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魔法少女まどか☆マギカ レビュー
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2011年冬アニの大本命にして、近年まれに見る話題性を持って邁進していた「魔法少女まどか☆マギカ」がついに最終話まで放送され完結しました。

奇しくもその内容が東日本大震災と重複するような描写もあり放送自粛されていたわけですが、ともあれひと月遅れで放送されたのはうれしい限りです。最終回は読売新聞朝刊に全面広告ってのもビビリましたね笑


まどかが魔女の定義を書き換えることにより宇宙の法則が変わるという、最後は思った以上に壮大にまとまりましたが、伝説級のアニメとして今後残っていくだろう本作においては、小さくまとまるよりはこれくらい派手な方が良かったと思います。

大きな決心がその瞳に宿ってからのまどかの強さと愛、共に戦い続ける思いを固めるほむらの意思(ほむらの武器が弓に変化しているのは涙でしょう!)、純粋なさやかの優しさ……、多感な少女たちのそれぞれの決意をこの「魔法少女」というファンタジーで見事に魅せてくれました。


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さて、せっかくですのでレビューをしたいと思います。

結論から言ってしまうと、期待を裏切らない傑作アニメだったのではないでしょうか。僕個人としても毎週楽しみにしていましたし、世間的な評価も非常に高く、具体的な数字に表れる影響力も前人未到の快進撃を続けていました。



しかし思うわけです。なんでまたここまで多くの人をひきつけることができたのか、その面白さは一体どこにあったのか。魔法少女モノという設定は使い古されたテーマですし、正直それほど魅力的なテーマとも僕は思いません。蒼樹うめてんてーの絵もおおいに人を選ぶでしょう。

色々考えられる点はあると思うんですが、僕個人としては、「演出力」と「構成力」、この2点があまりにも抜きんでていた、そう思っています。


まずは演出力です。

このアニメには、これでもかというほどの「ギャップ」が詰め込まれていました。そもそもハードボイルドにしてハッピーエンドを描けない虚淵玄さんが魔法少女モノを描くというのが大前提としての大きなギャップであり、エロゲにて彼の作品を知る人間は、その時点でこのアニメに途方もない魅力を感じました。うめてんてーの絵、魔法少女モノという煌びやかさと、ダーク路線なアニメはとても結びつきません。そして実際始まってみると、当然のように虚淵節満載のひどく陰鬱な展開が待っていました。このギャップに、虚淵玄を知らない視聴者も引き付けられたはずです。

勧善懲悪に則る王道の魔法少女モノのテンプレートを次々と裏切る展開。序盤3話での主要キャラの早すぎる喪失、次々と明らかになる魔法少女のカラクリ、味方のはずだったQBの真意、ほむらの伏線と行動動機……、見た目のかわいらしさと思春期の少女を前面に出しながら、彼女たちがどう考えても不幸にしかならない詰んだ展開は壮絶なギャップを僕らにもたらしました。

さらに、シャフトによって色づけされる、アニメの枠をこえた演出の数々。特に、毎回毎回写真を切り貼りしたかのような、ロシアアバンギャルドの要素をモロに突っ込んだ魔女との戦闘シーン。これもまた蒼樹うめ絵とのギャップを演出していたと思います。

ロシアアバンギャルドに興味がある人はこのあたりのPVは響くでしょう。
Franz Ferdinand 「Take me out」


また、黒、灰といった影をベースとしたうえで色彩を効果的に差していくサイケデリックな色調使い。これはシャフトお得意の演出ですね。歪んでいく少女たちの思いや、煮え切らないまどかの思考にこのサイケさは綺麗にはまっていて、見事なものでした。



そして構成力。

前にも少し述べたのですが、ここは虚淵玄さんのプロフェッショナルさを垣間見ました。彼は、ゲーム畑のライターですが、こと本作においては完全にアニメ畑に思考を切り替えていました。いや、そもそも虚淵さんのゲーム自体も冗長にせず映画のように見せる作品ばかりですので、考えてみれば彼は構成力に特化したライターだったのでしょう。

アニメというものは、1話15分×2、さらに7日間の期間が空いて次話という大きな制限を受ける媒体です。いってみれば構成力がモノをいう表現媒体であり、彼の構成力がゲーム以上に試される状況だったと思います。

そして結果どうたったかといえば、1話の中において、序盤で伏線要素をちりばめ、中盤で入る魔女演出、そして終盤での伏線解消と次への引きの残し方、とてもバランスが良かった。大きな視点でみても、序盤でのマミさん退場を皮切りとしてキャラそれぞれの顛末が、実に練られた構成で僕らを引き付け続けました。



もちろんシナリオが非常に良かったことは言うまでもありません。個々の少女たちの悲痛な願い、魔法少女と魔女を対比させたシナリオは時に繊細に、時にダイナミックに僕らを引き付けましたし、特に、溜めに溜めて放送されたほむらの伏線解消回、時間遡行を用いた彼女の心情描きこみの激熱第10話は、本作ピークタイムであるとともに、近年アニメの中でも神回と呼べる位置づけになると思います。

ラストも、魔女化のシステムを改変することで完全ハッピーな世界になるかと思いきや必ずしもそうではなく、魔法少女を救済するに留めて戦いは終わらない、というビターに落ち着けたのも虚淵さんらしい味がありました。

ただ、そのシナリオのポテンシャルを限界以上に引き上げた新房監督、シャフトスタッフの演出力、アニメを意識した虚淵さんの構成力、ここに賛辞を送りたいのです。



いや、非常にいい作品でした。僕のまわりでも、あまりアニメを見ない友人や同僚さえもまどかマギカは見ていた、という話をちらほら聞きます。

未放送騒動も含め盛り上がりに盛り上がった魔法少女まどかマギカ、堂々完結です!!

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まどかマギカと虚淵玄
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2011年期待の冬アニ「魔法少女まどか★マギカ」が6話折り返しです。mixiの雑記として書いたものですが、虚淵玄さんについて少し言及する内容でしたので、当ブログにも雑感程度に残しておきます。


中間地点折り返しということもありますが、だいぶシビアな感じに話が動いてきましたね。本当に面白い。


今回6話の母親とまどかとの会話の内容なんて、実にビターで虚淵さんらしい台詞で素直に「すげー」とグッときてしまいました。

ニトロプラスの彼の作品をプレイしたことのある人にはわかるかと思いますが、この人は「幸せ」を当たり前のものとして描きません。現実の厳しさを負の観点も交えながら貪欲に言及します。だからこそ薄っぺらなものにはならずリアルで、僕たちは痛みを覚えながらも彼の物語を愛するんですね。


僕は今回のまどかマギカを通して、虚淵玄という人は本当にプロフェッショナルな人なんだなぁというのを再認識しています。

思えば去年「Angel Beats」ではエロゲライターの麻枝准さんが総脚本を執筆するということで凄く話題になりましたよね。結果は、商業的という意味でも、またファンを引き付けたという意味でも成功だったと思いますが、じゃあアニメとして名作だったかというと決してそんなことはなく、"アニメ"という形式を取ったがゆえに魅力を表現しきれず微妙な感じになってしまった、そんな作品だったと思います。や、僕は好きなんですけどね、客観的に考えてです。

ですが、ここまでのまどかマギカを見ていると、そのキャラのバランス感や30分の制限時間内でのシナリオの進め方など、虚淵さんには、自分のシナリオを、自分の設定を、アニメとしてどうすればうまくまとまって魅力的に見えるかということがわかっているように思えてなりません。

当然虚淵シナリオですので、バランス感云々以前にダークな展開を見せる引き付けるシナリオであることも前提として間違いがないです。ADVゲームとアニメという、違う畑の作業であるというに、彼の作風にブレがなく、安定感が凄いんです。

6話は、後半の魔法少女のひとつのカラクリの伏線消化も鮮やかで良かったですねー。30分があっという間ですわ。あとあれだね、主題歌、コネクト、凄い良いですよね。


絵が蒼樹うめてんてーなんでギャップが凄いですけどねww
続きが本当に楽しみ!! なアニメなんです。
Angel Beats! 総括
Angel Beats! 総括 

「1クールアニメとしては…、しかし作品としては名作」


良くも悪くも最後まで話題作でしたね。信者/アンチ両派閥を全編に渡って取り込み続け、さらに音楽などの他メディア展開でも良い結果を残したことを考えると、少なくとも商業的な意味では大成功であったと言えるでしょう。思えば「麻枝准、再始動」とのキャッチコピーをもって放映の1,2年前からkeyHP上で情報が少しずつ公開されていった本作、脚本が麻枝准さん、原画は Na-Gaさんというkey最強布陣、大御所ANIPLEX企画、瀬戸の花嫁の岸誠二監督、こだわりをみせる音楽面…と、放映開始まで本当に楽しみで仕方が無かったのは僕だけではないはずです。


ですが、脚本担当の麻枝さんはやっぱり「ゲーム」のシナリオライターでした。そもそもゲームというものはテキスト総量が圧倒的に多いため、いかようにも構成を膨らませることが出来ます。また、各々ヒロインのルートごとに別のシナリオが存在し、時に互いに補完しあうスタイルを持ちます。そういった多角総合的にシナリオを作っていくスタイルに慣れたライターが、1話30分限定+7日間のブランク、という制限を受けるアニメの全脚本を担当するというのは、そもそも畑違いだった感は否めません。

実際、Angel Beats! は設定説明、シナリオボリューム、登場人物すべてが非常にゲーム的であったと共に、とても1クールアニメにおさまる規模感ではなく、そもそもの部分でキャパオーバーしていました。特にキャラの掘り下げは本当にもったいなかったとしか言いようがなく、あれだけキャラが立っていたメンバーひとりひとりにしっかり焦点が当たり、キャラ同士の関係性やエピソードがもっと見られ、各々の最後の消失までしっかり描かれる時間が与えられていたならば、最終回ラストのエンドロールなんて涙が溢れて止まらなかったことでしょう。

麻枝准さんの脚本全面担当というのが本作の売りではあったと思うのですが、ゲームライターである彼のシナリオと、アニメとしての現実的なシナリオ、ここを調整するクッション役が存在、機能し、且つ2クールにまたがる尺が与えられていたならば、前評判通りの伝説作品になったのではと思っています。



どなたかのブログに書かれていたのですが、Angel Beats! は、設定的に本当はもっともっと大きな"ゲーム"作品なのだ。そして今回のアニメ放映では、「立花奏」ルートを一本プレイしたにすぎない。だからこのルートだと設定などには細かく言及されないし、ゆりや戦線メンバーも脇役的な扱いになっているのだろう、と。

これは物凄くストンと来ました。なるほど、そのとおりです。本当は他にもゆりルートや椎名ルート、ガルデモメンバーのルートなどもあり、それらのシナリオで互いのルートを補完し、最終的にコンプリートしたときに最高の感動が待っている、と言われれば凄く納得できてしまいそうな作品ですよね。やっぱり本作ゲーム化してほしいですねえ。



好みこそあれど、KANON、AIR、CLANNAD、リトルバスターズ……と超人気作を次々と生み出した麻枝准さん自体はやっぱり凄いですよね。ですが、彼はもともと緻密なフラグを立てて回収していくタイプではなく、「奇跡」「絆」という力技で感動させる類のライターです。keyのゲームをプレイしている者であれば、ABアンチ派閥が言及しているような世界観の説明や整合性のしっかり取れたシナリオといったものを彼に対してそこまで期待しませんし、多少力技になったとしても、それに値するだけの感動や演出があればいいと思っていました。そしてそういった意味では、先が気になる物語と綺麗に連動した作中音楽や、動きのある作画、独特の採光の効果……といったグッとこさせるための演出面の絡みは最高クラスで、ライブシーンや戦闘シーンの派手さ、ユイ消失回や最終回ラスト、エンドロールの情景の演出は本当に素晴らしいものがあり、制作陣営の地力を見た気がします。


終わってみれば、3話の岩沢消失時から分かっていた、満足したら成仏する、という設定を最後の最後まで追いかけていたわけですが、原作ありきの昨今のアニメと違って、オリジナルものは誰も展開を知らないのがいいですね。特に本作は、設定が特殊で先があまりにも見えない展開だったので、毎週毎週あらゆる場所で展開予想や伏線考察などがされ盛り上がっていました。最後も、尺の問題とはいえ、多くは語られないまま視聴者に想像を委ねる余地を大きく残し幕を閉じましたが、他メディアでの別展開があれば嬉しいですし、個人の二次創作なども多く作られそうな気がしますね。



ちなみに僕は、信者/アンチどちらかでいえば圧倒的に信者サイドでした。

まあ正直なところ、突っ込みどころは上げ出せばキリがありませんし、もったいないところもやはり上げ出せばキリがありません。アニメの完成度としてはどうなの、と思います。ですが、個々のキャラクターはよく立っていましたし、挿絵や台詞、音楽といったこと演出面において震えるような場面がいくつかあったのも確かです。物語において、伏線消化やストーリー性などの「線」といいますか、「流れ」の美しさこそが完成度に重要であることは間違いありません。ですが、本作のように特定の場面のシナリオや演出という「点」が神がかっていたことも、この作品においては事実だと思うのです。学園モノ、仲間モノのドタバタ劇が個人的に好きだということもありますかね。


そういった意味では、本作はアニメという形をとったがゆえに賛否両論を生んだといえましょう。「せめて2クールあったら」「これがゲームだったら」……と、まぁたらればは野暮なのでやめましょう。

Angel Beats! という作品自体は、誰がなんといおうと、非常に良い作品であったと僕は声を大にして言いたいのです。

テーマ:Angel Beats! - ジャンル:アニメ・コミック