2爆弾級の魅力があるため、とにかく彼女のツンデレ具合に萌え死ぬルートだと言っておきましょう。それから社会人である玲愛の現実と不安を解決するための、仁のがんばりが映えるルートですね。ついでにラストでショコラの翠がチョイ役で出てくるので、翠至上主義のわたくしとしてはそれも評価点です笑。


仁の同僚にして、和菓子屋の娘、涼波かすりルート。彼女は本職であるパティシエの他にフロアも器用にこなすマルチプレイヤーではあるのですが、パティシエとしてはるか彼方にいる恵麻に対してコンプレックスを抱えています。そんな彼女の成長物語と、仁とのドタバタ恋愛劇です。作中一番ラブコメ色が強いルートで、かすりさんの魅力をうまく描けています。

かすりさんは完全キャラ勝ちですよね。彼女は年上であけすけで明るくて、また、仁を一途に想っているメンバーたちの中で唯一、常に中立的な立ち位置にいるため、屈指のキャラバランスを誇る本作において実はとても重要な役割を果たしている人なんじゃないかと思っています。ちょいちょい入る彼女の合いの手や暴言はなかなか笑わせてくれます。


そして最後に作中唯一の高校生である雪乃明日香ルート。仁が彼女の健気さに攻略されてゆく(笑)シナリオですが、彼女の子犬のような、小悪魔のような頑張りは、見ていて微笑ましく、またこれまた萌え悶えます。全体的に、視点こそ仁ですが物語の主導を握っているのが明日香であるため比較的ライトな雰囲気で進んでいくのですが、しっかり泣けるシーンもあり、文化祭でのファミーユ模擬店シーン、そして何より受験のためにファミーユを辞めるシーンは涙なしに見ることができませんでした。このシーンは時間軸の順序を入れ替えた作り方もうまかったし、最終日の一連のシーンが暖かいこと暖かいこと…。

どのルートもシナリオバランスは最強レベル。ぜひぜひプレイして暖かさにむせび泣いてほしいと思います。



追記ですが、全年齢対象のPS2版には、キュリオ3号店のサブチーフ兼玲愛の親友として登場していた川端瑞奈ルートと、新キャラとして、ファミーユにコーヒー豆を卸している沢崎珈琲の沢崎美緒ルートが追加されています。

瑞奈は立ち絵から一新されており、かなり可愛く生まれ変わっています。シナリオはとても地味ですが、底なしの才能を持つ濃いキャラたちの間で、ごく普通の子である瑞奈と仁が徐々に惹かれ合って思い悩む展開には妙にリアリティがあり、逆に感情移入がしやすいかもしれませんね。一方の美緒ルート、シナリオの内容は、里伽子ルートにぶつけるかのような味覚障害という設定を用いた鬱々としつつも泣きを誘うルートでした。この重いルートをしっかり書き切ったのは評価したいですし、最後失速しますが全体的にはよく出来ています。そして美緒もかなり良い一枚絵を何枚も抱えてますね。

これらのシナリオは丸戸さんではないようですね。確かにシナリオの完成度はオリジナルほどではなく、特に瑞奈ルートでの仁の発言に違和感を感じたりする部分もまぁあるにはありますが、オリジナルの雰囲気を損なわず、ひとまわり大きな世界観を作ることができていると思います。ふたりともPC版の方で攻略できないのが惜しいなぁと素直に思えますからね。



【グラフィック】
原画はねこにゃん様、大好きな絵師さんです。ショコラ時よりも画力が安定してきていますね。

最も絵的に魅力があったのはやっぱ金髪ツインテールの玲愛かな。発売前、中出しに怒って精子垂れ流しながら仁を踏みつける絵がサンプルCGとして戯画HPに上がった時、「こ れ は 買 い だ」とその道で話題になったとかどうとか。夕焼けをバックに手をつなぐCGは、本作1,2を争うCGかと。あ、いや、違うな2番だな。だって1番は里伽子の赤ちゃんを抱くCGだと満場一致で決まってますよね(涙)?

それから、立ち絵がイマイチなかすりさんですが、一枚絵ですと正直一番かわいいですね。他ヒロインも文句のつけどころなのないくらい可愛く描けています。背景なども特に文句なし、素晴らしいです。


【キャラクター】
全体的に、よくもここまで魅力的なキャラたちを全員かわいく面白くかぶらせず描ききったなぁというのが正直な感想です。丸戸さんのキャラ造形のバランス感に拍手、ですね。

中でも、えー、ラブコメ王とも言える丸戸さんにツンデレを書かせたら右に出る者はいなかったようです。世のツンデレマニアを唸らせ、数々のツンデレ予備軍をその世界に引き入れた偉大なるキャラクター、もうプレイした人ならわかります、キュリオチーフの花鳥玲愛ですね。彼女の絶妙なツンデレ具合はもはや神業、付き合いだすかださないかの微妙なラインのシナリオ中盤は、悶えまくること請け合いです。シナリオには里伽子がいますが、キャラクターには玲愛がいる、シナリオ/キャラクター両面に超ド級のキャラクターがいるというのが本作最大の強みなのかもしれません。

それにしてもファミーユの面々の温かいこと温かいこと。かすりさんのあっけらかんとしたキャラクターが一番好きでした。次いで健気で一生懸命な明日香、変人ながらも要所を熱く締める由飛も、嫉妬深くて笑えるまーねえちゃんも…、これはショコラにも共通していましたが、丸戸さんは舞台の空気感を温かくする力に本当に長けていますねえ。

実は里伽子は、キャラクター的にはイマイチです……とかいったら怒られますかね。一般的には1,2を争うところだと思います。でもそれって正直シナリオに引きずられているからだと思うんですよね。個人的にはパルフェのヒロインの中では一番下かもしれない。まぁでも、それはものすんごいレベル高い位置での話ですよ。他ヒロインがもっと好きだったから、ってだけの話ですよ。声があまり好みでない、というのもあるのかなぁ……。

そして卵料理に並々ならぬ情熱を注ぐ、主人公の高村仁。前作結城大介にひけをとらないかっこいい男です。次々と襲いかかる困難に立ち向かい、まわりの協力を得ながらもなんとか打開していく彼の姿には、心打たれるものがありました。丸戸さんの主人公は皆かっこいいですよね。


【音楽】
量も十分あり、全体的に世界観に合った温かみのある音楽ばかりです。「tea time」「陽光」などは本当に作品に合っていると思います。OPは「Leaf ticket」、切ないイントロが印象的な良曲です。I'veとKOTOKOさん、いい仕事しています。それからEDの「つまんない恋」、こちらもOPに並んで感動的な曲ですが、これは由飛が作った曲としてクレジットされているのですね。通常はインストVer.なのですが、由飛ルートでは、シナリオと連動して演奏会で彼女がこの曲を歌って終わります。この演出はかなり鳥肌もので泣けました。BGMの中で図抜けていたのは「暖かい空気に包まれて」。あすかの文化祭シーンなど、印象的なシーンが甦りますね。


以上、パルフェでした。
本当に褒めてばっかですね。でもそういうことなんです。欠点がほとんどなく、すべての要素に対して太鼓判を押せる、「エロゲーのお手本」ともいえる傑作です。



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