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エロゲ レビュー ブログ
【放課後マニア倶楽部】
放課後マニア倶楽部

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メーカーLIBIDO
シナリオ■■■■■ 5
グラフィック■■■■■□ 5.5
キャラクター■■■■■■ 6
音楽■■■ 3
合わせ技■■■■■■■■ 8
総合【E】 48点

連合怪作

前作『放課後恋愛クラブ』の外伝的作品になりますかね。登場人物はすべて同じなのですが、シチュエーションや目的がまるで違います。そもそもハードな抜きゲー専門だったリビドーにとって純愛ゲーだった前作があまりにも異色だったわけですが、その前作ヒロインたちを陵辱するというコンセプトで本作を投下してくるとは大変恐れ入りました。

【シナリオ】
前作では主人公の友人だった小太郎君が本作主人公であり、隠された変態属性がプラスされています。表向き安穏としているものの本来の彼はかなりの下衆野郎でして笑、虎視眈々とヒロインを毒牙にかけようと狙っています。ストーキング、脅迫、陵辱とやりたい放題の彼自体も前作とのギャップが半端じゃないですね。ゲームとしての完成度自体は難ありですので、本作だけプレイしてもあまり意味はなく、純愛モノであった前作があるからこそ、この作品はキラキラと輝くんですね笑。

ですので前作プレイは必須です。いや、いまさらプレイする人なんていないか笑。必須でした。


前作同様のシステム、同様のヒロインながら、彼女たちとの仲を深めていく同じような過程の果てに変態行為へとたどりつくという前作合わせ技の設定は大変評価できます。ヒットした前作の馴染みあるヒロインたちを、容赦なくマニアプレイの餌食にするこの恐るべし発想、登場人物が全く同じということもあり、彼女たちがエロの毒牙に侵食されていく様子は非常に背徳的且つ興奮度も高く、その構成に感心したのを今でも覚えています。さらに本来の主人公を横目にその友人が堕とすという、NTR好きな僕にとっても胸熱の展開であり、まぁそれは個人の嗜好としても、少なくとも設定勝ちにより前作を超えた作品であると思っています。

何がうまいって、前作で純愛イメージが定着している子たちを陵辱してゆくんですからね。いわゆる凌辱ゲーって、最初の時点からヒロインへの感情移入ってそんなにできないじゃないですか。もう凌辱確定なわけですから。だがこの作品はなんか違うんです。純愛ゲーの前作があるからこそ、どうしてもヒロインたちにはまっさらなイメージがあるわけですよ。それをマニア道へ引き込むこの鬼畜さと妙な興奮……!


例えば、皆さんのよく知る純愛ゲーのヒロインたちが、容赦ないエロに襲われるヴァージョンのゲームが別途発売されたとしたら……買う人は挙手です。同じ絵師同じメーカーですよ。




……ほぼ全員が手を挙げてくれましたが、ここに同人誌を制作する人との共通の原動力を見た気がします。


とはいえ、まあゲームとしての質は前作と推して知るべしで、ストレスフルな劣悪システムと淡々としたシナリオはやはり退屈極まりなく、前作を基盤としているだけにエロも絵やテキストの派手さは全くなかったんですよね。まあ、前作のシステムに新しい素材を乗っけるだけで安価に制作したんだろうな。SM、近親、スカトロ、輪姦……と内容こそだいぶコアではありましたが、正直ほとんど記憶に残っていません。もしかしたら好きなヒロインの痴態にショックを受け記憶から消去しているだけかもしれませんが。

しかしそういった手抜きを逆手にとったこの設定は非常に面白かったですね。



【グラフィック・キャラクター・音楽】
原画は前作同様JOY RIDEさん、Win版黎明期に発売され美淡なグラにより目立っていた前作と変わらぬ魅力を持っていますね。見るからに純愛路線の絵柄ですが、彼女たちは皆マニアプレイを強要されています笑。

そしてキャラクター性の立て方、こういう立て方もあるんだなあ、と感心しますよね。本作のみだったら別になんてことないのですが、前作があるからこそ本作で妙な魅力を放つヒロインたち。設定により、キャラクター性が増しているというのはおもしろいことです。

音楽は前作同様たいしたものではまるでありません。


以上、放課後マニア倶楽部です。
本当に発売当時は話題になったようですね。その戦略といいますか、設定の巧みさといいますか。発売時は僕は知らなくて、だいぶ後になってこのパッケージを見たんですが、一瞬パッケージ刷新の廉価版かなんかが出たのかと思いました。

しかしこれ笑

関連レビュー: 放課後恋愛クラブ



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【姉恋模様】
姉恋模様

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メーカーBlack Rainbow
シナリオ■■■■■ 5
グラフィック■■■■□ 4.5
キャラクター■■■■□ 4.5
音楽■■■■ 4
寝取られ■■■■■■□ 6.5
総合【E】 45点

ハチ◯ツとク◯ーバー

しょっぱなから性癖を暴露してしまいますと、僕はどこかのネジがゆるんでいるみたいで寝取られモノって凄く好きなんですよ。ま、現実に自分に起こってしまったらまた別問題なのかもしれませんが……。

【シナリオ】
内気な主人公と学園のアイドルである姉、姉弟でありながらも互いを意識するようになる二人ですが、うまいこと気持ちは噛み合わずそれぞれ別の人と……という話ですね。「姉が寝取られる」という設定は色々と新しい感じですが、思ったより寝取られとしてのテキスト設定のツボは突けていたほうじゃないかなあと思います。

弟に彼女が出来、自分に言い寄ってくる先生と関係を持ってしまい堕ちていってしまうのはありそうな流れです。ま、個人的嗜好からいうと、この設定はちょっと寝取られとしての背徳感部分が甘いですけどね。それから、姉と弟のふたつの視点で物語が進むのが心情描写としていいですね。

ただ、どうしてもボリューム不足。キャラ背景やシナリオ構成の書き込みは取ってつけたようなもので、あくまで「姉が他の男にやられちゃう」という事実を中心においたゲームとなっており、これでは正直感情移入もそう出来ませんのでこちらとしてはあまり燃えない。寝取られシチュに感情移入は必須です。


このあたりは人により様々でしょうが個人的には、抜きゲーであったとしても、エロを目的としてまわりを固めるのではなく、シナリオやキャラを作り上げた先にエロで魅せて欲しいです。そのほうが感情移入が出来る分エロが際立ってきます。寝取られにしても、こういった単純な抜きゲーではなく、例えば「河原崎家の一族2」を引き合いに出しますが、重厚なシナリオと各キャラの頑張りや作り上げてきた関係の果てに、和姦にせよ強引にせよとにかく寝取られて、んでもってヨガってしまうシーンがあるからこそそのシーンが意味を持つのだと思うんだよな。うん。

ま、これはハードルの高い話だと思います。そういった作品ボリュームを満たしながらもエロを充実させるのがうまいのは、上記したようなエルフやアリスソフトといった老舗メーカーですよね。


【グラフィック】
少女漫画タッチに口の大きなキャラクター絵、誰が見てもこれは羽海野チカを意識していますね。ちょうど前年にハチクロがアニメ化されていましたしね。まあ別にそれならそれでいいんですが、どうにもうまくないんです。うまくないというか、絵がエロくない。平坦な棒みたいで、かわいくないんだよなあ。羽海野絵にするのはけっこう冒険だったと思うんだけど特徴的なのはそこだけって感じで、なんだか残念でした。


【キャラクター、音楽】
快活で明るいお姉ちゃんは好感触です。主人公のことが好きなマネージャーも。姉ちゃんを寝取る体育教師はキャラ的にしょぼくてイマイチでしたかね。音楽は出すぎず引きすぎず、これといった特長はないBGMですかね。まあ、こんなものかと。


というわけで姉恋模様でした。
寝取られ好きならプレイしても宜しいかと。属性ない人にとってはまごうことなきクソゲーかと笑。



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リンク一覧
個人レビューサイト一覧です。
どのサイト様も素晴らしいサイトですので、是非ご一読ください。


de spiriarto & lucy
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arto様運営のレビューサイト。抽象的な「心揺さぶられレベル」と具体的な数値で作品を評価。絶妙の間合いと漫画ネタなどを引き合いに書かれるレビューは非常に軽快で面白く、大変に参考になります。


なでしこやまと
なでしこやまと
浅生大和様運営のレビューサイト。目を引くのはなんといっても外観鮮やかなサイト設計。しかし中身のレビューテキストも同様に充実且つ読みやすい内容となっており、この手のサイトでは唯一無二の存在感を放ちます。


廃人さん、いらっしゃ~い
廃人さん、いらっしゃ~い
へなへな様運営のレビューサイト。程よい分量で要点のわかるレビューは技術の高さゆえかと。特にネタバレ領域に入ってからの情熱的且つ的確なレビューはついつい読み込んでしまいます。


稀神大社
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まれびと様運営のレビューサイト。可愛らしいオリジナルキャラクターを用いた対話形式のレビューが特徴的です。独特のテンポと対話により考察が広がりをみせていく面白い仕組みだと思います。


なぎゅ@ピンク色の妄想
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なぎゅ様運営のレビューブログ。エロゲレビューのレーダーチャートが印象的。PCゲームにとどまることなく、アニメや漫画の話題など、幅広くフレキシブルに展開するサイトさんです。

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【リアル妹がいる大泉くんのばあい】
リアル妹がいる大泉くんのばあい



メーカーALcotハニカム
シナリオ■■■■■■□ 6.5
グラフィック■■■■■■■ 7
キャラクター■■■■■■■ 7
音楽■■■■■■■□ 7.5
友人の存在感■■■■■■■■■ 9
総合【C+】 69点

堂々と実妹攻略

2010年発売の中ではダークホースといいますか、意外なまでの名作ということで共通意見を持たれている本作です。基本的に長編大作ばかりをプレイする僕ですが、たまにはこういう軽いノリで進むミドルプライスのゲームもいいですね。


【シナリオ】
主人公の大泉涼は、親友の妹尾彰とともに妹モノのエロゲーが大好きな高校生。そんな二人にはそれぞれに実の妹がおり、共に軽蔑の目で見下されています。ある晩、涼お気に入りの妹キャラ「麻衣」が登場しているゲームをプレイしていると、これまで存在が確認されていなかった独自のルート展開を見せます。麻衣が画面の外にいる涼に話しかけてくるかのような展開はそのゲームに無いはずのルート、さらに翌朝、寝ていた涼を現実世界で起こしにきたのは、当の「麻衣」ちゃんであり……。


といったあらすじ。以降、涼、涼の妹である栞、麻衣との3人生活が始まります。学校では彰と妹の美紀、それから何故か涼と彰を敵視するバスケ部の古賀君、このあたりが登場人物のすべてですかね。

プレイしていて思ったのは、なんといいますか……エロゲーマー心をくすぐるテキストですね笑。「そうそう」って納得してしまう場面や行動が随所に散りばめられていて思わず笑ってしまいます。ただ、妹がゲームから出てくるというトンデモ設定があり、しょっぱなから友人彰のギャグが冴え渡っていますので、そのままギャグ路線で突っ走るかと思いきや、家庭事情や、兄妹の関係に何かありそうな伏線が少しずつ提示されていくところに光るものがあります。


攻略ヒロインは美紀麻衣、そして。美紀ルートは親友の妹とくっつく王道展開。麻衣ルートは栞ルートへの伏線、そして実妹の栞ルートが本作TRUE展開といえましょう。最も話が良いのはやはり栞ルートであり、両親の離婚問題と絡めて、麻衣出自のからくりや、近親相姦というタブーを、彰や古賀をはじめとした周囲の人間の協力をスパイスとして使うことで非常に熱く描いています。

うまいのは、この最終の栞ルート、視点が栞と麻衣にうつるところですかね。前のルートで既出の同じ場面でも、栞や麻衣の内面吐露が新たに加わっているところ。ああこの場面では実はこんなことを考えていたのか、というのがここへきて初めてわかります。


残念だったのは、麻衣ルートがあまりにも微妙な立ち位置だったかな。実妹である栞との話が重く、また圧倒的に力が割かれていますので、ゲームのキャラが出てくるという大仕掛けであるはずの麻衣が少し宙に浮いたような存在になってしまっています。実際、彼女が父親の再婚予定相手の娘である「舞」、という伏線はすべて栞ルート内で明かされますので……まあただ、彼女のそのカラクリの絡ませ方は、非常に切なくてラストで生きてきましたので良かったですけどね。

まぁ、他にも話に食い込む伏線を持っていそうなキャラ古賀君がただのガチホモだったり(笑いましたが)、短さゆえの肩すかしな場面もたくさんあったにはあったんですが、ライトなシナリオゲーということを割り切って、大きくまとめようとしないことで失敗を避けたところは逆に良かったのかな。

ただ正直いうと、主人公が妹凌辱ゲーが大好きという設定と、後半のシリアス展開や兄妹の美しい絆を前面に出したシナリオとのギャップがあまりにも乖離してしまっていたのも事実。いやこれは前提を覆すことなのでどうしろとは言いませんが笑、もう少し尺や設定をどうにかすることで違和感を薄めることはできたんじゃないかなと思ったりもします。


光っていたのは最後の演出でしょう。「こう言おう、俺の妹に生まれてきてくれて」と、最後まで言い切らないテキストと、それに続くED曲の歌いだしの歌詞が「ありがとう」とはなかなか鮮やかじゃないですか。そしてエンドロールの後、主人公、栞の二人と舞がすれ違うエピローグから、3人を収めたその構図の一枚絵でメニュー画面に切り替わる演出。いやね、エピローグがいいというのは事前情報で伺っていたんですが、いやはや、本当に良い演出でした。ここでの穏やかなBGMもいいすね。

本作品をユーザーに「良かった!」と言わしめるのはまさにこのたった数行、時間にして数十秒のこの場面があってこそです。


【グラフィック】
原画は全体的にかわいく綺麗に描けています。枚数的には、シナリオ量的にも過不足なくといった様子でしょうか。美紀は凄くかわいいんですが、他キャラは立ち絵が若干微妙ですかね。一枚絵の方が全体的に良いです。


【キャラクター】
実妹の栞、ゲーム妹にして父親の再婚相手の娘である麻衣、親友の妹である美紀、と3ヒロインいますが、どことなくけいおんのあずにゃんとかぶる栞がやはりシナリオの重さも相まって一番魅力的だと思います。実はデレ妹という王道設定もまた良し。個人的には美紀も好きですけどね。

しっかし彰の爆裂妹至上主義には頭が下がります笑。やれ妹の尿を飲めだのやれ妹の寝取られゲーを叩き割るだの、彼の妹に対する愛情はもはや神の領域。それでいて実の妹には頭が上がらないところがいいキャラ設定ですね。ここまでギャグ要因として立っているのも爽快感すら覚えますわ。エロゲユーザー代表みたいなキャラ設定ですんで、セリフがいちいち面白く、出てくるたびに笑いを投下していきますからね。彰と美紀のやりとりとか鉄板でしょう。それでいて本当は美紀思いで心底大切にしているところも熱いんですけど。また、リアル妹がいることで主人公たちを妬んでいただけだったり、ガチホモになってしまったりとギャグ要因でしかなかった古賀君にも熱い見せ場がありますし、美紀も栞思いでナイスアシストしますし、基本的には全キャラ良い人たちです。


【音楽】
なにげに全体的に音楽いいんですよね。中でも、上記したエピローグで流れる「はじまりの唄」が抜群。ん、「はじまりの唄」というタイトルなんですね……舞の新たな人生、そして主人公、栞の二人の生活のはじまりの唄か…、あざといな。だがそれがいい。

それから、ちょっとアレンジはイマイチですがメロディが良い「ひたむきに、涼やかに」も印象に残りますね。熱いシーンで流れる曲なので。OP「Your little sister」、ED「Dear my precious」ともに片霧烈火さん。作風に合ったアップな曲調で良いです。


以上、リアル妹がいる大泉くんのばあい、でした。
しかし最近は実妹と関係を持つゲームが普通に見られるようになってきましたね。良くも悪くも……ですか?



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【そして明日の世界より――】
そして明日の世界より――



メーカーetude
シナリオ■■■■■■■■■□ 9.5
グラフィック■■■■■■■■■■ 10
キャラクター■■■■■■■■□ 8.5
音楽■■■■■■■■■□ 9.5
日常■■■■■■■■■■ 10
総合【S】 92点

滅びることのない希望

開始5分で名作の香りがしましたね。温かく流麗なBGM、美しい背景CGとキャラ絵、自転車での夕方の帰り道で次々と現れる、王道ながらもテンポよく紹介されていく登場人物たち。健速さんのテキストもそうですが、etudeの演出の丁寧さ、世界観作りの巧みさにはグッと来させるものがあります。

前評判の高さから期待していましたが、ここまでとは正直思っていませんで、予想の上をいく素晴らしい世界観とシナリオに感動しました。くそったれ、これだからエロゲはやめられねーんだ


【シナリオ】
舞台は都会から離れた静かで美しい島。かつては栄えた島もいまや過疎化が進み、少ない人口で互いを支えあう静かで穏やかな暮らしがそこにはあります。主人公の葦野昴、お隣さんの幼馴染夕陽と姉であり教師の朝陽、級友にして親友の青葉、病弱な転校生御波、それが彼らの形成する学園生活の全てです。

そんな彼らに突如襲いかかる、3ヶ月後に小惑星が衝突し世界が滅びるという揺るぎない事実。小さな社会の中でさしたる混乱が無いながらも事実を受け入れようともがく面々。世界の終末を若くして迎えなければならなくなった彼らは、この小さな世界で何を思うのでしょうか。



以上あらすじですが、しかしこの健速さんという人、閉じた世界での緩やかな時間を描かせたら右に出る者はいませんね。序盤の日常パートなんて本当に世界に引き込まれました。キャラクター同士の信頼関係、会話、優しさ……、文章を越えてにじみ出てくるものがあります。小惑星衝突が政府から発表されOPムービーが差し込まれるまでの導入部分だけでもそれなりの尺が割かれていますが、ここでの学園生活や放課後、家族とのやりとり、抜群の雰囲気です。それだけに終末に突き進むストーリーだというのが勿体無い、とすら感じてしまいました。


小惑星衝突の報道がなされてからの各人の反応や、喧騒とはかけ離れた小さい島における静かな滅びが痛々しくてうまいですね。舞台が別の場所であれば、「SWAN SONG」のように群衆パニックを描かなければならない。もしくは「終末の過ごし方」のように、世界が事実を受け入れた後の話として展開するしかない。そこで舞台をこの小さな島に限定することで必要最小限の混乱に留めたのはうまいところで、だからゆえに身近な人々の内面を丁寧に描くことができたともいえます。


また、昴のみが災害回避の避難シェルターに当選するという事実が、物語を深くします。日常シーンは綺麗に流れていくのですが、毎日同じような雰囲気の繰り返しであることは否めず、ともすれば飽きられがちな日常を重ねていくことに対して、ダレるギリギリの線でこの件を入れ込み昴の思考を動かすのは良いタイミングだったといえます。

前日、彼の独白で、「普段ならば気にならないものに目がいくようになった。俺の生活は関わりのある人たちなしには成り立たない」と、ひとつの到達を得る直後のことだったのがまたうまい。助かったところで彼が何よりも大切にしていた人たちとの別れは必至ですが、一方で生きたいと願う自分、そして両親の強い思いがのしかかります。


昴に全幅の信頼を寄せるお子様系天才型幼馴染、日向夕陽ルート。シェルター行きを夕陽のためにあきらめる昴と、逆にそれにより昴の死を自分のせいで確実なものにするジレンマが夕陽を強く葛藤させます。ラスト、これまで夕陽のためにすべてを行動していた昴が、自分のわがままを告げるシーン、つまり自分のために行動してほしいと夕陽に懇願するパラドックス的なシーンは実に熱かった。これは「遥かに仰ぎ麗しの」などでも見られる健速さんの得意パターンですね。それまで行動的だった主人公がラストでヒロイン側の力を得るという逆転手法です。

これ、姉の日向朝陽ルートも同じ構図を山場で使うんですよね。つまり朝陽も夕陽を守ることに固執して、彼女の意思を汲み取りきれていなかったことですね。3人が3人を愛して思いを注ぐことで、その各々の行動が双方向になっていないというあまりにも優しすぎる間違い、このあたりは綺麗でしたよ。しかし彼女のラストは、朝陽夕陽昴の3人END、昴が関係云々抜きにしてふたりの笑顔を守り続けることを誓うENDですが、下世話な言い方をすればハーレムEND的な感じでして、良かったのでしょうか笑。


そして、このメインヒロイン姉妹よりも、シナリオ的にもキャラクター的にも、クラスメイトの青葉、御波の方が立っています。キャラデザもこの二人の方が断然かわいいですし。

快活で昴の相棒として描かれる樹青葉ルート、実は嫉妬もするし怯えもするヒロインの中では最も女の子らしい本性を持っています。滅亡発覚を機に本当の自分が浮き彫りになるという展開としてはまぁ王道なのですが、とにかくキャラと青山ゆかりさんの演技がはまっているため、とても魅力的に描かれます。キャラ絵も一番好きだな。髪を下したヴァージョンが用意されてるところもグッジョブ! ただモロにヤンデレ化して本来の自分を表現しだした時はどうしようかと思いましたが笑、そこは昴君しっかりと押さえてくれましたね。ラスト付近の本当の自分を表現できるようになった青葉は本当にかわいくてたまらんです。


療養のために島に引っ越してきた転校生水守御波ルート、病弱キャラではあるのですが、彼女はしおらしすぎず、意外と表情豊かでちょいちょいウィットに富んだ余裕を見せる部分がキャラを立てていますね。また彼女は常に病気による死と隣り合わせの生活をしているだけに、唯一終末を抵抗なく受け入れることのできる精神を持っています。しかし昴をはじめとした大切な日常を手に入れ、皆と同じ「普通」を手にすることで初めて現実に怯えてしまうところからが本ルートの肝でしょう。本ルートは4ルートの中でもっとも美しく綺麗に言葉が紡がれていくルートだったと思います。特にラストの星空を眺めながらの昴との会話は引き込まれました。


そしてノーマルルート、これは昴がどのヒロインも選ばなかった時のENDであり、通常BADとなりそうなものですが、最も美しい大団円ルートです。ヒロインこそ選びませんが、だからゆえに平等に各ヒロインが昴に対して優しさを注ぐルートとなり、感動的なエピソードが随所に散りばめられています。このルートで鬼のごとく活躍を見せるのが、山頂で昴とともに温泉を掘っている八島のじいちゃん。御波のキリスト聖書の授業のくだりを受けて、昴にこの世の滅びなどありえないことを諭すシーンは見事でしたね。そして父親の竜と灯台で自己の存在を語るシーン、ここの会話もまた実に熱い。日向姉妹の父親である陽おじさんも共通パートでかなり熱いセリフを吐きますし、こういった大人が絡む泣きのシーンはずるいですねえ。


今だから言うのですが、僕はそれほど健速さんのテキスト好きじゃなかったんですよ。世界観作りと温かさが秀逸というのは共感できるんですが、ギャグのキレはありませんし、シナリオも、なんというかな……綺麗すぎて面白みに欠ける部分が確かにあって、世間的に評価を決定づけている「遥かに仰ぎ、麗しの」でも僕は丸谷さんサイドの話の方が好きですし、「こなたよりかなたまで」もシナリオは今ひとつだと思っていました。しかし本作、そんな彼の手がけた作品では間違いなく最高レベルのテキストであり、終末というテーマを置いたことで、彼の世界観とキャラの内面が圧倒的な輝きを放ちました。これまでの僕の評価を覆しましたね、嬉しい誤算です。


このTRUEと呼ぶべきノーマルルートも、終末までは描かれず、昴の決意と周囲の思いを浮き彫りにして優しさをもって物語は閉じます。

これから始まるのは俺たちの小さな世界に訪れた二週間ばかりの例外の物語、その言葉で始まる本作品、なるほどその通りでした。彼らが日常を見失ってから悩み行動し、その結果改めて変わらない日常を過ごすことを決意するまで、それだけの二週間が描かれている小さな小さな作品です。




いやー、ええ話やった

そう思い僕は余韻に浸るためにEXTRAのALBUMを開きました。あれ??コンプできていないじゃないか。そう思いおもむろにSTARTを押してみると、「After」なる文字が出ているではないですか!

それは世界の滅亡から30年後の話でした。荒涼とした地上で、わずかに生き残った人類が見つけたのは、終末のわずか前に島の皆で温泉を堀り当てた際の集合写真……。

視点を昴ではなく生き残った誰かである「俺」に移したのも上手かった。生き残りながらも世界の現状に絶望を抱えている彼が、死の縁まで笑顔で過ごした日常があったことに希望を見出す瞬間。

泣きましたね。ここは泣きました。思いは残る、そして世界は終わらない、八島のじいちゃんが諭し、昴が継承したその思いが30年の時を経て希望の活路を拓く素晴らしい閉じ方でした。



【グラフィック】
な、なんですか、この素晴らしい原画家さんは!! 

植田亮さんというのですね、本作ではじめて彼の絵に触れました。髪まわりの造形がどう見ても変というのはさておき、透明感のある絵と温かくて豊かな表情、瞳の力、キャラを生かす構図、ハンパではない魅力を放っています。一気に惚れ込んでしまいました。更にそれに呼応するかのような背景の美麗さ。そして背景にも植田さんが関わっているという驚き。うーむ、素晴らしい絵師さんや背景スタッフを立てているみたいですね、etudeは。絵色や艶が魅せる世界観づくりがすさまじいです。これは原画家買いするユーザーも多数いるのではないでしょうか。


てか、ひとつ言いたいんですけど、昴の母ちゃんのキャラデザかわいすぎないすか? 最初攻略できるのかと思っちまいましたよ。


【キャラクター】
主人公よりもヒロインたちよりもまずここを言及させて下さい、それは主人公たちの親です。父性、母性。この極限下においてこれほどまでに美しく頼りあるものとして描けているのは素晴らしいですね。昴の両親である竜と海、そして朝陽夕陽の父親である陽、まったく違うタイプの3人ではありますが、彼らの親としての行動の数々は本当にグッときますね。子を思う暖かい目線とセリフの数々、泣かせられましたよ僕は。

主人公は葦野昴、健速さんの描く主人公としては比較的男らしいキャラで好感が持てます。ヒロイン勢では、大人しいながらも表情がよくまわる御波が断トツにかわいいですね。でも個人的に一番好きなのは快活な努力っ子青葉。昴のために女の自分を抑えている様は切なくもいじらしいです。メイン格の日向姉妹は、昴を立てるためのヒロイン像としての側面が強かったかな。ここはちょいと惜しい。

しかし彼女たちと昴の信頼関係の描き方は本当に感情移入しましたね。僕の拙いレビューを見てくださっている方には僕の好みの傾向がわかるかもしれませんが、僕は主人公、ヒロイン以外の脇役をけっこう重要視します。特に男性キャラの活躍を求めたい傾向があり、メインキャラ群にはいい働きをする男性友人キャラがいてほしい、とよく思います。しかし本作、はじめてそういう思いを抱かなかった。男ひとり対ヒロイン群という構図がここまで綺麗にはまった世界構築というのは珍しいケースかと。


余談。青葉ですが、青髪のスポーツ少女が若干ヤンデレしてしまうところは「君が望む永遠」の水月を彷彿とさせませした。


【音楽】
また音楽が素晴らしいんです。ピアノ、ストリングス、管楽器を中心に置いた、きれいな旋律のBGMが多いですね。穏やかなシーンにも、刹那的なシーンにも実によく合っています。特に、「Happiness」これがいい。ピアノのみの旋律からシンセを入れたリピートに流れる展開が素晴らしい良曲。泣きシーンで使われる「はてなき想い」、OPをアレンジした「星空を見上げて」がまたいいですね。そしてなにげない会話の中に現れてくる「アメージング・グレース」、これ自体が決め所のBGMになるというのにもやられましたね。

OPは「For our days」、雲の切れ間に光が差すような、頭に残る名曲ですね。またEDは各キャラずつに用意されているという丁寧な仕事ぶり。綺麗な佳曲揃いといったところでしょうか。


以上あすせかでした。2007年を代表する作品ですね。終末ゲーではありますが、だからこその日常ゲー最高峰の称号を与えたいと思います。



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