2ntブログ
エロゲ レビュー ブログ
【下級生】
下級生

ka_g_dl.jpg

メーカーelf
シナリオ■■■■■■■■■■ 10
グラフィック■■■■■■■■■■ 10
キャラクター■■■■■■■■■■ 10
音楽■■■■■■■■■□ 9.5
ときめき■■■■■■■■■■ 10
総合【神】 99点

伝説青春ゲー

1996年発売、もう15年近くも前の作品になるのですね。elf全盛期を代表する作品です。「同級生」シリーズで作り上げた、MAP移動と時間軸と恋愛イベントが連動した画期的なシステム、これにプレゼントなどでの好感度変化要素や季節イベント要素を加えて恋愛SLGのひとつの完成形をもたらしたのが本作だと言われています。

僕は初めてプレイしたエロゲが本作だったのですが、「18禁ゲームというのはなんて凄いんだ」と心の底から思いました。特に当時は今以上にエロゲなんて日陰の業界だろうに、大流行していた「ときめきメモリアル」よりも正直面白いじゃないか、と。それもそのはず、なにげなく手に取った本作は、当時最も画期的で、アダルトゲームだというのにも関わらず商業的成功を収めた、エロゲ界にとってひとつの指針となった名作だったのですね。納得です。

【シナリオ】
私立卯月学園に通う主人公は、親元を離れ、ひとり学園寮にて生活しています。いつも通り叔父が経営する喫茶「土下座」でのバイトを終え、明日から始まる高校生活最後の一年に思いを馳せる主人公。来年の今頃、自分は何をしているのだろうか、そして誰かと共に過ごしているのだろうか……。漠然とした不安と期待を抱きながら、物語が動き出します。


期間は1年間。夏休みや冬休みのみだった同級生シリーズとは違い、年間を通すことになるので、非常に物語に厚みがあります。

良い点は、新学期のクラス替えを起点に始まる学園生活から春夏秋冬にまたがる季節的なイベント…と時間の流れを強く感じますので、本当に長い時間をかけてヒロインたちと仲を深めている感覚になりますし、高校三年生という青春時代の濃密な時間の変遷をよく感じ取ることができます。リアリティがありますよね。当然各々の季節に限定したイベントなどもありますし、服装などが季節で変わっていくのも楽しい要素ですね。

悪い点としては、ひとりの子狙いで春夏にうまいこと好感度を上げすぎてしまうと、後半に好感度頭打ちとなりイベントも発生しなくなり、ダレます。まぁ、そのあたりは個々の裁量ですけどね。良くも悪くもとにかく1年間は長いです。


舞台は卯月町。学校、寮、各ヒロインの家などはもちろん、駅前には繁華街があり様々な店がありますね。デートによっては他の町やアミューズメント施設に行くこともできます。主人公は学校内や町中を歩き回りヒロインたちと出会い、会話をしたりデートに誘ったりプレゼントを渡したりしながら好感度を上げて、ゆくゆくはHに持ち込んでいくわけですね。夜は電話したりなんかもできましたかね。イベント出現のフラグとしては、場所、時間帯、好感度などが一体となり、条件が合ったときに発生します。平日に偶発的に起こったりもします。各ヒロイン、けっこうな量のイベントがあった印象ですね~。

会話を何度も重ねるために、電話をしてみたり家に足を運んでみたりして、デートの約束を取り付ける。好感度が足りないと当然デートだって断られますし、デート場所だってヒロインごとの好みがあります。さらにデート終了時に夜だった場合は、別れ際に抱きしめたりキスしたり、はたまたホテルに誘ってみたりといった選択もあるのですが、当然これらも好感度次第で受け入れてくれたり、拒否され怒られたり……と手に汗握るわけです笑。 最初は「忙しいから」「お母さんが呼んでるから」とそっけない感じだったのが、段々「もう少しだけ」「もう行っちゃうの」と変化していき、立ち絵の頬が染まったときの高揚感ときたら……! 

ふぉぉおおああああ!!


また、プレゼント、デート、ホテル代…こういったものには当然お金がかかりますし、そのためにはバイトをこなさなければなりません。喫茶「土下座」でのバイトに加え、町中には単発のバイトが色々と転がっています。ブルセラショップで買ったグッズをブルセラマンという変態に売る実にエルフ的な方法なんかもあって笑えます。しかしバイトをすると、当然時間を何時間も持っていかれてしまいますので、適度さが必要です。


key、leaf以降、エロゲといえば、「ノベル形式」というのが基本であり、ライターの用意した定められたテキストの流れに乗る、というシステムが常套となっています。勿論こういった形式は物語を純粋に楽しませることが目的となっていて、これはこれで凄く好きです。しかし本作のように、定められた時間の中で、どこに行くのか、何をするのか、どこまで仲良くなるつもりなのか、これらの展開を自身に委ねられながらマップを移動してイベントを探していくコントロール感、ゲーム性、リアリティの高さ。とてもPC98時代のゲームとは思えません。フロッピーディスクですよ、信じられますか。

本作の8年後、2004年に「下級生2」が発売されますが、ゲームシステムは全くといっていいほど変更されていません。その変わり映えの無さはユーザーにさんざん叩かれる結果となってしまいましたが、逆に言うと、10年後でも普通にプレイできる環境がこの時すでに備わっていた、ということでもあり、これは驚異的なことです。


いや、しかし本当にはまりましたよ。各ヒロインとのシナリオはシンプルながらもよく練られていますし、展開される会話もテンポが良いことに加え、読み手の琴線に触れるようなものばかりです。エンディングでは、その先にあるヒロインとの未来を微笑ましく想像し、また以前のプレイでエンディングを迎えたものの今回は結ばれなかったヒロインたちのことを考えると一抹の切なさを感じたりもしていました。……と、こう文章にすると正直気持ち悪いですが、当時は多感な時期にして、初めてプレイした美少女ゲームでしたから致し方なかったところであると思います。

キャラ毎のシナリオ展開は下記にて。いやはや、こうして思い出して文章にまとめると再確認する。やっぱいいゲームだよなぁ。


【グラ】
原画担当は門井亜矢さん。原画の魅力で購入に踏み切ったといっても過言ではないくらい、惹かれる絵を描く方ですね。アニメっぽいタッチでとっつきやすい絵柄だと思います。原画総数は400枚以上でしたか。グラフィックに関して言えば、いまだに、質、量ともに他社を圧倒するレベルを保つエルフですが、この作品でもそうですね。本当にご苦労様でしたと言わざるを得ません。

恋愛SLGとして優秀なシステム部分は上記しましたので割愛しますね。


【キャラクター】
視点は基本的にすべて主人公からのものであり、ノベル形式でなく自分で主人公を操作しますので、ユーザー=主人公、というスタンスを取っています。主人公は、問題児だけど、行動力があってかっこいい。蛭田さんが描く主人公ですね。

ヒロインは全部で13名。タイトルこそ「下級生」ではるものの、実際は年下ヒロインよりも同級生~年上ヒロインの方がはるかに多く、何のためのタイトルなのかよくわかりませんが、様々な属性を持った良ヒロインが揃っています。最近の美少女ゲームの風潮のように「実際こんな奴いるか」ってタイプのぶっ飛んだ子は皆無で、程よくリアリティのあるキャラクターばかりですね。

というわけで、がっつり書いていきましょうか。

まずはクラスメイトの結城瑞穂。今でこそ萌えだのツンデレだのゆるキャラだの様々なヒロイン像がありますが、彼女は、ロングヘアが似合いかわいくて明るくて気立てがよくて裏がなく優等生で運動が出来……といった超王道的要素を満たしきっている純然たるメインヒロイン像です。パッケージ原画にひとり載っているのも彼女ですからその存在感がわかるというものです。よく出来た子ですから、当然問題児の主人公にも最初から優しく接してくれますし、攻略自体もしっかり彼女につくしていれば問題ないでしょう。学園のマドンナであり優しくかわいい彼女と仲良くなっていく過程はやはり気持ちのよいものがあり、他のヒロイン狙いだというのについつい瑞穂に流れてしまう、なんてこともよくありました。王道こそ最高、というのを地でゆく感じですね。魅力溢れるヒロインがたくさんいる本作ですが、なんだかんだ瑞穂が一番好きでした、僕は。

続いて指切神社の一人娘、神山みこ。ちょっとロリっぽくてぽやぽやしているのでユーザー人気はかなり高いようですね。巫女属性とかもあるかも。Win移植版は、瑞穂と彼女がパッケージを飾っています。おっとりとマイペースな子で、異常に厳しい家庭の決まりごとや、周囲に対して隙がありすぎることにもまるで疑問を感じず受け入れる昼行灯キャラです。だからこそ、主人公に惚れ出してから、自分の意志で主人公を愛しだす彼女は、とてつもない破壊力を持ちます。

財閥令嬢の新藤麗子。絵に描いたようなタカビーお嬢様で、ツンデレ展開の典型ともいえるキャラです。最初、主人公のことは野蛮な小市民程度にしか思っていませんが、好感度を上げていくと、徐々にツンデレしてくれます。口では罵っていながらも、頑張って弁当を作ってきたり、ヘタクソなマフラーを編んできたり、といったイベントはかなり萌えます。お金を散財する新藤節のデートが段々、高校生等身大のデートになっていくのも良かったですね。本当は寂しがり屋の彼女を包み込んであげてくださいな。

美術部のクールビューティー加納涼子。自尊心が高く自分の価値観が大切であり、他人との関わりにも興味を持たない彼女。ある件をきっかけに彼女に対して主人公が激怒するイベントを経ると、本当の意味で彼女のシナリオがスタートします。我が道をいく芸術家肌のキャラが、主人公のことを一心に思うように変わっていく過程は物凄いニヤニヤです。下級生の中でもトップクラスの人気があるというのも頷けるかわいさ、綺麗な女がかわいい仕草を見せると男は例外なく落ちます、これjk。

橘真由美、いまや死語となってしまった「コギャル」な彼女、天真爛漫で、ブルセラや友人とのHも抵抗なく行えてしまうキャラとして描かれます。ゆえに、理想を追うエロゲユーザー様たちからは全くといっていいほど人気が無いのですが、彼女のシナリオは本作の中でもよく出来ている方だったと記憶しています。作中唯一、好感度が高くない状態でHの出来る彼女ですが、反面、好感度を上げることもなかなかできません。そのためには冬に発生するとあるイベントを見る必要があり、それまではつかず離れずの関係をずっと続けることになります。本当の意味で人を愛し出してから、自分のそれまでの行いを後悔する彼女の心の機微はかなり切ないものがありました。

以上、同級生ヒロインから。タイトルこそ「下級生」ですが、同級生ヒロインの方が魅力的な印象です。

タイトルでもある下級生は4人います。まずは南里愛飯島美雪。彼女たちは親友同士であるため話がセットになっていて、シナリオ完成度も高いです。主人公のことを好きになるおとなしいタイプの愛と、それを応援する勝気な陸上少女の美雪。美雪が愛を応援しながらも主人公のことを意識しだしてしまうことにより、すれ違う二人の友情……青春っす。実に「下級生」というタイトルらしい展開ですね。愛との友情と、主人公への愛情で葛藤する美雪シナリオも良いですが、逆に、おとなしくて世間知らずな愛が、主人公への激情ぶりを見せる愛シナリオもこれまた良いです。さっぱりしてそうな美雪と、情を重んじそうな愛ですが、主人公を間に挟んで、当初とは逆の性格をみせるのが面白いところでした。

続いて皆川奈々。作中最年少ヒロインとなります……うーん、当時は年上だったんだけどなぁ。彼女は、最初は別の男キャラのことが好きで、主人公のことなど目もくれません、という意味で異色の序盤展開を持つキャラですね。まぁ当然のようにふられてしまいますので、失意の彼女を慰め、仲良くなっていくというごちルートです。

で、駅前の花屋でバイトしている持田真歩子ですね。目立つ設定としては、同じ学園内ではなく他校の生徒、ってことですかね。見た目のデザインは作中1,2を争う彼女ですが、シナリオは比較的さっくりしていた類ですね。でもなんといいますか、花が好きでおしとやかで、卯月学園まで遊びに来てみたり、他の女の子に密かにヤキモチ焼いたりと、とても「女の子」しているイベントが多い子というか、まぁこんなこというとこのジェンダーなご時世叱られそうですが……、好きになった人がタイプ、というのも頷けるようにせっせと主人公に尽くしてくれる「女の子」でした。凄くいい子です。

それから年上のおねーさん方が3人。まずは、学園の保険医である三月静香センセ。過去の後悔から友情を重んじる彼女、クラスメイトの慎二が入院した際にどういった行動を取るかで、彼女との流れが決まります。先生との禁断の恋ですので、色々と制限がある中で行動していくことになりますが、そういう展開こそ、好きな人は好きそうですね笑。

続いて喫茶「土下座」の同僚、山下美夏さん。音大生の傍ら、学費と生活費捻出のために水商売に手を出してしまい、結果音楽の勉強もおろそかになってしまっているという本末転倒な生活を送っている彼女。見た目は清楚ながらダメダメな彼女を救済してあげるシナリオですね。

そしてショートカットの似合う、魚屋の緑谷麻紀さん。彼女とは店の魚を買ってお得意さんになっていくと仲良くなれます。この人すごく好きですよ。あけすけで元気な近所のねーちゃんって感じで、主人公にも気持ちよく接してくれます。イヤなことがあれば即座に口と手が飛んでくるような直情的な彼女ですが、恋人モードに入ると、途端に女の子なタイプになるのもツボを心得ているところです。

そして最後、一部で「蛇足」と名高い、南の島からの転校生ティナ。あまりにも設定が浮いていますので、アニメやOVA版などには彼女は登場しません。ですが僕は凄く好きですよ。まさに「献身」を描くティナシナリオ。彼女は、実は宇宙人であり、その星の王女様。主人公は実はティナのフィアンセであり、その記憶がなくてもティナへの愛を貫き通せるかどうかの資格を問われ、記憶を消されて地球に送られてきているとの超展開。主人公が他ヒロインにひとりも手を出さずに1年を終えると、ティナと共に彼らの国に帰ってハッピーエンドです。ティナは主人公のことが最初から大好きで、でも自分からは何もせず、いつも主人公を見守っています。他ヒロインと結ばれる展開上にいますと、ティナは文句ひとつ言わずに最終日にひとり消えていくんですよね。とても健気。ですから、このルートを見てしまうと、他のルートにいけなくなっちまいますよ……。

といった感じですね。長々と書いてしまいました。
お付き合いいただきましてありがとうございます笑。


【音楽】
音楽はPC98時代のソフトということもありますし、また音楽に力を入れないエルフだということもあって本当はこんなに点数は高くないです。ないですが、音楽云々以前に本作は僕にとっての神作品ですので得点調整をさせてもらいました。思い入れ点ですね。


以上、下級生です。PC98時代のゲームに対してグラフィック点やら音楽点なんてそんな高くないだろう、と思われるかもしれません。しかし、本作が本当によく出来ていた恋愛SLGであることに異論は認めず、僕にとって圧倒的な神作品なのです。譲れないのです。



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム