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Angel Beats! 総括
Angel Beats! 総括 

「1クールアニメとしては…、しかし作品としては名作」


良くも悪くも最後まで話題作でしたね。信者/アンチ両派閥を全編に渡って取り込み続け、さらに音楽などの他メディア展開でも良い結果を残したことを考えると、少なくとも商業的な意味では大成功であったと言えるでしょう。思えば「麻枝准、再始動」とのキャッチコピーをもって放映の1,2年前からkeyHP上で情報が少しずつ公開されていった本作、脚本が麻枝准さん、原画は Na-Gaさんというkey最強布陣、大御所ANIPLEX企画、瀬戸の花嫁の岸誠二監督、こだわりをみせる音楽面…と、放映開始まで本当に楽しみで仕方が無かったのは僕だけではないはずです。


ですが、脚本担当の麻枝さんはやっぱり「ゲーム」のシナリオライターでした。そもそもゲームというものはテキスト総量が圧倒的に多いため、いかようにも構成を膨らませることが出来ます。また、各々ヒロインのルートごとに別のシナリオが存在し、時に互いに補完しあうスタイルを持ちます。そういった多角総合的にシナリオを作っていくスタイルに慣れたライターが、1話30分限定+7日間のブランク、という制限を受けるアニメの全脚本を担当するというのは、そもそも畑違いだった感は否めません。

実際、Angel Beats! は設定説明、シナリオボリューム、登場人物すべてが非常にゲーム的であったと共に、とても1クールアニメにおさまる規模感ではなく、そもそもの部分でキャパオーバーしていました。特にキャラの掘り下げは本当にもったいなかったとしか言いようがなく、あれだけキャラが立っていたメンバーひとりひとりにしっかり焦点が当たり、キャラ同士の関係性やエピソードがもっと見られ、各々の最後の消失までしっかり描かれる時間が与えられていたならば、最終回ラストのエンドロールなんて涙が溢れて止まらなかったことでしょう。

麻枝准さんの脚本全面担当というのが本作の売りではあったと思うのですが、ゲームライターである彼のシナリオと、アニメとしての現実的なシナリオ、ここを調整するクッション役が存在、機能し、且つ2クールにまたがる尺が与えられていたならば、前評判通りの伝説作品になったのではと思っています。



どなたかのブログに書かれていたのですが、Angel Beats! は、設定的に本当はもっともっと大きな"ゲーム"作品なのだ。そして今回のアニメ放映では、「立花奏」ルートを一本プレイしたにすぎない。だからこのルートだと設定などには細かく言及されないし、ゆりや戦線メンバーも脇役的な扱いになっているのだろう、と。

これは物凄くストンと来ました。なるほど、そのとおりです。本当は他にもゆりルートや椎名ルート、ガルデモメンバーのルートなどもあり、それらのシナリオで互いのルートを補完し、最終的にコンプリートしたときに最高の感動が待っている、と言われれば凄く納得できてしまいそうな作品ですよね。やっぱり本作ゲーム化してほしいですねえ。



好みこそあれど、KANON、AIR、CLANNAD、リトルバスターズ……と超人気作を次々と生み出した麻枝准さん自体はやっぱり凄いですよね。ですが、彼はもともと緻密なフラグを立てて回収していくタイプではなく、「奇跡」「絆」という力技で感動させる類のライターです。keyのゲームをプレイしている者であれば、ABアンチ派閥が言及しているような世界観の説明や整合性のしっかり取れたシナリオといったものを彼に対してそこまで期待しませんし、多少力技になったとしても、それに値するだけの感動や演出があればいいと思っていました。そしてそういった意味では、先が気になる物語と綺麗に連動した作中音楽や、動きのある作画、独特の採光の効果……といったグッとこさせるための演出面の絡みは最高クラスで、ライブシーンや戦闘シーンの派手さ、ユイ消失回や最終回ラスト、エンドロールの情景の演出は本当に素晴らしいものがあり、制作陣営の地力を見た気がします。


終わってみれば、3話の岩沢消失時から分かっていた、満足したら成仏する、という設定を最後の最後まで追いかけていたわけですが、原作ありきの昨今のアニメと違って、オリジナルものは誰も展開を知らないのがいいですね。特に本作は、設定が特殊で先があまりにも見えない展開だったので、毎週毎週あらゆる場所で展開予想や伏線考察などがされ盛り上がっていました。最後も、尺の問題とはいえ、多くは語られないまま視聴者に想像を委ねる余地を大きく残し幕を閉じましたが、他メディアでの別展開があれば嬉しいですし、個人の二次創作なども多く作られそうな気がしますね。



ちなみに僕は、信者/アンチどちらかでいえば圧倒的に信者サイドでした。

まあ正直なところ、突っ込みどころは上げ出せばキリがありませんし、もったいないところもやはり上げ出せばキリがありません。アニメの完成度としてはどうなの、と思います。ですが、個々のキャラクターはよく立っていましたし、挿絵や台詞、音楽といったこと演出面において震えるような場面がいくつかあったのも確かです。物語において、伏線消化やストーリー性などの「線」といいますか、「流れ」の美しさこそが完成度に重要であることは間違いありません。ですが、本作のように特定の場面のシナリオや演出という「点」が神がかっていたことも、この作品においては事実だと思うのです。学園モノ、仲間モノのドタバタ劇が個人的に好きだということもありますかね。


そういった意味では、本作はアニメという形をとったがゆえに賛否両論を生んだといえましょう。「せめて2クールあったら」「これがゲームだったら」……と、まぁたらればは野暮なのでやめましょう。

Angel Beats! という作品自体は、誰がなんといおうと、非常に良い作品であったと僕は声を大にして言いたいのです。

テーマ:Angel Beats! - ジャンル:アニメ・コミック

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