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エロゲ レビュー ブログ
【新・御神楽少女探偵団】
新・御神楽少女探偵団



メーカーelf
シナリオ■■■■■■■■ 8
グラフィック■■■■■■■■ 8
キャラクター■■■■■■□ 6.5
音楽■■■■■■ 6
蘭丸■■■■■■■ 8
総合【B】 72点

大正浪漫

プレイステーションで人気を博していた「御神楽少女探偵団」シリーズがなんとエロゲになって戻ってきました。なんという展開、なんというエルフ。

【シナリオ】
時は大正、失踪してしまった探偵事務所所長の御神楽時人を追って大陸大連へと渡る所員の巴、千鶴、滋乃の三人。そこで引き起こされる猟奇事件の数々、彼女たちは事件を潜り抜け所長の時人を見つけ出すことができるのでしょうかってなもんです。

エルフお得意の推理アドベンチャーですね、テンポよく読ませる構成展開はこなれたもので、さすがの大御所といったところ。画面上やセリフなど事件の手がかりになるとユーザーが判断した部分で任意に推理トリガーを引き、ポイントを貯めることで場面を展開させていくシステムは画期的且つかなり面白いものでした。

1章あたりで、事件の導入発端が描かれる事件編、上述の推理トリガーを用いユーザー推理していく捜査編、トリガーで貯めた情報を基に推理を展開する解決編と3構成から成ります。プラス、各章で少しずつ出てくる一番大きな事件の断片を紡いでいき、ラストに収束していく感じですね。推理モノのドラマ形式といっていいかと思います。ま、ミステリーとして凄いトリックがあるわけでもないし、黒幕も何だかイマイチなので、どちらかといえばシナリオそのものを楽しむ感じです。

ただ、なんだろな。シナリオは確かに良いんだけど一周すればストーリーはコンプですし、CGもほとんど埋まってしまうので、思い返せば確かに面白かったんですが、いまいち印象に残っていない。各々の物語もそんなに長くないですし、それが物足りないといえば物足りないところですかね。実はPS版の前2作が同時搭載というボリューミーな内容となっているので、それもあわせてプレイするとここは気になりませんが、ま、本作のみって評価だとやっぱり全体量は少ないんじゃないかなぁ。まとまりはいいですけどね。

ちなみに時人をかくまっている中華料理屋の少女芳蘭タソが、実は御神楽探偵事務所の助手蘭丸君であったとは、最後まで微塵も思いませんでした。途中であわや濡れ場みたいなシーンもありましたが、危ないところでした笑


【グラフィック】
エルフですんでね、問題は特にないです。背景もキレイですし、絵もかわいいし、グロ絵も気持ち悪いし、さすがです。前二作はちょいとね…はっきりいってかわいくないんですが、新御神楽に入った途端にレベルが格段とアップします。

さめだ小判さんの絵は好きです。巴が馬鹿笑いしてる立ち絵など、ヒロインたちの表情が崩れたときの絵も好きです。オッサンや奇人どもの絵もよく気持ち悪く描けていますし、エルフ的な原画家さんかもしれません。


【キャラクター】
少女3人組は、活発ポニテ少女、三つ編み眼鏡少女、ツン系お嬢様、とアニメにでも出てきそうなほどバランスがとれています。まぁそもそも御神楽少女探偵団シリーズが、PSのコンシューマからスタートしたのもあって、エロゲ独特の奇人系ヒロインはひとりもおらず、正統派王道ヒロイン3人で固めています。個人的には、3人の中でもとりわけ視点の中心になることが多いというのもありますが、活発ポニテの鹿瀬巴が一番好きです。

サブキャラとしては、前作からの野上糸、それから中華料理屋の面々も熱かった。そして女装した蘭丸が一番かわいかったのはここだけの話にしてください。


【音楽】
OPは昭和歌謡とジャズを合わせた雰囲気ある曲です。全体的に、世界観を崩さないような音楽がそろっています。ただまぁエルフは音楽で魅せようとはしない会社なので、地味な音楽が多いのも確かです。


以上、新御神楽少女探偵団でした。PS版からプレイしていた人は、18禁ゲームになって愕然としたか狂喜したかのどちらなんでしょうねぇ。でも面白かったので続編を期待したいところです。



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【クロノベルト】
クロノベルト



メーカーpropeller
シナリオ■■■■■■■ 7
グラフィック■■■■■■■■ 8
キャラクター■■■■■■■■□ 8.5
音楽■■■■■■□ 6.5
熱いバトル■■■■■■■■■ 9
総合【B】 74点

ベジータの定理

あやかしびと&Bullet Batlers のファンディスクです。propellerから立て続けに出されたこの二作は共に名作と呼ぶにふさわしく、何よりも熱く強いキャラクターたちに魅力があったためファンディスクが望まれるところではありました。加えて、それぞれの追加シナリオものというわけではなく、二作のキャラたちをクロスオーバーさせる展開とあっては、ファン垂涎ものであることは間違いありません。

【シナリオ】
特に二作において最も魅力を放っていた悪役の九鬼先生とアルフレッドを主役に沿えたふたつのサブシナリオは、非常に出来が良かったと思いますね。ルートによっては生き残るものもあったかと思いますが、前提として九鬼先生もアルフレッドも死んでいます。雲外鏡の力により、一奈を追い復讐鬼としてゴルトロックに紛れ込む九鬼先生シナリオ、神沢高校の文化祭を通して自分の生きる目的を探すアルフレッドシナリオがあります。設定としては陳腐といえば陳腐ですが、まぁそれもファンディスクならではですね。

そしてさらにいうなれば、アルフレッドと神沢高校生徒会メンバーが絡むシナリオの方がやはり面白く、共に良作でありながらもどうしても「あやかしびと」に軍配が上がってしまう事実を如実に表している結果になったのも少し皮肉だった気がします。キャラクターのバランス感や魅力が「あやかしびと」のほうが優れていることを改めて確認してしまいました。九鬼先生とフォルテンマイヤー家の話は、Bullet Butlersのキャラたちとの絡みというよりは、どうしても九鬼先生の悲哀葛藤男気…という彼の魅力オンリーに終始していましたから。九鬼先生のかっこよさは異常。

対してアルフレッド編は、アルフレッドのクールさもさることながら、とにかくあやかしびとメンバーのキャラがよく立っていたため、読んでいて楽しい絡み方をしてくれました。本筋のアルフレッドは登場回数もそれほど多いわけでもなく、最後までどこか底の知れないままですので、そういった意味で彼の人間的な部分が思い切り描かれる展開がまた良かったのかもしれません。


そして本体シナリオのクロノベルトなのですが、神沢市とゴルトロックのキャラクターたちが殺し合いをするということで、愛すべきキャラたちの血沸き踊る総乱舞を期待したんですよ。でも戦闘に特化したメンバー数人ずつしか出てこないうえに、完全なガチンコの肉弾戦、これは何だか残念でした。

まぁキャラ自体が多いので、あれもこれも出していたらFDとして大きくなりすぎたのかもしれませんが、例えば「あやかしびと」、一乃谷兄弟やトーニャが戦闘するのは、わかるというか当たり前なんですよ、強いんだから。ここに、刑二郎や伊緒、狩人といった非戦闘人妖が皆で力を合わせて闘う部分があやかしびとの大きな魅力だったように思えるんです。そこにあるのは生徒会という仲間たちの絆であり、チーム戦でした。Bullet Butlersも、純粋な戦闘シーンというよりも登場人物たちの様々な思惑や行動が絡む部分が凄く面白かったのであって、純粋な殺し合いフェーズの部分は、どことなく「夢のバトル」という設定に頼りすぎているのかな、と感じたりもしてしまいました。そして純粋なバトルにするなら、「虎太郎×レイス」これをやらないと!

とはいえ、まるで違う世界観を持つ2作品を無理やり絡めるため、その無理やりさをも設定として呑み込み、うまくストーリーを紡いでいったのは東出さんの実力あっての力技であったといえます。ファンにとっては鼻血が出そうな話でしょう。



【グラフィック】
もともとのCGと新規CGをうまく絡ませているので、退屈な感じはしません。化け物好きの中央東口さんですので、レギオンの造形に力入ってます。特に最後知能化したレギオンは実に気持ち悪い。

そしてなんつってもOPがかっこよすぎる。OPに関して言えば、本家2作を軽く超えています。


【キャラクター】
誰が何と言おうと九鬼先生とアルフレッドでしょう。クロノベルト編においては双七やリックも主人公らしい活躍をするにはしますが、どうみても彼らを食いまくっています。ダーティヒーローってのは強いんですよね。ドラゴンボールのベジータ様が結局かっこよすぎるように、本作も主人公たちを空気と追いやってしまった彼らはハッキリいってです。

既存キャラで特に良かったのは、まずは八咫鴉。異世界の住人であるアルフレッドのことを思いあれこれと手を尽くしてくれる様からは、彼の(本当は)器のでかいところを感じさせられました。さらにトーニャ。小悪魔的な性格に磨きがかかっています。彼女はリリース時からユーザ人気も凄かったですし、東出さんからの愛情もリリース後、より強くなったんだろうなぁと思えます。

対して最高のトカゲがあまりいい働きをしなかったのは残念でした。あのトカゲは最高なんですが…。

そしてそんな豪華面子の中での新キャラでありながら、雲外鏡×2、聖導評議会のマグダラは、とても良い立ち位置でしたし決して負けていませんでした。ただでさえ超豪華声優陣だというのに加えて、彼女らのCVが風音さんと青山ゆかりさんですので、豪華さに拍車をかけるってなもんです。


【音楽】
両作とも音楽は優れていましたが、本作の追加音楽はOPやEDの歌付曲くらいですかね。相変わらずのクセのある同じ兄ちゃんをボーカルに起用しています。ざっと通して、やっぱり「あやかしびと」の泣かせ曲だった「五位鷺」が群を抜いていいですねぇ。また、片方の世界でもう片方の世界の曲が流れるのはクロスオーバーシナリオならではでした。とはいえ、FDですんで新しい曲がほぼ無くてあとは二作の使い回しですので、音楽に関しては厳しめ採点にしておきましょう。


以上クロノベルトでした。ファンは涙を流して喜ぶ…といいたいのですが、メインヒロイン2名がほとんど出てこないのと、主人公が空気化していることは述べておかなければなりません。これは九鬼先生とアルフレッドに萌えるゲームです。


関連レビュー: あやかしびと
関連レビュー: Bullet Butlers

  


テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【百鬼~淫黙された廃墟~】
百鬼~淫黙された廃墟~



メーカーelf
シナリオ■■■■■■■□ 7.5
グラフィック■■■■■■■■■ 9
キャラクター■■■■■■■ 7
音楽■■■■■■ 6
ロケーション■■■■■■■■ 8
総合【B】 73点

軍艦島クオリティー

僕は、初めてやったエロゲが「下級生」で、続いて「同級生」シリーズをプレイしすっかりこの世界の凄さというか良さを知ってしまいました。その後、エルフと勘違いして買ったF&C「同窓会」が個人的不発だったため、「やっぱエルフだからおもろいのかな」と思いつつプレイした「遺作」「臭作」で改めて溜飲を下げた・・・という圧倒的なゴールデン蛭田ルートを通ったエルフ信者でした(実はYU-NOだけプレイしていないというと罵られそうですが、リメイク版を待ち続け幾星霜―)。そんな僕ですので、エルフ作品だというだけでそれなりの評価をしてしまいます。あんまり評価高くないんですよねー本作。けっこうな名作だと思うんだけどなぁ。

【シナリオ】
かつて石炭採掘の要衝として栄華を成し、労働者とその家族で東京を遥かに凌ぐ人口密度を誇った応化島―、島には高層アパートをはじめ学校、病院、神社…と、町としての機能がひととおり揃っていた。しかし主要エネルギーが石炭から石油に移行するとともに島は閉山。住民は消え、そこには廃墟となった島だけが残った―と、舞台はそれから10年後の話です。友人の高志に誘われるまま、いまは廃墟と化した応化島のミステリーツアーに参加した竜一。ツアーには、ふたりの他に、幼馴染の妹キャラ若葉、少し年下の女の子コンビ元気っ子宏美と眼鏡っ子祥子、油ぎった中年社長篠原とその妻とも子、また彼らに因縁のありそうなガタイのいいオッサン伊藤、さらにツアーコンダクターの大石と恵美さんが参加しています。思い思いに島を探索する面々でしたが、竜一たちチーム若手の4人が発見したある事実を引き金に、凄惨な事件に皆は巻き込まれていきます。島に隠されている秘密と悲劇を見つけられるか、ってな感じですか。

シナリオは、ま、勿論BAD ENDなんかもありマルチエンドですが基本的に、「ミステリールート」「応化ルート」「言霊ルート」「百鬼ルート」の4パターンに分類されます。ミステリールートは字の如く、ストーリーで起こる殺人事件を解決する現代でのルート、応化ルートは祥子と宏美の個別END、言霊ルートは背景となる場面を描きつつのエロシーン集、でそれらのルートからの条件(15の小説を回収だったかな?)を満たすと、応化島の過去、つまりミステリールートに至る経緯が描かれる百鬼ルートが追加されます。百鬼ルートのラストはかなり良かったので最後までプレイすることをおすすめします。伏線未回収のまま終わるミステリールートを各ルートで多角的に補完する流れは非常にうまく、評価できます。

でもミステリールートは正直ミステリーとしては弱いんですよね。学校探索中にあかりの死体保存を発見してしまってから、通信が途絶え、翌日に迎えがくるまでの間次々に参加者が殺されていく過程自体は迫るものがありましたが、なにぶん期間が一晩と短いうえに、その要因も直接犯こそ恵美ですが、黒幕はいきなり出てきた大河内財閥の義昌ぼっちゃんという新キャラであると共に、理由もそれまでのキャラに起因する理由ではなく、あかりを見つけられたから皆殺しという完全に彼のエゴであるため、なんだか拍子抜けだったのが実際のところです。

ミステリーツアーも、島の所有者である大河内財閥会長気まぐれで行われた、それで義昌が監視役として恵美をよこしたというのも理由付けとしてあまりにも弱い。というわけでこのルートは一見メインっぽいんですが、世界観堪能&伏線提示ルートだと思った方がいいかもしれませんね~。


百鬼ルートに入るために、物語内で集めなければならない短編15編がありまして、中身自体は本編とはまるで関係ないんですが、この出来が総じて良い、ってのもなんというか勿体なかったかな…これらが破綻することなく本筋ストーリーに絡んでいたら総合評価はもう1ランク上をいっていたと思います。



さてさて、しかしてそしてその百鬼ルートですが、今まで妹のようにキャイキャイ主人公にまとわりついてきていた若葉の存在自体が伏線になっていることがわかります。まぁ彼女は他ルートのENDで、帰路についた竜一の前からいつのまにか姿を消しているという伏線があるので、何かしらのトリックスターであることは薄々わかってはいるのですが、その展開には落涙必至です。物語当初から当然のように"そこにいるように"登場してきますが、実は諸悪の根源である義昌に撃ち殺され死んでしまっている(ということにしておきましょう、とりあえず)彼女、幼馴染設定も作られたものなんですね。


しかし「百鬼~淫黙された廃墟~」とは…、もっといいタイトルはなかったものでしょうか…。実際ストーリーは、悲しい話ではありますがもっと純粋なお話でして、このタイトルだと鬼畜系っぽくて導入部分ですでにユーザーを選んでしまいそうじゃないですか。タイトルって重要だと思うんですよねー

余談ですがこのゲームで初めて僕は端島、通称・軍艦島の存在を知りました。なんとワクワクする舞台設定をしてきたんだと思ったものですが、まさか本当に存在している島だとは思いませんでした!歴史背景もすべて実在の端島のものと同じなんですね、いつか行ってみたい土地のひとつとなりました。ただ、やはり廃墟なもので今は入島することができないとか…まわりを廻るだけの定期船が出ているらしいですが、それだと面白くもなんともないしな…。



【グラフィック】
塗りはエルフなんで素晴らしいレベルですし、キャラ絵自体もエルフっぽくないというと失礼かもしれませんが、従来のエルフよりはかわいらしい感じの絵柄です。兼高双一さんですか、個人的にはかなり好きな絵柄ですが、ほかの作品では描いてないのかなぁ。

それから3Dマップですが、敢えて移動など3Dマップにしたことでユーザ批判を読んでいるみたいですが、僕はプレイ時、その時発売されたばかりのPCでスイスイとプレイしていましたので、むしろ「スゲー」と思っていましたねー。特にOPデモ、海面スレスレを島に向かって視点が突っ込んでいくCGは正直かなり奮えました。こりゃー絶対やるしかねぇと思いました。



【キャラクター】
主人公も含めて全員声付です。なので感情移入ができない、という意見も散見されるようですが僕はたいして気になりません。まぁただ、主人公の竜一君のキャラがちょいとばかし弱いのは事実です。かといってそれを補うキャラがいるかといわれれば、高志も弱いし…過去の伊藤は熱かったけど。またエルフのレビューを書く際は必ずエルフお得意の奇人キャラについて書きますが、奇人らしい奇人もいないですね。強いて言えば大河内義昌なのですが、彼は奇人というよりは狂人といった方が近いんでねー。

一番かわいいのは宏美でした。本作のような暗い作品内では、あーいう爛漫なキャラはホント重宝します。それからストーリーの伏線におもいっきり絡んでいる若葉もそのシナリオがキャラクター性を思い切り押し上げています。しかしあかりは報われないなぁ…。


【音楽】
ここがちょっと弱いですね。おどろおどろしい雰囲気はよく出ていますが、きめどころに欠ける感じですね。


そんな百鬼です。
僕は隠れた名作だと思っています。このサイトをひととおり見て傾向が似ていると感じられた方は是非プレイしてみてください。





テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【ゆのはな】
ゆのはな



メーカーPULLTOP
シナリオ■■■■■■■ 7
グラフィック■■■■■■■ 7
キャラクター■■■■■■■■ 8
音楽■■■■■■■ 7
雪の田舎町■■■■■■■■■ 9
総合【B】 72点

ぬくいゲーム

シナリオ、グラフィック、キャラクター、音楽、どれをとっても程良くて、初心者向けな作品だと思います。大作名作とは言えないけどとても温かくて雰囲気が良い、主人公はまっすぐで、ヒロインたちは優しく可愛く、サブキャラたちがとても濃い。バランスの良い作品であるといえるでしょう。

【シナリオ】
とある東北の田舎町でバイク事故に合い瀕死の主人公草津拓也。そんな彼を助けたのは、自称「ゆのはな町」土地神である「ゆのは」なる少女。しかし彼女は救った命と壊した祠の代償として、高額な金銭を要求してきます。断れば身体の修復は無に帰し、祠の修復がなされないと町自体が豪雪に飲み込まれるとなかば脅迫に近い形でその要求を飲むことになる拓也、ゆのはな町で銭湯を営む伊東家に居候させてもらいながらバイトに精を出すはめになります。

シナリオは丸谷秀人さん、ボリュームのある文章をテンポよく軽いノリで読ませ、日常シーンを描くのがとてもうまい方ですね。ゆっくりとまったりと進んでいくシナリオと、優しいキャラクターたち、柔らかみのある音楽と絵で、作品全体をポカポカした温かな雰囲気が流れています。東北の田舎町という設定もいいですね。雪深い町が舞台であるからこそ、その温かみが余計際立ちます。


銭湯でのバイトを選べば無邪気で純粋なわかばと、酒屋でのバイトを選べば隠れ小説家の椿と、喫茶店でのバイトを選べばエロ女王穂波と、電気屋のバイトを選ぶとイタリア戦艦オタクの尚樹…これは選べません。各ヒロインとのバイトやバイト後のちょっとしたイベントなどを通して親密度を上げて、だんだん恋に落ちていく…という日常パートをベースにした、丸谷さんらしい作品です。


わかばルートは、彼女自身まったりしているのもあり、全シナリオの中で一番まったりと起伏もなく終わります。ある意味ゆのはなの真骨頂ともいえる穏やか~なシナリオですね。ただ、彼女のエピローグが実は一番好きで、ゆのはな町という狭い世界で一生を過ごしていく考えを当然のように持っていたわかばが、拓也のもとへ上京してくるラストシーンは何だか感慨深いものがありました。

椿ルートは、実は超売れっ子ライトノベル作家である彼女の苦悩を癒すルートです。ただひたすら悩み凹む椿を追うルートです。なので途中はかなり重くなってきますし、エロシーンなんかも彼女の現実逃避の場として描かれたりするので、非常に閉鎖的なルートといえるかもしれません。まぁそれを二人でゆっくりじっくり解決していくのもゆのはならしくて良いです。ラストシーン、良かったですね。琴姫みのり(椿さんのペンネーム)の新作「ゆのはな」、いいじゃないすか。

そして穂波ルート。このルートは他2ルートに比べるとストーリーに仕掛けのあるルートでした。豪雪に見舞われるゆのはな町を鎮めることのできる巫女役が穂波だといいます。しかしラストはゆのはがその身を犠牲にして代わりに止めてくれます。…とあるのですが、ひときわ濃かったエロシーンが印象的だったもんで、そっちのが記憶に残ってるんですよねぇ。。。

3人を攻略したのちに、ゆのはルート攻略可能で、ゆのはの生い立ちがすべて説明され、わかばの祖母みつ枝や、椿の祖父渋蔵などが絡んだ伏線が消化されます。最後はとてもすっきり終わりますね。

ちなみにエロシーンはあってないようなもの…と思っていたのですが、穂波ルートだけ何故かやたら濃い。わかばと穂波で4,5倍くらいの差があるんじゃないでしょうか。ここらは統一してほしかったし、さらにいえば穂波ルートのエロシーン、実に質が良いんすわ…わかばでも同質のものを作って欲しかった~泣



【グラフィック】
原画は藤原々々さん。ふじわらわらわらさん?柔らかいタッチの絵で、作品によく合っています。ちょいとエロシーン向きの絵ではないですけどね、でも穂波はエロい。わかばがそのキャラクターも相まって非常に画風とかっちりはまっている感じがするな。

【キャラクター】
主人公拓也は、単純直情型のバカですが、非常に好感の持てる男です。しかし男キャラでいえば椿の祖父、渋蔵が最もかっこいい。いちいちしびれるセリフ、グッとくるセリフを吐きます。わかばの祖母みつ枝もいい味だしていて、要所要所で言う達観したセリフに感動させられましたね。

サブキャラが非常にいい味出していますが、これは丸谷パワーなんですね。彼は日常を彩る力に長けている、即ち魅力的なサブキャラを生み出す力に長けているということと同義です。

ギャグ面では、電気屋の主、尚樹が圧倒的でした。イタリア戦艦マニアの彼は、語りだすとテキストが「・・・(略)」とかになっても音声だけは延々と喋り続けています笑。

欲を言えば、サブキャラがとても魅力的な本作ですが、さらにその外にいるような脇役、ストーリーにたいして絡まない町の一般人たちをもう少し登場させれば、より町ぐるみの温かい感じが出たんじゃないかなぁと思います。あと、ゆのはの守銭奴ぶりがホントに凄くて、「かわいいもんですよ」とかってレベルを超越しているので、そこで感情移入できるかどうかの差が出そうですね。

ヒロイン格の中では、わかばが圧倒的に好きでしたが、いかんせんシナリオが薄い。。。シナリオは穂波⇒椿⇒わかば、でしたが、キャラのよさはその真逆であるよう思えます。そこらへん普通連動するもんですが、ちょっと珍しいケースですかね。



【音楽】
穏やかな曲ばかり。静かな町、穏やかな人、それを丁寧にあらわした音楽です。
といった曲群の中でも、わかば、椿ルートでゆのはと皆が再会を約束するシーン、泣けない穂波が感情を溢れさせるシーンで流れる「満ちる季節」、これが異色であるとともに群を抜いて良いです。PULLTOPは、こういうロック調で揺さぶる曲を1曲入れてくるんですよねー。


以上ゆのはなでした。
根強いファンも多い作品です。




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【遺作】
遺作

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メーカーelf
シナリオ■■■■■■■■□ 8.5
グラフィック■■■■■■■□ 6.5
キャラクター■■■■■■■□ 7.5
音楽■■■■■■ 6
変態ホラー■■■■■■■■■■ 10
総合【B】 73点

elf真骨頂

とんでもねえキャラ登場させたなと思いました笑。エルフってのはどうにも嫌悪しきれない絶妙な奇人を生み出す技術に関してものすんごい定評がありますが、こんなんエルフじゃなきゃ生み出せないだろうなと思います。まぁ後に兄弟として臭作、鬼作・・・と順次現れていくわけですし、実際臭作大先生と鬼作大社長様はより偉大でしたが、最初のインパクトという点ではやはり彼でしたね。


【シナリオ】
一通のラブレターに誘われるように旧校舎へと赴いた主人公は、そこに同級生や憧れの女子生徒、教師などが同様に集められていることを知ります。首謀者は用務員の怪しいオッサン「伊頭遺作」、集められたメンバーに対して何かしらの復讐感情を抱いています。さらに旧校舎は外に出られないように細工がされていて、そんな状況から主人公たちは無事脱出できるんかいなという話です。


ところどころで手に入るアイテムをどこでどうやって使うのか考えつつ、脱出に向けて行動を重ねていく、『考えて、解く』のキャッチフレーズにふさわしい脱出ミステリーゲームです。難しすぎず、かといって簡単すぎず、やりごたえがあるレベルにうまく落とし込んでいる印象ですね。雰囲気は非常によく出ていて、夜の旧校舎という閉鎖感と遺作の執拗な追いたてが世界観をうまく作り上げています。とにかく遺作が気味悪すぎて最高です♪


遺作はあの手この手で主人公ご一行を追い詰めていきます。とる行動やアイテムの使いどころを間違えると、突然仲間が行方不明になり、後に遺作からの陵辱ビデオが届きます

この流れがまたうまいというか、なんともいえないツボを突いているというか…いや、僕の趣味とかではなくですね、その流れがうまいんですよ本当に。エロシーンにも必要性や重点を置くところはエルフは偉いですね。名作と呼ばれる作品は、たいていエロシーンが薄いじゃないですか。それはそれでまぁ形として良いんですが、エルフやアリスといった老舗メーカーって、"18禁ゲーム"メーカーであることのこだわりを持っているような気がします。

それはさておき、誰かがつかまってしまうともうバッドエンドなわけですが、うまく手をかわしながら謎を解いていくと、全員で脱出劇を図ることが出来るわけですね。途中からなんとなく怪しい親友の陣八君が共犯者なわけですが、そこにいたる流れが、思い返してみると実にうまい。

一年前に妹が変死を遂げた謎を追いかけている美由紀は陣八が怪しいと最初から踏んでいるのですが、主人公は陣八をかばい続けるんですよね。最後、本位の行動ではなかったことを陣八も懺悔するわけですが、結局最後の最後には皆を裏切ってしまう。かばい続けるとBAD END、最終的には主人公にとっての親友である彼を見捨てなければならないという決断の果てにHAPPY ENDがあります。

あまり良い言い方ではありませんが、この何とも後味の悪い感じが非常に遺作らしくて良かった。どんな理由があろうと、彼女を見捨て、仲間たちを拉致し、最終的に殺害されるかもしれない計画に加担していた陣八君は絶対に幸せになってはいけません。

しっかし美由紀の追っていたその真相も、陣八の彼女(美由紀の妹)とのSEXを強要した後、それを拒んだ際に気絶しまった彼女を結局レイプした挙句本当に殺してしまうというもので、遺作のオッサンえぐすぎますわ。



【グラフィック】
ま、古いゲームですんでそのへんは今の視点で見てしまうとあれですが、当時は綺麗だと感じていましたし、何よりエロシーンが濃くて濃くて。また、伊頭家共通のこの見てくれをここで生み出したことは評価です。



【キャラクター】
主人公の小暮健太君、いいっすね。往年のエルフはかっこいい主人公ばかりですが、彼も高校生のくせに頭のキレる出来る男です。しかしそれ以上にかっこよかったのはメインヒロインの一角、橘美由紀。後半の彼女のキレ具合は、それまで活躍していた主人公がショボく見えてしまうくらいです。また、彼女は主人公に思いを寄せているクーデレのため、その片鱗がたまに見え隠れするのもいい感じです。

それと対になるメインヒロインが、主人公が思いを寄せている浅川琴未。彼女は典型的お嬢様タイプであり、美由紀とは全くタイプの違うヒロインです。彼女も性格見た目◎の良ヒロインで、なんとしてでも遺作の手から守ってあげたいところです。

このメインヒロイン2名のみHAPPY ENDがあります。主人公がずっと思いを寄せているのが琴未なわけですが、本編すべて通してしまうと、やはり美由紀に傾いてしまいますね~。

そしてそして、本作最大のキャラといえばやはり遺作大先生ですが。彼は怖すぎます、エロすぎます、キモすぎます


【音楽】
臨場感たっぷりです。追い詰められていく感じがよく出ています。この音楽で、あの雰囲気ならばプレイするものを皆ゲーム世界へ引き込むことでしょう。


以上簡単ではありますが。
陵辱系ゲームというものは、僕自身もそんなに好みではないですし、一般的にもそんな引きのあるジャンルではないでしょう。ただ、この伊頭家シリーズに関していえば、絶妙なシナリオ構成と展開、キャラクターから、意外と幅広いリーチを持っているのではないかなぁ、ということでオススメできる陵辱ゲーです。


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