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【るいは智を呼ぶFD ~明日のむこうに視える風~】
るいは智を呼ぶFD ~明日のむこうに視える風~



メーカー暁WORKS
シナリオ■■■■■■□ 6.5
グラフィック■■■■■■□ 6.5
キャラクター■■■■■■■■ 8
音楽■■■■■■■ 7
主人公補正■■■■■■■■■ 9
総合【C+】 69点

男の娘ゲーは高みへ登る

08年ダークホースであった「るいは智を呼ぶ」のファンディスクです。サブキャラだった恵、央輝、宮和に焦点を当てた3つの個別ルートが描かれ、また本編にてぼかし気味だった恵の呪いや麻耶の真意などが明かされます。

本編とは別軸の物語を描いておりボリュームも申し分なく、FDとしては正直出来がいいですね。各ヒロインとのアフターを描くFDがFD足らしめられている中、そもそもキャラゲーに食指があまり動かない僕にとってはこういう構成をとっているのがファンディスクの正しい在り方だと言いたいです。

どうしても前作プレイ済み前提の文章になってしまいますので、それを踏まえて読んでいただければ。


【シナリオ】
男の娘主人公の和久津智とまわりに集った5人の少女たち。各々は、人間の領域を越えた能力と、踏んではいけない呪いを併せ持っています。例えば皆元るいであれば、人外魔境な身体能力を得るかわりに、未来の約束をしてはいけない、などですね。加えて同じ運命を持つ本編サブキャラだった尹央輝と才野原恵。彼女たちを交えてシナリオは別の方向に進んでいきます。

本作は、本編共通ルートのパルクールレースを終えたあたりを起点としていますね。だいぶ序盤からの再構成ストーリーとなりますが、一応本編の伏線回収ルートであった茜子ルートまで見ていることが、ある程度前提になってきますね。まあ本編をやらずにFDだけやる人などまずいないと思いますが……。

メインストーリーから分岐するのは、智の学友宮和、裏社会に生きる央輝、謎めいた言動で智たちと関わる恵。本編でも人気がありシナリオ的にも重要であった彼女たちのルートがあるのはFDならでは。


本編ラストで明らかになっていた、様々な未来から望む未来を手繰り寄せる智の双子の姉である麻耶の能力を仕掛けに使ったシナリオ群。ギャルゲーの特長であるルート分岐という仕組みをシナリオに絡ませたのは評価です。彼女が見せたいくつかの未来分岐が各シナリオとして展開されるというカラクリで、本編のストーリーですらもその一端であるという設定ですね。

央輝ルートが個人的には好きでしたかね。んなぜならば!本編の央輝はそのツンケン具合が最高に光っていたため、智と恋人になるツンデレ央輝は全俺待望の展開だったからです。シナリオ自体は彼女を仲間に引き入れていくという地味なものでしたが、兎にも角にもキャラが萌へる!

本編トリックスターの恵ルートは、その人の命を奪うことで自分の命を繋いでいく能力という設定から、詰んだ展開しか想像できませんが、最後は智が殺人を肯定して二人で生きてゆくという陰りのあるものでした。本編では恵は死にますので、ある意味恵の救済ルートではあるのですが、どうにもやりきれないですね。

この恵の存在があったからこそ本編は名作になりえたといっても過言ではありませんでしたが、FDに関しても恵あっての作品でしたかと。

終幕、智、恵、麻耶の3人しかいない世界での演出は良かったですね! 本当は既に死の運命内にいる恵、本当はもう人として破綻している麻耶との、刹那的な世界の中での奇跡的な心の通わせ合いは何とも切ないものがありました。

本作、結局言いたいことはとてもシンプルで、自分はひとりでは生きていけない……違うな。自分はひとりでは生きていたくない、という答えを最後まで追いかけ続けるシナリオでした。希望を追いかけると絶望もついてくるが、自分はひとりではない。呪いこそあるが皆もいる。悪があるからこそこの世は美しく成り立つ。そして、そんな世界を敢えて選ぶ。

つまり麻耶は、智と麻耶ふたりだけの平和な世界を智に提示するのですが、智は例え呪われていたとしても仲間たちと生きる道を改めて選ぶのですね。

まあ、シナリオ的にはやはり本編の方がはるかに優れています。結局のところは非常にシンプルでまっすぐなテーマなところを、それを回りくどく時間をかける構成にしてテーマに向かっていった感は否めません。ただ、その過程で見せてもらった、智をはじめとした同盟メンバー、恵、麻耶、央輝の魅力を引き出すという意味では、実にFD的であり、これで良かったように思えます。


【グラフィック】
グラフィックは特に変わらずで、特徴こそありますが問題なく世界観を演出しています。ただ、智のコスプレや智をメインにおいたHシーン絵など、智の魅力を引き出すための絵が多かったようなきがします。やっぱり智が一番人気あるんでしょうねえ笑。

【キャラクター】
FDって、作品をまたぎますので、俄然キャラへの愛着が湧くんですよね。特に智といったら、その可愛さに拍車をかけていて、本当に男であることがもったいない笑。なんなんですかね、この可愛さは……男の娘という意外性とかそういうのをはるかに超えた高いところにいますよね、彼女は。いや、彼は。いや、彼女は。

そして同盟メンバーが全体的に地味なのは変わらずで、特に本作彼女たちに焦点のあたる展開はありませんので、余計に影が薄いです。本編でも魅力を放っていたサブキャラの尹央輝、才野原恵がこのFDにおいても突き抜けた魅力を放っていました。

また、初登場のキャラも何人かいますが、良かったのは央輝まわりのキャラですね。大陸同郷、別勢力リーダーの姚任甫さんは「男の娘」大好きなカリスマにて智の隣人という完全なる設定勝ち。央輝の養父の不器用な優しさも良かったですし、そう考えると央輝ルートはキャラで魅せた感じがありますね。

あ、それからですね。本編では無声だった智に対して佐本二厘さんが声を当てているのですが、これが滅茶苦茶いいのです! 彼女の出演作は何本かプレイしていますが、僕の中では本作智の演技が群を抜いていますね。

【音楽】
歌付OPとEDは新規の曲ですね。挿入歌も1曲あります。ただ、本編OP曲「絆」のメロディラインが相当に高レベルだったこともあり、どうしても比べてしまいますね。でも全体的には出来はいいです。新曲、旧曲おりまぜながらいいバランスを保っていると思います。


以上、るい智FDでした。
いや、なんといいますか。
つまりですね、えーと……。

智かわいいよ智


関連レビュー: るいは智を呼ぶ


テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【グリーングリーン2 ~恋のスペシャルサマー~】
グリーングリーン2 ~恋のスペシャルサマー~



メーカーGROOVER
シナリオ■■■■■■ 6
グラフィック■■■■■■■■□ 8.5
キャラクター■■■■■■ 6
音楽■■■■■■■ 7
つなぎ■■■■□ 4.5
総合【C+】 68点

閑話休題

GROOVERの人気シリーズ「グリーングリーン」の第二作です。前作が面白く、また全体的に悲しい物語の閉じ方をしていることもあり、同舞台設定で続きの話が見られるのは嬉しい限りですね。さて、ガーッと書いていきましょう。ガーッと。

【シナリオ】
舞台は前作同様、山奥の全寮制高等学校「鐘ノ音学園」。本作は、前作の祐介たちが3年生になった春から、つまり共学化が実現した時点からの話になりますね。ただし、前作の祐介、双葉をはじめとし三馬鹿たちはあくまで脇役。主役グループは、記憶をなくして全裸で気を失っていた主人公と、その同室の新入生たちになり、ヒロインは彼らのクラスメイトの女の子たちになりますね。

マップ上でヒロインアイコンを選択して、各々との日常的な小イベントを重ねていき、後半で各ヒロインルートに入る、前作同様のシステムです。日常シーンから夏休み間際の廃校問題、立てこもり、解決まで、基本的には全ルートが共通した流れに乗っています。

また途中、前作メインヒロインだった未来からのタイムトラベラー千歳みどりが教師として赴任してきます。その理由としては、同様に未来人である教え子の主人公を連れ戻しに来たというものですが、みどりも何故か本作ヒロインの一角であるため、本作の主人公でみどりを攻略出来てしまうというのが賛否両論みたいですね。「みどりは祐介のもの」といった意識をお持ちの方には苦しい展開になるかもしれません。

基本的には主人公が未来へと帰ってしまう、もしくは現代にとどまり死んでしまいますので、主人公とヒロインが結ばれハッピーになるENDはひとつもないのですね。全体的にはギャグ路線ながらも後半とENDはシリアス、というのは前作と同様の流れですね。こういう甘味と苦味を併せ持った作風は個人的には嫌いではありませんが、全ヒロイン共通して、切なさの作り方が「主人公の帰還」という同じ仕掛けなので、物足りなさは正直ありますね。


ただ、主人公帰還後の各ヒロインのその後、に関しては全ヒロイン共通して清々しく儚く描けていましたので後味は悪くありません。特にメインヒロイン格のカメラっ子真菜は、戦場カメラマンとして戦地で死んでしまう未来を変えることが出来ないながらも、その運命を信念をもって受け入れる素晴らしい閉じ方だったと思います。

廃校問題の原因作りに絡むお嬢様麻理亞ルート、DVに悩み転校してきたひまわりルートとありますが、ハーフである自身のアイデンティティを中心に描くルーシールートが、あけすけに主人公と青春を謳歌し、廃校問題解決の全貌に焦点が当てられる、最もバランスの良いシナリオでしたかね。ひまわりルートはテーマもそうですが、恐らくエピローグ時点で主人公が死んでおりますため残るものは結構ヘビーです。ここのひまわりの表情はグッときますが……。


まあ正直、前作と比べて圧倒的にシナリオの弱さを感じてしまいますね~。盛り上がりにも欠けますし、んーなんといいますか、全ヒロインのシナリオが序盤から最後まで共通した流れに乗っているというのがもったいないですね。また、主人公にアクがないうえにシナリオが希薄なものですから、けっこうグッとくるような台詞を言ってはいるのですが浮いて聞こえてしまうのは確かです。


さて、シナリオやキャラの弱さ等あるにはあるのですが、本作が微妙な位置付けとなる最大の理由は、「グリーングリーン3への布石だから」、この一言で片付けられます。

例えばみどりの存在。前作においてSF設定且つメイン格だった彼女の存在と、本作が前作双葉ルートの延長上にあるという設定は真っ向からぶつかってしまうものです。SF設定の3度使い回しが仇となることを踏まえ当然3では双葉がメインヒロインとなってきますので、当のみどりを救済し祐介以外の人間と幸せになる結末を用意したのがこのグリーングリーン2です。悪く言えばその「切り捨て」とも言える方法は賛否両論なれど、まあ流れとしてはひとつの正解ではあったのかなと個人的には思います。

また、どう見ても祐介や三馬鹿の熱さが際立っていますので、これも次作に向けた助走期間といえますし、本作メインであったヘルスやホセといった新入生たちは脇役として実際に次作で話の脇を固めます。祐介と双葉が別離中というのも、次作への大きな伏線ですし、また、天神姉妹といった次作ヒロインの存在も実は本作内で伏線提示されていますよね。

といったように、シナリオの甘さに加えて、前作と次作のつなぎとして、作品の性格的に高評価にはなりにくい不遇の作品ですね。


余談ですが、現みどりと天神が昔を思い出し「ドンツクラップ」「天神EでSHOW」の掛け合いをするシーンは、ギャグシーンながらもグッときてしまいました。みどりからすると十数年ぶりの掛け合いですからねぇ。



【グラフィック】
一方で、原画レベルは前作と比べてグワーッと進歩しています。グワーッと。片倉さんはこの手の作品では珍しいタイプの独特のアニメタッチですから、はまれば唯一無二のキャラ絵になるのですが、その流れはこの作品で決定づけられたといっていいでしょう。キャラデザインもとても良いと思います。特に真菜やひまわりといったヒロインのデザインはかなり好みでした。構図も、少し引いた視点からの絵が多く、これまたアニメの1シーンをピッと切り取ったかのような動きのある絵が多いですね。


【キャラクター】
まず、前作のバッチグー、天神、一番星の三馬鹿がガッツリ出てきます。加えて前作主人公祐介に立ち絵、ボイスが用意されているのは嬉しいところですね。外からの視点で祐介+三馬鹿を見ることで彼らの仲の良さや思い合っている雰囲気がよく伝わってきます。これはとても良かった。

残念なのは、彼らが、前作において非常に良く立っていたことと変人ぶりがはるか上をいってたことから、今作のキャラが霞む霞む。バッチグーたち上級生はたまにしか出てこないながらも、完全に今作のキャラたちを食ってしまっています。本作の友人たちの中では、ホセが一番良かったですかね。ラテン系の巨漢ですが、見た目以上の高校生らしからぬ懐のでかさが好印象です。ギャグ面も彼が抜けていたように思えます。

この男性陣の男子校ノリは前作を超えていますね。

そして男性キャラの方が多く、実際濃ゆい彼らに対して常識人たるヒロインたちが霞んでいるのも事実です笑。一番かわいかったのは丘野ひまわりタンで、僕はロリではありませんが彼女を守ってあげたくなりましたありがとうございます。声優さんの演技が良かったのもありますかね。まー彼女は設定がDVにまつわるもので、TRUEは主人公死亡、BADは父親刺殺と救いがありませんが……。


【音楽】
相変わらず曲に力をいれていますね。ただ個人的にはこの手のギターパワーポップがそんなに好きでないため、賞賛!とかは特にないです。OPの他、ED曲が各ヒロイン分用意されているのは凄いですが、前作の「星空」のように残る曲は特になかったです。BGMも前作の方が全体的には良かったかな。ただ、ギャグシーンや勢いづかせるシーンで流れるBGMのギターリフは本作の方がかっこよかったですね。


以上、グリーングリーン2です。
まあ良くも悪くもつなぎです。物語が続き切っているエロゲ3作品なんてそうそうありませんので、グリグリシリーズの一部として捉えて楽しんでプレイしましょう。

関連レビュー: グリーングリーン
関連レビュー: グリーングリーン3 ~ハローグッバイ~



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【リアル妹がいる大泉くんのばあい】
リアル妹がいる大泉くんのばあい



メーカーALcotハニカム
シナリオ■■■■■■□ 6.5
グラフィック■■■■■■■ 7
キャラクター■■■■■■■ 7
音楽■■■■■■■□ 7.5
友人の存在感■■■■■■■■■ 9
総合【C+】 69点

堂々と実妹攻略

2010年発売の中ではダークホースといいますか、意外なまでの名作ということで共通意見を持たれている本作です。基本的に長編大作ばかりをプレイする僕ですが、たまにはこういう軽いノリで進むミドルプライスのゲームもいいですね。


【シナリオ】
主人公の大泉涼は、親友の妹尾彰とともに妹モノのエロゲーが大好きな高校生。そんな二人にはそれぞれに実の妹がおり、共に軽蔑の目で見下されています。ある晩、涼お気に入りの妹キャラ「麻衣」が登場しているゲームをプレイしていると、これまで存在が確認されていなかった独自のルート展開を見せます。麻衣が画面の外にいる涼に話しかけてくるかのような展開はそのゲームに無いはずのルート、さらに翌朝、寝ていた涼を現実世界で起こしにきたのは、当の「麻衣」ちゃんであり……。


といったあらすじ。以降、涼、涼の妹である栞、麻衣との3人生活が始まります。学校では彰と妹の美紀、それから何故か涼と彰を敵視するバスケ部の古賀君、このあたりが登場人物のすべてですかね。

プレイしていて思ったのは、なんといいますか……エロゲーマー心をくすぐるテキストですね笑。「そうそう」って納得してしまう場面や行動が随所に散りばめられていて思わず笑ってしまいます。ただ、妹がゲームから出てくるというトンデモ設定があり、しょっぱなから友人彰のギャグが冴え渡っていますので、そのままギャグ路線で突っ走るかと思いきや、家庭事情や、兄妹の関係に何かありそうな伏線が少しずつ提示されていくところに光るものがあります。


攻略ヒロインは美紀麻衣、そして。美紀ルートは親友の妹とくっつく王道展開。麻衣ルートは栞ルートへの伏線、そして実妹の栞ルートが本作TRUE展開といえましょう。最も話が良いのはやはり栞ルートであり、両親の離婚問題と絡めて、麻衣出自のからくりや、近親相姦というタブーを、彰や古賀をはじめとした周囲の人間の協力をスパイスとして使うことで非常に熱く描いています。

うまいのは、この最終の栞ルート、視点が栞と麻衣にうつるところですかね。前のルートで既出の同じ場面でも、栞や麻衣の内面吐露が新たに加わっているところ。ああこの場面では実はこんなことを考えていたのか、というのがここへきて初めてわかります。


残念だったのは、麻衣ルートがあまりにも微妙な立ち位置だったかな。実妹である栞との話が重く、また圧倒的に力が割かれていますので、ゲームのキャラが出てくるという大仕掛けであるはずの麻衣が少し宙に浮いたような存在になってしまっています。実際、彼女が父親の再婚予定相手の娘である「舞」、という伏線はすべて栞ルート内で明かされますので……まあただ、彼女のそのカラクリの絡ませ方は、非常に切なくてラストで生きてきましたので良かったですけどね。

まぁ、他にも話に食い込む伏線を持っていそうなキャラ古賀君がただのガチホモだったり(笑いましたが)、短さゆえの肩すかしな場面もたくさんあったにはあったんですが、ライトなシナリオゲーということを割り切って、大きくまとめようとしないことで失敗を避けたところは逆に良かったのかな。

ただ正直いうと、主人公が妹凌辱ゲーが大好きという設定と、後半のシリアス展開や兄妹の美しい絆を前面に出したシナリオとのギャップがあまりにも乖離してしまっていたのも事実。いやこれは前提を覆すことなのでどうしろとは言いませんが笑、もう少し尺や設定をどうにかすることで違和感を薄めることはできたんじゃないかなと思ったりもします。


光っていたのは最後の演出でしょう。「こう言おう、俺の妹に生まれてきてくれて」と、最後まで言い切らないテキストと、それに続くED曲の歌いだしの歌詞が「ありがとう」とはなかなか鮮やかじゃないですか。そしてエンドロールの後、主人公、栞の二人と舞がすれ違うエピローグから、3人を収めたその構図の一枚絵でメニュー画面に切り替わる演出。いやね、エピローグがいいというのは事前情報で伺っていたんですが、いやはや、本当に良い演出でした。ここでの穏やかなBGMもいいすね。

本作品をユーザーに「良かった!」と言わしめるのはまさにこのたった数行、時間にして数十秒のこの場面があってこそです。


【グラフィック】
原画は全体的にかわいく綺麗に描けています。枚数的には、シナリオ量的にも過不足なくといった様子でしょうか。美紀は凄くかわいいんですが、他キャラは立ち絵が若干微妙ですかね。一枚絵の方が全体的に良いです。


【キャラクター】
実妹の栞、ゲーム妹にして父親の再婚相手の娘である麻衣、親友の妹である美紀、と3ヒロインいますが、どことなくけいおんのあずにゃんとかぶる栞がやはりシナリオの重さも相まって一番魅力的だと思います。実はデレ妹という王道設定もまた良し。個人的には美紀も好きですけどね。

しっかし彰の爆裂妹至上主義には頭が下がります笑。やれ妹の尿を飲めだのやれ妹の寝取られゲーを叩き割るだの、彼の妹に対する愛情はもはや神の領域。それでいて実の妹には頭が上がらないところがいいキャラ設定ですね。ここまでギャグ要因として立っているのも爽快感すら覚えますわ。エロゲユーザー代表みたいなキャラ設定ですんで、セリフがいちいち面白く、出てくるたびに笑いを投下していきますからね。彰と美紀のやりとりとか鉄板でしょう。それでいて本当は美紀思いで心底大切にしているところも熱いんですけど。また、リアル妹がいることで主人公たちを妬んでいただけだったり、ガチホモになってしまったりとギャグ要因でしかなかった古賀君にも熱い見せ場がありますし、美紀も栞思いでナイスアシストしますし、基本的には全キャラ良い人たちです。


【音楽】
なにげに全体的に音楽いいんですよね。中でも、上記したエピローグで流れる「はじまりの唄」が抜群。ん、「はじまりの唄」というタイトルなんですね……舞の新たな人生、そして主人公、栞の二人の生活のはじまりの唄か…、あざといな。だがそれがいい。

それから、ちょっとアレンジはイマイチですがメロディが良い「ひたむきに、涼やかに」も印象に残りますね。熱いシーンで流れる曲なので。OP「Your little sister」、ED「Dear my precious」ともに片霧烈火さん。作風に合ったアップな曲調で良いです。


以上、リアル妹がいる大泉くんのばあい、でした。
しかし最近は実妹と関係を持つゲームが普通に見られるようになってきましたね。良くも悪くも……ですか?



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【車輪の国、悠久の少年少女】
車輪の国、悠久の少年少女



メーカーあかべぇそふとつぅ
シナリオ■■■■■■■ 7
グラフィック■■■■■■■ 7
キャラクター■■■■■■■ 7
音楽■■■■■■□ 6.5
南雲さん■■■■■■■ 7
総合【C+】 69点

あまりにもオマージュ

ファン待望の「車輪の国、向日葵の少女」のファンディスクです。各ヒロインとのアフターストーリーや法月先生の過去回録、本編冒頭で撃ち殺されてしまった南雲えりさんの裏事情などのシナリオ群があります。

【シナリオ】
シナリオはメインの法月編が一本、プラスあとは全部おまけです。各ヒロインENDのアフターが各々ヒロインに用意されているのですが、これが恐ろしいほど退屈なシナリオ群です。健一とヒロインの蜜月、日常がひたすら延々と描かれるだけのこのシナリオ群、正直読み切れずスキップを使ってしまうこともありました。るーすぼーいさんは、山あり谷ありの派手なシーンを書かせたら万丈の山の如くですが、こういった日常シーンを重ねていくことは不得意だということがわかってしまいました。

料理や絵画、人探しといった本編と連動する具体的なテーマがあった灯花やさち編はまだマシなんですが、夏咲や璃々子編のように具体的な目的もなくただラブな日々に焦点を当てたシナリオは正直苦しかったです。璃々子なんかは、田舎町でのその後よりも、本編璃々子ルートのエピローグのように、姉弟で中央に進出して権力を握り行く過程を少しだけ切り取って描くとかの方が盛り上がったような気もしますが、まぁそこらへんまで口を出すのは野暮といったものでしょうか。

まぁ本作は法月編がすべてと言い切って良いかと。本編で特別高等人最終試験監督だった法月将臣の、自身における最終試験の話ですね。話は完全に本編のオマージュというべく構成になっていて、舞台も同じ町ですし、被更正者に付き添う形で学生として過ごすというくだりも、圧倒的暴力を以って追い詰めてくる試験監督者という設定も、地下牢に長期間閉じ込められる展開も、主人公と上司の二転三転する心理戦も、すべて本編で使ってきたものですね。

異なる点にて非常に良かった点、それはもう一人の候補生、本編において登場こそしなかったものの(既に死んでいたので)超キーパーソンであった樋口三郎が話に大きく絡んでいることですかね。そして、この樋口三郎が非常にいい味を出していました。本編での語られ方からも、きっと面白おかしいキャラなのだろうということは予測できましたが、適当なことばかり言っている割には、さすがに最終試験まで残っただけのことはあり、しめるところはしめますし実力も十分に備えています。

それから、ずっと弱者であると思わせておいたヒロイン雑賀みぃなが、法月アリィを叱責する一番の山場は鳥肌でした。こういう返しの展開とその見せ方はやっぱりうまいんだけどなー。

ラスト、愛する者を守るために負けることを選んだ法月が、そのことでずっと葛藤し続けていたという伏線が、綺麗にエピローグへとつながっています。まぁこの話が前提としてあったとするならば、やはり本編において法月はどうあっても健一を追い込みきれないだろうなぁと思います。自身の傷となっている経験を経て、そしてさらに不器用ながらも圧倒的な暴力と権力から夏咲を守りきった健一との対峙を経ることで、エピローグで強制収容所にいるみぃなを救出するために、反旗を翻す法月には熱くさせられます。

そして法月編とヒロイン各編を読むと、南雲えりシナリオが出てきますね。大好きになる(予定だった)南雲さんシナリオがあるとはさすがFDってなもんです。彼女が最終試験に遅刻してしまった理由が描かれるのですが、15分くらいで終わる短いシナリオながらも爽やかで一抹の切なさを残すものです。その後、あまりにも不憫な運命を受け入れなければならなかった彼女ですが、これを読むことで少しは救われたでしょうか……。しかし他の優秀といわれる候補生がガンガン死んでいくほど過酷な山越え試験だというのに、パンプスで踏破しているのは異常じゃあるまいか。



【グラフィック】
原画はもちろん有葉さんです。「G線上の魔王」ではだいぶ丸みを帯びた幼めな画風になってしまっているのですが、車輪向日葵からG線に向かう途中、って感じですね。どのキャラも車輪本編と微妙に印象が違います。新キャラの中で良いのは、暴君法月アリィですね。彼女のエロシーンがなかったことにショックを隠しきれない方が多数いそうですが、一方で夢オチとはいえ大音京子先生や南雲さんのシーンがあったのはFDならではですよね。


【キャラクター】
若かりし日の法月将臣ですが、実直でクールながらも堅すぎず秘めたものは熱く、です。

とはいえ、この青年が本編であそこまでの悪人になる理由はあったのかなあと思います。というのも、凄くいい奴なんですよ若かりし日のとっつぁんは。なので、ラストで三郎の期待を裏切り、法月の門に下り心を凍らせたとはいえ、それは彼の従来の優しさや愛する人たちを守るための結果だったことに変わりはないわけです。それなのに、本編では遅刻した南雲さんをさっくり撃ち殺したり公開処刑を行ったりと、そこまで法月アリィと同様の凶事をとる人物になってしまう必要はあったんかなあ、とか思うわけですね。まぁそれくらい彼は徹底した馬鹿正直な人間だった、ということでしょうか。

その上記した法月アリィ役は篠崎双葉さん。本編法月以上に大悪役たる彼女ですが、とっつぁんを演じていた若本さんに負けず劣らずクセのある名演技をかましてくれます。さらに樋口三郎あっての本作であることも付記しておきます。法月の唯一の友人となる彼の存在と救いがあったからこそ、とっつぁんは深いところまで落ちずに済んだのは間違いありません。


【音楽】
音楽は普通、です。前作で盛り上げどころに使われた「gallantry」「Watch out and run」は、同様の展開で使われます。演出としての貢献度はさすがですが、前作のものですからね。厳しめに見ておきましょう。OPは新たに作られた「少年よ大志を抱け」、イントロからAメロまでは良曲じゃねえか!って感じですが、サビが歌詞、メロディともに微妙でした。

てなわけで車輪FDでした。
法月に萌えるゲームです。これをプレイすると、より車輪本編の深みが増してくることでしょう。


関連レビュー: 車輪の国、向日葵の少女



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【ユメミルクスリ】
ユメミルクスリ



メーカーruf
シナリオ■■■■■■■ 7
グラフィック■■■■■■■ 7
キャラクター■■■■■■□ 6.5
音楽■■■■■■■ 7
青く淡い世界■■■■■■■■■ 9
総合【C+】 69点

テーマは鬱だが後味爽快

企画が「家族計画」「CROSS CHANNEL」などの田中ロミオさんということで、絶対はずすことの出来ない本作であると共に、テーマが薬物、いじめ、とかなりダークな設定を中心に据えています。

【シナリオ】
田中ロミオさんがどこまでシナリオに食い込んでいるかはわかりませんが、とにかく彼独特の「毒」はありました。彼の構築する物語には、「日常性の喪失」というテーマがほぼ必ず設定に組み込まれていますが、本作もまた例外ではなく、非常にダウナーな作品でした。

タイトル的には薬物を真っ向から描くねこ子ルートがメインなのかもしれませんが、力の入りようは圧倒的にあえかルートでした。ええもう、レベルが違いすぎるくらいに。シナリオは「ユメミルクスリ製作委員会」となっているので、誰が書いているのかはわかりませんが、複数ライターでヒロイン分担しているような気がします。

さてまずはそのあえかルートですが、いじめをふたりで乗り越えていく後半の読み込ませはさすがの田中ロミオさんです。その乗り越え方も、周囲の助けを得たり、いじめる側の反省の上に成り立つものではなく、あくまで自分たちの力によって強引に解決しきる方向で描いたのが好印象。

特に最後の京香制裁シーンはすさまじかった。あの場面でのあえかの「殺しちゃダメ」「私が殺すんだから」の台詞は田中ロミオさん的なひっくり返し方ですね。しかし、いじめの陰湿さ、恐ろしさを、主人公である公平の内情吐露を交えてうまく描いています。京香とジンガイの直接的な暴力ももちろん恐ろしいですが、クラスメイトや担任の事なかれ主義からくるイジメも同様に恐ろしいものですね。それまで仲良くしていた、立ち絵すらあるクラスメイトが急によそよそしくなってしまうのも非常に切ないものがありました…。

というかあえかルート、彼女のキャラクターもさることながら、この重くて切ないシナリオ内容から、最後にプレイして良かったと思っている次第であります。先にプレイしてしまったら、他のヒロインルートに彼女の幻影を引きずるところでした

本ルート、唯一タイトルを裏切り薬物が描かれないルートですが、その動的に展開するシナリオ内容は3ルートの中で群を抜いています。イジメ、イクナイよ。

桐宮先輩ルートは、薬物もアイテムとして出てきますが、テーマは「未来への恐怖」、これです。ちょっと話の展開が飛びすぎていたかな。それであるがゆえに、非現実感がよく出ていたのは確かなのですが…。ただ、最後のお腹に手を当ててのシーンがえらい良かった。加々見君カッコ良かったっす。まぁそのあと綾にぶち壊されるわけですが笑

ケットシーねこ子ルートは、薬物服用がキーポイントとなっている割には、薬をめぐる環境そのものには全く触れられませんので、少し冗長になっていたのは確か。盛り上がるのは、完全に後半も後半、エピローグ前あたりからで、その正体がひとつの山場でした。まぁ立ち絵のキャラを見ていけば、ひとりだけ明らかに、何でこのキャラに立ち絵が、ってのがいるのでわかるかもしれませんが…僕はなぜか気づきませんでした。

登場から終盤まで常にぶっ飛んでいる彼女ですから(薬で)、どうやって話を収束させていくかが見ものでしたが、予想外なところから結末を迎えます。エピローグの観覧車での会話はかなりぐっとくるものがありました。


本作、クスリやいじめが題材となってはいるのですが、そもそもその根源の解決は描かれません。薬物売買自体は何の解決も得ていませんし、いじめ問題も、(京香の制裁を除けば)クラスメイトや担任教師の意識改革がなされたわけではありません。題材自体はあまりにも重く解決の兆しが見えませんが、その題材をきっかけにし、無難に生きようとする主人公と心に闇を抱える各ヒロインの自身を打開していく成長物語、こちらに大幅なウェイトを置いたシナリオはまとまりが良く、だからこそ設定の割には読後感も良かったのだと思います。これはちょっときつい言い方をすれば、短めの全体量の中で完成度をあげるためのうまい逃げ方だったと思います。

テキストの総量は短めで、数時間もあればすべて終えられるかと思います。時間をかけてじっくり全ての諸問題を解決し大団円を迎えるというわけでもないので、物足りないといえばそうかもしれません。が、3ヒロイン共通して、ラストがとてもいいんです。終わりよければ全てよしなんて言葉がありますが、まさにそんな感じで、どのルートのラストも、実に丁寧に、上手に描かれていました。


【グラフィック】
原画は、「とある魔術の禁書目録」でいまや売れっ子イラストレーターの灰村キヨタカさん…といってもライトノベルとか詳しくない僕はよく知りませんでしたゴメンなさい。でも「とある魔術~」は2009年5月現在17,8巻まで出ていて、累計450万部とか。これは凄いですね。灰村さんファンにとっては、彼の原画でエロゲが楽しめるという点では垂涎モノの作品なのではないでしょうか。

独特の線の細さは好みが分かれそうですね~。正直バランスはそんな良くないんですが、ただ、あえかの表情の描き方だけはメチャクチャうまく、あえかのCGばかりが圧倒的に印象に残っています。あとは、京香を絞め殺そうとする場面のCGもインパクトあります。

また、全体的にキタノブルーばりに、淡い青を基調とした背景が特徴的です。なんとなく常に虚脱している主人公の心の色を表しているかのようです。かといやピンクで統一されたCGがあったりもして、サイケデリックな転換を見せることもあります。ま、このあたりの背景効果は非常に世界観に貢献していて良かったです。



【キャラクター】
正直なとこ、ヒロインクラスは弱かった気がします。3人ともが変人ということもありバランスがとれていないのもあるのでしょうか笑。桐宮先輩とねこ子は、あまりキャラ的に生きていた印象ではありません。一色ヒカルさんはやっぱりうまいんだなぁ…というのを実感しましたけど。この二人は設定と内容がかなりサイケな分、この短いシナリオの中で魅力を引き出しきれなかった、という感じです。唯一、あえかの魅力は相当なものですが、それもシナリオ展開と声優さんとのマッチングに引きずられているゆえな気がします。や、でもあえかいいですけどね。ホント。

言ってしまえば、キャラクター自体は3ヒロインよりも義妹の綾が一番立っていました。僕はロリコンではありませんが、彼女はキャラクターも声優さんの演技も抜群でしたので、ぜひ攻略対象にしてほしかったです。義理の妹という設定からいけるもんだと思っていたのですが…というのはプレイしたユーザーは皆思ってそうですよね。ハイ、僕も思いました。ロリコンじゃないですよ。

それからバイト先の先輩、椿エロゲイ。イケメンでゲイにしてエロゲーマー、もう設定が出オチですが、とても出来る男。「家族計画」の劉さんを日本人若者にしたような飄々さがたまりません。また彼のエロゲー論にはまっていく公平がまた面白いです。思わずエロゲーマーをうなずかせる場面が何度もあり、そのへんはロミオ調だなぁと感じたり。あえかルートでいじめに巻き込まれた公平が、今の自分の境遇に重なるタイプのエロゲーがほとんど無いと思案するシーンなどはシリアスな中にくすりとした笑いがありました。

この2名のサブキャラは、ダウナーな作中において良い清涼剤となっていました。


【音楽】
音楽は、特に日常パートで流れる音楽が全般的にジャジーでセンスがいいです。跳ねるピアノの踊るような曲から、しっとり聞かせる曲まで、数こそそう多くはありませんが、作品の雰囲気に強く貢献しているものが多いです。

そしてOPの「せかいにさよなら」、いいです。四つ打ちダンス調のリズムとバラけたようなピアノのアンバランスさが絶妙です。そして頭に残るサビですね。


てなわけで、ユメミルクスリでした。
テーマは「薬物」「いじめ」など暴力的なものではありますが、反して、全体を通す寂しげでブルーな空気感を大切に大切にしながら丁寧に作り上げた作品でした。雰囲気を買いたいと思います。



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム