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エロゲ レビュー ブログ
【Phantom -PHANTOM OF INFERNO-】
Phantom -PHANTOM OF INFERNO-



メーカーNitro+
シナリオ■■■■■■■■■ 9
グラフィック■■■■■□ 5.5
キャラクター■■■■■■■■□ 8.5
音楽■■■■■■ 6
悲愴■■■■■■■■■ 9
総合【B+】 75点

大人のエンターテイメント

プレイしたのは実はかなり最近でして、全国のニトロ/虚淵ファンの皆様大変申し訳ございません m(_ _)m。ですので、正直絵や音楽などの古さが否めなく、いまのニトロプラスに慣れてしまっている僕にとって「ゲーム」としての総合力は少々欠けるところがあり、本サイトでの評価自体も、グラフィックと音楽の加算上、点数が引きずられているわけですが、反面、シナリオとキャラに注視した純粋な「物語」の部分はやっぱり名作と呼ばれているだけのことはあるなぁ、と。本当に面白かったです。

【シナリオ】
ハードボイルド系の先駆けであり、またこの手の作品が18禁業界でも成功できるという功績を残したお手本的作品でもある本作ですが、当時プレイできていたらその衝撃は計り知れなかったのでしょう。我が身の不明を恥じます。

冒頭で書きましたように、その物語構築は虚淵玄さん、最も好きなライターとしてこの名を挙げる方も多いのではないでしょうか。ニトロプラス創成期のシナリオ屋台骨の方です。彼の描く作品は、決して長くなりすぎず、ある程度の尺を以ってまとめきります。その中で、エンターテイメントに必要なエッセンスが順序よく盛り込まれている、いうなれば映画のような作品を書く方だと思います。

あらすじ。米国暗部で起きているマフィア幹部連続暗殺事件。首謀者と囁かれているのは謎の組織「インフェルノ」、そして組織最高のヒットマンである「ファントム」なる存在。そんなさなか、日本人の主人公は観光のため訪れた米国で、とある事件に遭遇してしまいます。目を覚ますとそこは見知らぬ荒れ果てた土地、記憶も消されていて何も思い出せない、そして目の前に現れたのは「インフェルノ」のメンバーと、組織最強の暗殺者「ファントム」…彼女は年も変わらない一人の少女でした。わけもわからぬまま、暗殺者としての養成を彼女から受けることになる主人公…彼らの翻弄された運命の果てには何が待ち受けているのでしょうか。

逃れられない運命の中で懸命にもがく主人公たちの姿勢が非常に美しく、ハードボイルド映画のお手本のような展開がいちエロゲで見られるとは面白い限りです。そして、そんな狂った日常下、暗殺者として訓練されてしまった主人公たちが必死に生き抜いて各々の恋愛を貫く…そのあたりも丁寧に丁寧に紡がれています。

とにかく物語の構成力が素晴らしく、非日常に巻き込まれ暗殺者としての訓練を受けていく第1章、ファントムとして名を馳せた主人公が裏世界で暗躍する第2章、逃亡劇の果てに舞台を日本に移してのクライマックス第3章、と大きな枠組みの中で、ファントムたち、インフェルノメンバー、それに絡む日本の暴力団組織のメンバーたちが暴れまわります。

特に第3章は素晴らしく、それまでキナ臭いシーンの連続だった本作において初めて「日常」ともいうべき学園シーンが付加され、平和な情景やキャラクターが描かれることで、否が応にも追いかけてくる非日常との衝突と息もつかせぬ展開を見せる流れは「凄い」の一言。収束に向けて、登場人物たちが命を張って展開を盛り上げてくれますし、ヒロインたちとの純愛の決着の仕方も非常に綺麗です。物語が物語ですので、どんな結末を迎えても苦味と切なさを残すラストになってしまうのですが、ご都合主義に走らず非常に評価できます。

中でも最も爽やかに美しくまとまるのは、冒頭から草原という伏線を張っていたアインEDなのですが、最後のアイン改めエレンの笑顔のCGは最っ高でしたね。なんというか、このCG一枚があって本当に良かったというか、傷だらけの救いようのない人生を走ることになってしまった彼らの物語における、僅かばかりの救済がそこにはありました。エロゲ界屈指のラストシーンといって良いでしょう。


さて、一方で上記したように一本の映画を通すような作品であるため、「総プレイ時間何十時間」などという長編作品ばかりプレイしている僕にとっては、テキストは比較的少ない印象を受けます。長ければいいわけでもありませんし、書き込みが足りないなどとも露ほども思いませんが、展開の早い印象が無かったといえば嘘になります。10時間程度でフルコンプできるかと思いますので。

しかし、それは面白さゆえに一気に読み込んだことの裏返しであるとも取れますし、無駄のない洗練されたテキストだったともいえるかもしれません。それに、本作における学園での戦闘シーンがあったからこそ「あやかしびと」のトーニャルートが生まれたように、超山場である教会での対峙シーンがあらゆるライターにインスパイアを与えたように、その場面場面でのインパクトと後に与えた影響力はやはり凄まじいものがあり、それだけを切り取っても十分な評価に値するといっていいと思います。


【グラフィック】
このハードなシナリオを萌え絵で展開されても困るのですが笑、そうはいってもこの絵柄の古さは正直物足りないです。アインに関してはかなり好きですし、彼女のEDのラストなど、光るCGもあるにはありますが、それでも全体としてはクセがあり塗りも平坦なため、魅力的な絵柄だとはとても言えません。2000年発売だというのを差し引いたとしても、ちょいと厳しいっす。

また、これは是非言及しておきたいのですが、スタッフこだわりの部分だったのでしょう、銃器に対するこだわりはスゴいですよ。ミッションをこなすにあたって様々な銃の中から利用する銃を選択することができ、その説明もなされるのですが、そのためにわざわざ選択メニュー、3Dグラフィック、銃器説明画面を作りこんでいるくらいですからね。


【キャラクター】
まず、第一号ファントムとして運命を翻弄されてしまった謎の少女アイン、彼女が自分の存在を問いかけながら生き抜く様血まみれの人生の果てに掴んだ主人公への想いには心を打たれること必至です。ダントツに感情移入してしまうヒロインでしょう。そして、第3のファントム「ドライ」となってしまう少女キャル。途中出場にしてラストへの最重要キーパーソンとなってくる彼女、爛漫だった彼女が宜しくない方向に巻き込まれていってしまう展開には同情の念が捨て切れませんが、話の中核として非常にいい味を出していました。

次に、すっぴんからアサシンへと鮮やかなジョブチェンジをしてしまった悲劇の主人公ツヴァイ、彼は自身の感情をしっかり保ったまま強くなっていくんですね。サイスマスターの言いなりに冷酷殺人マシーンとして育っていくわけではありません。そこがとてもかっこよいですね。まさに本作の主人公にふさわしい男でした。

かっこよいといえば、日本の暴力団員である二人にはかなり興奮させられました。アメリカがメインの話ですが、日本人キャラクターが熱く描かれるというのも、やっぱり日本人である僕にとっては気持ち良いものです。若頭藤枝桐梧の豪快な男気や、美緒ルートでの命を張った志賀さんの行動には熱くなりました。やっぱ男のサブキャラが熱くないとゲームはダメですよね。インフェルノメンバーも各々の役割を完全に全う。報われない女であるクロウディアの悲哀も、諸悪の根源であるサイス・マスターのエグさも、凶悪な見た目に反してめっちゃいい人なリズィの優しさも、他幹部の悪役っぷり(そしてかませっぷり)も無駄なく描けていました。

また、日常の象徴、つまり対比の存在として描かれる美緒も十分魅力のあるヒロインなのですが、それまでのバックグラウンドの差がありすぎるため、どうしてもアインやドライの魅力には及びません。ま、それは致し方ないところですね。ストーリー内の存在重要度としては非常に高い子なんですが。

無駄のない登場人物が、見事な立ち配置で各々の役割を全うします。素晴らしいと思います。


【音楽】
ダークで鬱々としたBGMが多いです。特に第一章は、不可避な現実に絶望する主人公の心情と相まって、いやらしいくらい苦々しい気持ちにさせてくれます。ですが全体としては特に印象に残っているBGMもなく、あくまで裏の裏での演出に徹していたという感じです。


以上、Phantom of Inferno でした。
いまや大人気メーカーの一角であるニトロプラスの処女作兼代名詞的作品です。10年経った今になってアニメ化が決定するというのもその存在感ゆえのこと、絵柄こそ癖がありますが、少しでもご興味お持ちの方はプレイを是非推奨します!



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【リトルバスターズ!EX】
リトルバスターズ!EX



メーカーkey
シナリオ■■■■■■■■■□ 9.5
グラフィック■■■■■■■■□ 8.5
キャラクター■■■■■■■■■□ 9.5
音楽■■■■■■■■■□ 9.5
友情■■■■■■■■■■ 10
総合【S】 93点

最大瞬間風速 10,000 m/s

泣かせる恋愛や家族愛をガッツリ描いてきたkeyが、ついに私の大好物である「仲間」に焦点を当てた本作、リトルバスターズ!2008年発売作の中でも1,2を争う出来の快心作でした。

【シナリオ】
恭介、真人、謙吾、鈴、そして主人公理樹の5人は「リトルバスターズ」と称して幼少時代を共に過ごした幼馴染。両親と死別しふさぎこんでいた理樹を救い、支え続けてくれた4人の仲間たちは、彼にとってかけがえのない存在となっています。高校生になった今も変わらず友達ではあるものの、恭介の就職活動や部活に傾倒する謙吾など、いつまでも時間を共有することの難しさが見え隠れする中、昔のように何か楽しいことがやれないかを提案する理樹。それを受け、いつも突飛な提案をするリーダー恭介が「野球をしよう」と、やはり突飛な意見を提案します。チーム名は当然、「リトルバスターズ」。そもそもメンバーが足りず、練習量も圧倒的に不足しているという行き当たりばったりの状況ながら、理樹はメンバー集めに奔走しながら、新生リトルバスターズの絆を強く期待します…。

といった感じの導入ですね。

序盤は、初期リトバスメンバーを中心に、ドタバタな学園ラブコメとして展開されていくような雰囲気なのですが、読み進めていくとヒロイン全員、何かしらのトラウマや心の闇を抱えています。それもけっこうヘビーな展開が多く、そのあたりもkeyらしさといえましょう。

そして、というか、これ"ループもの"だったんですね。いやはや、ニコ動なんかでも大人気の本作、設定を事前に調べたりしなくて正解でした。プレイ前までは、「熱い友情物語」という先入観しかなかったですし、ドタバタ日常シーンを中心に描かれますし、野球練習やタイマンバトルなどのゲーム要素も盛り込まれていますし…まさか本作舞台が実は、修学旅行のバス転落事故で死に行く仲間たちが、たった二人生き残った理樹と鈴を成長させるために作り上げた虚構の世界、という設定にはヤられました。

最初に書きますが、恭介、謙吾、真人の3人は繰り返す世界をある程度制御でき、ループの度に記憶を蓄積させ続ける、いわば世界の「マスター」であり、さらに恭介は世界にリセットをかけることができます。ヒロインたちは記憶の蓄積はできないものの世界の構築に関わっている「キャスト」のような存在です。これが「世界の秘密」であり、最大の泣きルート「Refrain」を演出する超設定でもあります。


と、いうか正直なとこ、ヒロイン個別ルートはたいしたことありません。葉留佳ルートではベタにグッときてしまいましたし、美魚ルートの丁寧さと構成にも感心しましたが、個別ルートはあくまで最終ルートである「Refrain」に向けた短編集に過ぎず、本作の評価はすべて「Refrain」に対しての賞賛であり、S評価をつけたのも「Refrain」あってのものなのです!

本作複数ライター制ですが、日常パート、鈴ルート、「Refrain」の担当が、長年keyの礎になっている麻枝准さんみたいですね。麻枝さんパートは文句なしに突き抜けた満点なんですが、ちょっと、個別ルートとの差が大きすぎるのは難かもしれませんね。「Refrain」までいって初めて評価のできる作品です。


さて、前起きが長くなりましたが、各ルートに目を向けてみましょう。まずは棗恭介の妹にして、元祖リトルバスターズ唯一の女性メンバー棗鈴(∵)
彼女こそが上記「世界の秘密」を描く後半の「Refrain」における正ヒロインであり、メインルートとなります。本作はループものなので、このルートは恐らく初期の段階だといえるでしょう。すべてを読み終えてから思い返してみると理樹と鈴のスペックの低さがよくわかるルートです。

人見知りが激しすぎ、幼馴染たちと猫以外に心を開かない彼女が、野球活動や謎の「ミッション」を通して新たな仲間たちと触れ合い、友好関係を少しずつ広げていくのが見ものです。また、鈴と付き合いだしたことを幼馴染三人に告げるシーンが実に暖かかったです。特に鈴の兄である恭介の願いが切に伝わってくる電話のシーンは涙でした。このシーンも裏を知っていると泣けますよねぇ。。。


そして他ヒロインルートはすべて存在意義としては、繰り返す世界で理樹が強くなるための教材としての物語集という位置づけになります。悩みや困難を抱えているヒロインたちと理樹が恋をして深く関わっていくことで、彼女たちは救われていき各々のEDを迎え、また世界がリフレインしていきます。

クォーターながら、日本人びいきの祖父の影響で日本文化を愛しており、一方で英語を大の苦手とするその自分のアイデンティティに大きなコンプレックスを持っているクドリャフカ、理樹が彼女を支える決意をする流れは非常に好感がもてました。でもそのコンプレックスも、周囲からの嘲笑も、宇宙飛行士の母に近づくために我慢し続けてるとは健気じゃないですか。しかしロケット打ち上げ失敗による人災で極限の内乱状態に陥る祖国の島に帰るクドと、そこでの暴力的な描写は、本作のノリとは乖離したギャップがあります。なんか山場でモノ凄いご都合トンデモ展開が起きますがそこは「keyなので」ということで言及はしませんです、ハイ。

「わふー」という変な口癖を持っているのがkeyらしいといえばそうですねー。僕はkey独特の変な口癖が基本的に嫌いなんですが、彼女はキャラと扱いが非常にかわいらしく合っていたように思います。

兄の死を現実逃避することで存在しなかったことに追いやっていた、喪失を恐れる少女小毬ルート。理樹と死んだ兄を同一のものとして重ねるようになる壊れた小毬、かなりシリアスでした。この現実逃避してしまったヒロインを救済させる展開はkeyが得意とするストーリー構成ですね。ラストで、悲しみを受け止めることができるようになった小毬を示唆するエピローグがあり物語が締められますが、このあたりの書き込みも丁寧ですね。

葉留佳ルートはこれまたヘビーなルートでした。テーマは「存在の証明」、普段から能天気で馬鹿ばっかりやってるキャラに限ってこういう伏線が潜んでいるものですからタチが悪い。彼女と彼女の周囲にある歪んだ人間関係は、それぞれがそれぞれを思いやったうえで生まれてしまった悲しいすれ違いからくるものでした。葉留佳と佳奈多がすれ違いの末に心を初めて通い合わせるシーンは涙が零れ落ちてしまいます。ふたりともが本当は不幸で、ふたりともが本当は互いを憎んでおらず、ふたりともが思い合っていました。

美魚ルートは、物静かでリリシカルな美魚らしいファンタジーなルートでした。かなり毛色の違うルートですが、個別ルートの中では最も丁寧に描かれた綺麗なルートだったと思います。彼女のシャドウである「美鳥」と入れ替わって存在が消え行ってしまう展開と、海と空を引き合いにした青と白と透明、この関係を理樹と美魚たちとの関係に置き換えた文章の綴りはとても文学的で美しく、心に響くものがありました。構成立てに関しては見事で、非常にkeyらしいといえばkeyらしく、AIRを読んでいるようでした。この担当ライターさんは誰だかわかりませんが、ひとつ長編を読んでみたい気にさせますね。

来ヶ谷ルート、全ヒロインの中でも最も超人的扱われ方をする彼女ですが、自己ルートでもそれは例外ではなく、彼女は唯一世界の仕組みに気付くヒロインとして描かれます。本作舞台が作られたセカイであるという設定を隠すことなく出すルートでもあり、恭介たちの世界とはまた別の、彼女の作り出した世界が崩れゆく切ないルートでもありました。ちなみに来ヶ谷ルートは選択次第でもうひとつEDがあり、来ヶ谷世界での出来事を経て、現実世界で記憶を思い出すことで彼女が理樹に告白をし、(恐らく)結ばれるHAPPY ENDです。

ルート導入時に、来ヶ谷のことを好きになった理樹が仲間に相談し、それを皆で面白おかしく協力していく展開は、仲間ものならではでした。感情表現が出来ない自分がリトルバスターズに入ることで変わった、と語る場面からもいえるのですが、他ヒロインルートに比べて「仲間」の重要さを前面に押し出している印象のルートでした。


…と、各ヒロインを救う各々のHAPPY ENDやBAD ENDを繰り返し、二周目の鈴ルートに入ります。


恭介の度重なる世界のリセットを経て、成長してきた経験の蓄積から、理樹の判断力や、鈴の仲間たちとの適応の速さや理解度の高さなどが格段に違います。そしてそれまで剣道一辺倒だった謙吾が野球に協力してくれる違いもあります…が、これは選択次第で他ルートでも可能だったのかな?

一周目の鈴ルートは、最終ミッションであった交換留学生の話を蹴って唐突に幕を閉じてしまいますが(恭介の判断でしょう)、今回はその話も受ける流れを取ります。そして結果的には、鈴の挫折と理樹との逃避行が失敗に終わるBAD ENDであるわけです。また、毎回鈴に与えられる謎のミッションがすべて、彼女の成長を期待し交換留学生に鈴を抜擢させるための恭介の仕業だということもわかります。その目的こそわかるものの、恭介が抱えている本当の伏線もわからないまま、すべては「Refrain」に託されます。

このルート、土手で写真を撮るシーンがたまんないっすね。リトルバスターズというチームを大切に思う理樹の願いもとてもよく伝わってくる、青春仲間モノに弱い僕にとっては最高に良いシーンです。


そして世界の秘密が明かされる「Refrain」ルート。はっきりいってこれが無ければ本作は名作とは呼べません。元祖リトルバスターズ面々の想いと優しさが溢れんばかりに書き込まれ、泣かせようとする意図満々の涙腺崩壊シナリオが展開されます。「仲間」「友情」「熱き男キャラ」、これらを美少女ゲームに強く求めたい僕としては、待ってましたの設定であり、もはやエロゲを逸脱した展開ではありますが、こんだけ泣かされたなら良いってなものでしょう。

前ループで恭介の思惑が大失敗に終わり、鈴が心の傷を負ったままになってしまっているうえに、恭介はバス事故が起きて理樹と鈴以外全員瀕死状態というまさかの現実世界で最後の行動を起こしていることにより、虚構世界の舞台上では引きこもりになってしまっています。

一方、理樹はうまくいかなかった前ループの最後で「強くなる」ことを誓っており、その意志が「Refrain」で発揮されることとなります。そんな棗兄妹の様子を受け、リトルバスターズ結成以前、棗兄妹が行動を起こし始めた過去を追いかけながら、恭介と同じように行動を辿る決意をする理樹…ここからのシナリオ、仲間それぞれの視点からの話が用意されているとは思いもしませんでした!しかもどれも泣けるんだコレが!リトバスはRefrainがすべてだとよく言われていますが、それも頷ける完成度がこのルートにはありました。

最初に表れる真人視点の物語は、男性メンバー視点展開があったことの驚きと、ただのギャグキャラじゃなかった(笑)驚きがありました。謙吾視点の物語は、彼らがどういう状況にあり、各々がどういうスタンスで動いているのかが何となく見えます。そして恭介視点、彼は物語の最も核心にいる人物で、彼の願いを実現するために断腸の思いで行動しています。ところどころでの鈴や仲間を思う独白が非常に切なく、グッときてしまうこと間違いなしです。


ラスト、世界が崩壊する直前の野球シーンなんてやばすぎますよ。真人から手向けられるボールと言葉、号泣しながら感謝をする謙吾、別れを告げる恭介の泣き顔と挿入歌「遙か彼方」…この流れ、これで泣けない人って何で泣くの??という感じです。。。

そしてもう一人、重要な世界の仕掛け人となるのが小鞠ちゃんなのだと思います。各ヒロインを救ってきた理樹のループを理解し8人の小人の絵本を描いた彼女は、世界のマスターであったリトバスメンバーが消えた後もセカイに残り、消えゆく前に最も仲の良い女友達であった鈴に対して、別れの言葉と最後の願いごとを託します。夕焼けの屋上で紡がれる彼女の言葉にはやはり泣かされること間違いなしです。

この一連のシーンは、これぞkey独壇場と言わんばかりの泣きのシナリオと演出が展開されます。「死別」を描かせたら右に出る者はいないkeyですが、本作にもその設定が適応されているとは、序盤には思いもしませんでした。

そして二人で生きる決意をしてエンドロール…なのですが、最後にもうひとつTRUE ENDに向かう最終リフレインがあります。それは小毬の「星の願い事」でナルコレプシーを克服し、事故で瀕死状態の皆を鈴と共に救出し、みんな助かりHAPPY ENDというやっぱりkeyでした奇跡発動ルートになります。正直、全員死んでしまったその後の世界で、理樹と鈴が生き抜く決意をするエンディングの時点で終わらせるのが、物語としては一番美しいですし、もしもここで終わっていたとしたら、そのあまりにもビターで切ない閉じ方に、S+まで評価は上がっていたんじゃないかな。

だってね、全員助かっちゃう奇跡を起こすルートがありなら、今まで恭介たちが行ってきたリフレインは一体何だったの?って感じじゃないですか。みんなが理樹と鈴に託した想いは何だったの?って感じじゃないですか。

…でも、それでも、やっぱりリトルバスターズ全員が笑っている結末が見たいです。そこに多少興冷めなところがあったとしても、それでもやっぱりその結末が本作にはふさわしい!と思いたいですよね。




さて、18禁Ver.の「リトルバスターズ エクスタシー」には、追加ヒロインが3人ほどいます。従来のヒロインルートよりも完成度の高い3ヒロインルートについても言及しておきましょう。

佐々美ルートは、RefrainのTRUE以降の話ということですので、何やらFDのような雰囲気に満ちています。佐々美が猫になってしまうというシナリオもそうですし、真人のギャグが一際冴えわたっているという部分でもそうです。しかしこの猫になってしまうということ自体が佐々美ルートの肝で、理樹たちが迷い込んでいた世界の「マスター」この黒猫―、佐々美が幼少時に飼っていた猫だったという設定は読み進めていけば何となくわかってくる部分ですが、やはり死別が得意なkey、猫と佐々美との別れは涙なしには見れません。いかにもサイドストーリー的な設定ではありますが、泣きどころとしては全ヒロインルートの中で屈指のものを持っていたと思います。

新たにヒロインに格上げになった佳奈多ルート、何が良いかというと、葉留佳と佳奈多が最初の時点ですでに確執をある程度乗り越えているという前提の変化があります。葉留佳ルートを知っている身としては、距離を測りながらもお互いに歩み寄ろうとしている様が微笑ましいです。このルートは、葉留佳ルートで感動させてもろた姉妹の互いを思い合う愛情をより強固に見せるためのルートであり、葉留佳ルートをより深く掘り下げるためのルートですね。この2ルートをうまく混在させれば、頭ひとつ抜けたヒロインルートになりえたことかと思います。

沙耶ルート、ダンジョンアクションというゲームパートをメインとし、軽いノリで進んでいく全体の設定の割には、とても悲しいシナリオです。「Refrain」をクリアし世界の仕組みがわかっていると彼女がどんな存在なのかが何となくわかりますが、途中の回想からも分かるとおり、彼女は土砂崩れの事故により既に死んでしまっています。青春を駆けることなく死んでしまった彼女の想念が、恭介の愛読漫画である学園スパイ小説「学園革命スクレボ」の登場キャラ沙耶という形で恭介の虚構世界に登場してしまう、これが沙耶の裏設定ですね。

イレギュラーである存在を世界からはじくために恭介が暗躍するわけですが、最後世界を去る決意をした沙耶が望んだのは、恋をした少年理樹との等身大の恋愛。再度リフレインする世界で理樹との思い出を心に刻みつけ、世界を離脱―死に行きます。ラストで、理樹と恭介、真人、謙吾、そして沙耶の5人で駆けている写真で物語は幕を閉じますが、これは沙耶の想いに手向けるため恭介が構築した世界における幻なのか、はたまた奇跡が起こり、死するはるか前の幼少期、鈴ではなく沙耶がリトバスメンバーとなったパラレルの現実世界でのことなのか…そこはユーザーに委ねられるところですが、他ヒロインルートとは違い、現在進行でわかりやすく結ばれる結末を描かないため、強い切なさを残します。


以上がリトルバスターズのシナリオ群となりますね。長くなりましたし、伏字もいっぱいです。それは書きたいことたくさん、でも未プレイの人には何もわからずプレイしてほしい!という思いから。何はともあれ「Refrain」、これに尽きます。是非です。



【グラフィック】
keyといえばシナリオ麻枝准さん、キャラクター樋上いたるさん、というのがドドド定番です。とはいえ実は私AIRのところでも書いたのですが樋上さんの画風が苦手でkey作品を敬遠していたくらいですので、今回のプレイにも一抹の不安はあったのですが、特段問題ありませんでした。

それはKANON/AIR時代に比べて格段にうまくなっていてロリ具合がだいぶ抑えられていて、むしろkey屋台骨である彼女の絵が良く見えてきたというのがひとつ。それに実は、本作でメインとなっているのは樋上さんではなくNa-Gaさんという方で、こちらの方はかなり私好みの画風でした、というのがもうひとつですね。さらに、背景、塗り、演出面など素晴らしいです。


【キャラクター】
keyといえば現実にいたらドン引いてしまうような変人ヒロインばかりを描く印象なのですが、本作も例にもれず変なヒロインばっかりです。でも、何でしょう、わたくし慣れてしまったのでしょうか…。危ない天然ヒロインたちの挙動やら「わふー」やら「ほわあ」やら「やは」やら何だか心地よさすら感じてしまいました。遅ればせながらわたくし、ここへきて鍵っ子の仲間入りを果たしてしまったのかもしれません。

どこかおかしなヒロイン群、お気に入りはリトバスメンバーでマイペースな鈴、ノリがよく天然キャラのクドリャフカでしょうか。

そして元祖リトルバスターズの男衆の熱いこと熱いこと。9人もいるヒロインたちが束になってかかっても、男性3人の魅力には遠く遠く遠く及びません。まずはリーダーであるまとめ役の恭介。本作はある意味彼が裏の主人公であったといっても過言ではありません。すべての彼らの行動の起点であり、Refrainにおける最大の仕掛け人も彼、事故現場で溢れるガソリンを瀕死の身を挺して食い止めるのも彼、TRUE ENDエピローグで皆が待ち焦がれている人物も彼… あれ?裏というか表の主人公だったようです。

そしてギャグ要因の真人。彼の筋肉ネタ、天然ボケ、理樹を溺愛している面など笑いどころは数知れず。それでいてシリアスシーンにもしっかり絡んでいるため魅力は増すばかりです。最後に謙吾、こういう一歩引いていながらも真剣に仲間を思っている頼れるキャラがいることでチームは俄然強みを増します。最も人に厳しいようで、実は最も仲間に甘く優しい奴だったというのも最後かなり泣けます。

そして忘れてはならないのが主人公の理樹です。弱く幼い彼の成長物語ともとれる本作、CVも女性声優を起用しているためその弱々しいイメージは非常に強いのですが、最後の「Refrain」で彼が見せる強さには感動すら覚えます。

男キャラクターに重きを置かない風潮が強い18禁ゲーム界ですから、これだけの熱い漢メンバーがチームに揃っている本作は非常に好感が持てますね。ただ、一方で美少女ゲーとしてどうなのよ、とも思うんですけどね。



【音楽】
key屈指のライター麻枝准という人は、音楽でも遺憾なく感動させてくれることで有名ですが、本作も例に漏れずやってくれますよ。良かったのは佐々美テーマの「猫と硝子と円い月」、メロディが切ないです。あとは歌付きの曲のインストゥルメンタルver.が総じて良いです。「Song for friends」のピアノver.とかやばいですね。あとは「Saya's Melody」「遙か彼方」ですね。麻枝さん以外ですと、かっちょいいベースラインが印象的な「Mission Possible」が残ってますかね。

それから、歌付きの曲が豊富にあるのも評価できます。その中でも要になるのはやはり「Refrain」重要どころで流れる「遙か彼方」、泣かないはずがありません。「Song for friends」も歌詞といいメロディといいズルすぎる、タイトルからしてズルいですもん。そしてOPの「Little Busters!」は、サビで歌詞が文字通り「リフレイン」する大名曲。メロディが非常に頭に残ります。プレイし終えてから改めて聞くと、歌詞がもーくちゃくちゃに響いてくるんですよね。



と、いうわけで長くなりました、リトルバスターズ!EXでした。友情と優しさが目一杯に詰まっています。仲間モノが好きなら絶対にプレイしなければならない作品であり、さらに男性キャラの熱さが好きならばプレイしない理由はどこにもありません。

何とか頑張ってルート「Refrain」までたどり着きましょう。リトルバスターズに入りたくなりますよ。



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム