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【あやかしびと】
あやかしびと



メーカーpropeller
シナリオ■■■■■■■■■□ 9.5
グラフィック■■■■■■■■■ 9
キャラクター■■■■■■■■■■ 10
音楽■■■■■■■■ 8
声優陣■■■■■■■■■ 9
総合【S】 90点

漢 -OTOKO-

なんとなく長いことエロゲから離れていた僕を、一気にこの世界に引き戻した張本人(帳本作?)です。どの角度から見ても高次元でまとまった見事なゲームで、一気にプレイし終わってしまいました。

【シナリオ】
さて、泣きあり笑いあり燃えあり萌えありの伝奇モノとくれば面白くないはずがないわけですよ。シナリオはpropeller所属の東出祐一郎さん、メインライターとしての本格デビューは本作が初めてとのことですが、かなりの実力派です。虚淵さんや鋼屋ジンさんなど、ハードボイルド路線が強いニトロプラスの影響をおもいっきり受けている感じがします。男キャラがとにかくかっこよく、渋い。加えて荒川工さん的な笑いの取り方も随所に見られ、「ちょっと**ぽいね」と言われがちですが、それもここまで完成度をあげればむしろ高レベルなオリジナリティを感じるってなもんです。

第二次世界大戦後、通常の人間では持ち得ない能力を持つ者が世界中に現出するようになります。この能力は政府から病気として認定され、罹患者たちは、人間でありながら妖怪、と蔑み恐れられ「人妖」の呼称が定着します。

主人公の武部涼一は、幼少から離島の人妖隔離施設で暮らしているのですが、とある事件をきっかけに、「すず」という謎の少女と二人で脱走を計ります。すずの不思議な能力で脱走を成功させた後、人妖が人口の大半を占める「神沢市」に名を変え潜り込むことに成功する二人。そこで憧れの対象だった普通の学園生活と仲間を手に入れ幸せに浸るのもつかの間、二人をターゲットにした政府の追従が始まります。ようやく手に入れた幸せと周りの仲間を守るため、彼らの戦いが始まる… コレは燃えるぜ!


「学園青春恋愛伝奇AVG」とのことですが、本編前半は大体が学園生活に重きが置かれているところもあり、序盤はほのぼのとしています。当たり前の生活に憧れていた涼一もとい双七君が何気ない場面にいちいち感動しているところも、今までの彼の境遇を考えると微笑ましくなってしまいます。

また本作「あやかしびと」、仲間ゲーでもありまして、その手の設定が大好物なワタクシにとっては、双七が生徒会に入るための根回しをしてくれている愁厳や、最初から訳隔てなく接してくれる刑二郎や、二人を信じて受け入れてくれようとする狩人のシーンなどはグッとくるわけで。はじめて見つけた仲間たちのために戦うこと、これが双七君のひとつの行動理念になっていくのは気持ちよいですね。

まず神沢市における本編に入るまでに長めのプロローグがあるのですが、ここのシナリオがとーにーかーくーウマイ!人妖であるという設定と、人間の協力者「おっちゃん」を巧みに使った感動的なひとシナリオが既にここで展開されます。掴みはバッチリです。さらに学園編序盤、生徒会に入るところから、神沢市のボス八咫鴉と側近鴉天狗に出会うあたりまでが共通パート、体験版も多分このあたりまでです。なんとまぁ良いところで終わる体験版ですこと。

その後、学園編パートといくつかの選択肢を経て個別ルートに入っていくわけですが、攻略可能キャラは生徒会メンバーの一乃谷刀子、ロシアからの留学生トーニャ、隔離施設時代のお姉さんであり現在は人妖追跡機関「ドミニオン」の隊長である飯塚薫、そして3人攻略後にすずルートです。

刀子ルートは兄である愁厳に萌え、トーニャルートはやはり兄であるウラジミールに萌え、薫ルートは虎太郎先生に萌えまくります。そして九鬼先生と光念兄弟にも全ルート通して萌えっぱなしです。…はっ、すべて男キャラぢゃないか!!


一番良かったのは刀子ルートですかね。九尾狐を中心にドミニオンが脇から絡んだ展開は、シナリオバランス的に最もオーソドックスでしたし、キャラもよく生きていました。九尾に体を乗っ取られた双七君のピンチを、師である九鬼先生と恋人の刀子が救う展開もよかったですね。しっかし見せ場は主人公双七よりも圧倒的に一乃谷愁厳でしたねー。一乃谷兄妹の人妖能力は「牛鬼」、彼らはひとつの体をふたりで共有しています。どちらかが現出している時、どちらかは精神の奥に隠れています。それが最後の泣き所の伏線になってくるのは想像に難くないのですが、その場面で見せられる兄妹の絆と愁厳の優しさには号泣もんです。


トーニャルートはロシアサイドが話の中心になってくるため、他ルートとは少し毛色が違い、九尾だドミニオンだってのが完全に脇役として押しやられます。まぁそれはそれで、こちらも盛り上がりは抜群だったので良しでしょう。とにかくトーニャの小悪魔的性格に萌えますよ。また山場であるチェルノボルグとの学校での殺し合いシーンは、Nitro+「phantom」での学校戦闘シーンからの影響をモロに受けています。オマージュですね。ただそれをよく咀嚼したうえで、あやかしびと設定でうまくいかしていますね。愁厳かっちょええ!!そしてオタク兄貴のウラジミールに泣かされまくること間違いナシ。ぬあぁぁぁぁ、刮目せよ!!


薫ルートは、正直「虎太郎ルート」と呼んだ方がいいような気がします。他ルートでは、その圧倒的な強さからジョーカー的立ち位置であまり物語に食い込んでこない彼ですが、本ルートでは縦横無尽に駆け回り活躍しまくります。なんせモンスター化した九鬼先生すら彼が倒しますから、いったい主人公は誰なのか疑いたくなります。そしてこのルート、光念兄弟が実に熱い。燃え燃えの薫VS輝義、そして一兵衛の死に様は敵ながらあっぱれ。


すずルートはラストのゴジラみたいのは規模でかすぎだろと思いましたが…うしおととらの最終決戦のようで…。途中の、生徒会全員が協力してドミニオンを追撃するシーンはめちゃくちゃ面白かったんですけどね~。
本来このルートがTRUEなのかもしれませんが、他3ルートの方がまとまりがよいですね。他ルートでもしっかり問題は解決されますので、どれをTRUEとするかはユーザー次第と捉えて良いのではないでしょうか。



【グラフィック】
キャラ絵は中央東口さん。ニトロプラスの元社員さんで、「沙耶の唄」や「ヴェドゴニア」の方ですね。取り立ててうまい!と感じるわけでもないのですが、他の原画家さんと違ってキャラをかわいく描こうとするのではなく、かっこよく渋く描こうとする方なので妙に印象に残ります。入社するまでは男や化け物の絵ばかり描いていたため、ニトロ入社後に「女の子描いて」と言われて頑張ったという裏話もあるようです。

立ち絵も豊富ですし、fateばりの画面効果も素晴らしいです。十分ですね。



【キャラクター】
いいです。すばらしいです。敵味方総じて魅力あります。熱血漢で涙もろい双七も悪くないのですが、脇役たちがあまりにも熱すぎて霞んでしまいます。ヒロインたちも十分すぎるほどに魅力的なのですが、男たちがあまりにも熱すぎて霞んでしまいます

茨の道を歩き続ける九鬼先生、圧倒的に強い虎太郎先生、寡黙で仲間思いの愁厳、温かな日常の象徴である刑二朗、お笑い要員でありながらだからこそ凄まじいまでの見せ場があるウラジミールと狩人、男気を見せる光念兄弟、蔑まれながらも己の道を誤らない比良賀…。熱いぜ!

それと、九鬼先生を除いてほとんどが人外の者なんですが、皆何かしらの妖怪名が設定として付随しているのが良いですね。牛鬼だのだいだらぼっちだの七人ミサキだのぬっへっほふだの…妖怪図鑑が大好きで狂ったように読んでいた幼少の頃を思い出しました。九尾の狐はもちろんのこと、八咫鴉だ鴉天狗だと有名な妖怪が出てくるのも最高っす。

そして豪華声優陣の演技が見事ですね~。表の世界で活躍されている方たちばかりで、聞いたことのある声がバンバン飛び交います。主人公にも声が当てられているってのもいいですね。



【音楽】
曲のタイトルがすべて妖怪名になっているのが面白い。その中でも「五位鷺」が圧倒的に光っています。泣かせどころやしんみりとした場面で必ず流れてくる、かなり泣けるBGMです。序盤、おっちゃんの記憶を消して別れる場面で流れてきたときはプロローグだというに号泣でした。他に泣かせ系BGMがないため、「五位鷺」を多用しすぎているきらいはありますけどね。

OP「虚空のシズク」、男性ボーカルはこの手のゲームでは非常に珍しいですね。疾走感あるハードロック調でインパクトはあります。かといって良いかといえば、取り立てて歌がうまいわけでもなく(笑)


と、いうわけで「あやかしびと」でございました。
S評価つけちゃいます。ホントおもしろかった。


関連レビュー: Bullet Butlers
関連レビュー: クロノベルト

  

テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

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