2ntブログ
エロゲ レビュー ブログ
【コンチェルトノート】
コンチェルトノート



メーカーあっぷりけ
シナリオ■■■■■■■■ 8
グラフィック■■■■■■■□ 7.5
キャラクター■■■■■■■■ 8
音楽■■■■■■■□ 7.5
ビギナー向け■■■■■■■■■ 9
総合【B+】 77点

信頼が幸運を掴む

この作品、僕はまったくもってノーチェックでしたよ。ニコ動の2008年エロゲランキングで4位だったのを受けてプレイを決めました。初めてプレイしたメーカーさんですが、あかべぇ系列なんですね、システムや塗り、背景がモロあかべぇで雰囲気が同じですので見て一発でわかります。

【シナリオ】
あらすじ。身寄りも所持金もなく、普通に生活をしているだけで様々な不運に見舞われる主人公、倉上進矢。ある日、絡まれていた同級生を救うことで長期入院を余儀なくされ、奨学生の身であった彼は結果として出席不足により学園をやめざるをえなくなります。そんな彼を救ったのはかつての幼馴染である神凪莉都、彼女が理事長を務める天都原学園に奨学生としての入学、さらに彼女の暮らす月光館への入寮を勧められます。

転校初日、不幸の最たる状況、屋上からの転落事故に見舞われる進矢と莉都。しかし通常なら即死でしかない状況の中、奇跡としかいえない助かり方をする彼らの前に、一人の人形サイズの女の子、運を司る神霊「タマ」が現れます。彼女から、「ふたりの運を利用することで助けた」「その分はこれから運を集めることで返済をしなければ死亡するほどの不幸が待っている」と、告げられる進矢。彼女に運を返済して究極の不幸を回避するため、進矢と莉都は手始めに仲間たちとボランティア部を新設し、翌週の文化祭に望みます……。



なんかつまんなそうですよね笑


正直なところ作品のHPを眺めていても、シナリオ、キャラクター共に初期設定からは引きつけられるだけの魅力を感じません。物語の導入も起伏なく入っていきますし、主人公と莉都との再会や月光館の訪問も実に簡潔で淡々としています。あかべぇ系列なため全体的に背景絵がぼんやりとしていることもあり、前もって集めた事前評価の高さがなければ僕は決してプレイすることはなかったでしょう。

ですが!! 少し読み進めていけばわかるのですが、シナリオ担当の桐月さんですか、非常にテンポよく読ませる方ですね。良い例えを出せば丸戸史明さんのような、平易で普通極まりない文章でもサクサク「読めて」しまう、そういうタイプのライターさんです。この手のライターさんはいそうでいませんので、他の作品も楽しみなところですね。


ただ、話の中核となる「運」。この要素を前面に出し、運の使用や代価、他人からの吸収等といった設定固めはしてきているものの、「運」という要素は概念としてあまりにも曖昧としすぎているため、正直イマイチとらえようのない印象が拭えない。また事前設定の割には物語内でそんなに不運を主人公がかぶっているようでもなく、かといってでは不運の描写をもっと盛り込めばよかったかというとそんな物語が別に読みたいわけでもなく、「程度」の扱いが難しい要素であったように思えます。

神霊「タマ」を用いた運の回収方法も正直微妙でした。進矢に向ける感情の強度により対象から運を吸収できる量が変わるだとか、進矢が誰かに触れれば対象から一気に運を吸い取れるだとか、「運ってなんぞや」な設定ばかりです。そもそも進矢と利都、そして彼らに対して「繋がり」の強い者、例えば莉都の専属メイドである小夜璃さんや、進矢に思いを寄せている和奏にはタマの姿が見えるというのに、会長ルートに入っても一貫して会長に見えないというのもその境界が曖昧ですしね。もっともらしく書いてはいるのですが、どうにもしっくりこないんですね。

また、各個別ルートにおいて、文化祭でソフトボールの試合や手品などで人の注目を集めることで運の返済がある程度解決するわけですが、「え、必要な運ってそれで解決しちゃう程度の量なの?」と感じるのも正直否めませんでした。


……と、最初に一気に難点を書きましたが、ライターの読ませる力量が高く、さくさく読み進めることが出来ますので問題ありません。とはいえ個別ルートは、莉都ルート以外は正直詰めが甘い

和奏ルート。熱の入れ具合が違うソフトボール部員たちとの溝を埋めるルート。タマだの運だの、って要素があまり作用せず、存在感の薄いルートでした。そして、やる気がないと思われていたソフトボール部の部長たちは結局しっかり出来る真剣な人たちだったんかい!と。部員との軋轢自体がたいした問題ではなかったとなると、問題点は最初からさほどなかったのでは……。というか、和奏が一番空気読めてなかったんじゃ……。いやはや物事片方からしか見てないと真実は見えてこないですね。


白雪ルート。目立つ不幸体質から流れに巻き込まれていくことになる彼女、心臓移植政略による家族間の確執などけっこう重めなテーマと、白雪のぽわぽわした可愛らしさが同居するシナリオでした。しかしですね、東条家の父親たちは結局どうしようもない悪役だったの? 白雪の心臓提供者である幼馴染の死亡事故の真相はどうなの? なんか大きなドンデン返しがきそうな雰囲気もあったのですが、結局それもなく表立った説明のみで終わってしまった書き込みの浅さが残念なところですかね。


星華ルート。パワーと人望で引っ張るタイプの生徒会長姉御肌キャラ、といったところでしょうか。ありがちキャラながらもかなり立ってますね。唯一タマを認識できないヒロインですから、根幹の設定がさほど生きることもなく、どちらかというとキャラが良いのでそこを楽しむルート、の意味合いの方が強かったように思えます。女の子同士の格闘描写が山場ってのもどうにも読み手的には盛り上がらずだったかなあ。


小夜璃ルート。莉都のメイドであり、幼少児の主人公と知り合いだったのだろうなあ…という伏線が序盤に提示されますね。まあ実際そのとおりで、最終的には、進矢と莉都に遠慮して否定していただけの小夜璃を解きほぐして結ばれてハッピーエンドです。


そして莉都ルートを残すのみとなります。莉都のぶっきら棒で空気の読めないながらもなぜか愛らしいキャラは、プレイすればするほど魅力を増しますね。莉都は最後に、との情報があったため我慢しましたが、正直他のヒロインを攻略しながらも、莉都ルートが非常に楽しみでした。

このルートは、タマや神凪にまつわる伏線を回収する最も大きいルートであるとともに、サブ男性キャラである陽太や上杉、担任の深弥先生などの脇役たちも皆、月光館に転がり込んでくるというこれまでにはない良設定で進むルートでした。さらに言うと、非常に暴力的な描写で読み手を引きこむ幸御魂の記憶をたどる夢のシーンで陽太、上杉、クラウスを主要メンバーに選んだり、一連の真相を彼らに打ち明け、彼らを話の中枢に引き込んでいく流れも個人的に上がりました。サブの男性キャラって、いい働きをしていても真相においては蚊帳の外ってケースが多いので、個人的にはその流れは大好きなんです。


本ルート、思っていたよりも壮大な仕掛けが提示されるルートで、古来より人身御供で人為的に地を平定していた神凪一族が儀式を行わなくなったことにより、その反動で街の抱えてきた歪みが解放され崩壊の一途をたどりつつある、というダイナミックな展開は読み手を引きつけるものがあり、さすがに終盤の盛り上げは高い評価を得ているだけのことはあるなと思いました。ラスト付近で、深弥先生や南条も話に深く関わらせる展開、キャラ総出の全体的な展開は非常に面白かった。

神凪家があっさり崩壊する様や、莉都が終盤あまり活躍しない点など、もったいない点はあったにせよ、やはり莉都ルートが頭ひとつもふたつも抜けていましたね

さらに、クライマックスのタマとの別れのシーンは、あかべぇお得意の演出といった感じがしました。やってくれますよね、あのタイミングで歌付曲「輝いたまま」を流してくるとはね。


しかし、あかべぇ系列の暁WORKSから同年に発売された「るいは智を呼ぶ」も、不幸を仲間たちと打破する話でしたが、なんか関係あるんですかね? また、かわしまりのさんが演じるマイペースなメインヒロインルートが他ルートを圧倒する出来、というのも同年のどこかで聞いた話ですね笑。



【グラフィック】
原画はオダワラハコネさん。立ち絵より一枚絵のほうがはるかに良い絵が多いですね。正直立ち絵はあまり良くなく、右を向いたときの絵が総じてバランス悪いなどの難があるのですが、一枚絵になると途端に生きる絵になります。あとあかべぇ系列はやっぱり背景が弱いかなあ。

それから、定番の紙芝居ものゲームにしては、タマを中心として、非常に効果的に立ち絵が動きますね。肩に乗ったり動き回ったりするタマや、キャラに高低差を出して立っている人座っている人を表現したり、キスする時に顔にフォーカスインしたりと、出来る範囲での動きを表現している努力は評価できます。

フローチャートのシステムも個人的に好きですね。でもこれですと、セーブシステムいらないんじゃないかと思いますが。


【キャラクター】
どのヒロインもありふれた設定ではありますが、声優さんの力が大きかったこともあり、総じて魅力的に描かれています。全ヒロイン、各声優さんのいい部分がキャラの特長と相乗で高め合っている、そんな印象を受けました。でも特に莉都だなぁ、やっぱり。

主人公は、倉上進矢。凄くいいですね、かなり気に入りました。言動がすこぶるカッコ良い。要所要所でとる行動や、堂々とした態度、ギャグ、シリアス両輪で機能するセリフ、主人公をかっこよく書けるライターさんの作品は面白くなる傾向にありますが、本作もまた例外ではありません。

そして言及しておきたい点として、莉都と進矢の関係の描き方がまたいいんです。彼らは幼馴染というには過ごした時間は少ないですし性格もだいぶ違います。ですが、幼少時の一年間に培った思い出と、偶発的な相性の良さ、ここから発展したお互いに対する絶対的な信頼関係と理解の深さは実に見事に描けています。どんな窮地にあってもお互いに対する考えが全くブレないのが素晴らしい。他ヒロインには悪いですが、この二人はやっぱりセットで見てしまいますねー。

それからクラスメイトの陽太、上杉、転校生のクラウスの男性キャラ3人も、ほどよく主人公達と絡みがあり良いと思います。実に気持ちの良い仲間、って感じに描かれていて好印象です。ま、キャラクターは全体的に温かくて良いですね。やっぱ学園ものはこういう温かさがないとな。


【音声】
音楽的にはOP「コンチェルトノート」が良曲で、更にそれをアレンジしたピアノver.とオーケストラver.が印象に残っています。特にオーケストラ ver.だな。また通常シーンで流れる音楽は平易なものですが、プレイし終えて音楽を改めて聞きなおしてみると、なにげに決めどころの熱いシーンで流れる曲のバリエーションが多いんですよね、実は。「コンチェルトノート」もそうですし、「たとえ1人でも」と「仲間がいるなら」、「必ず助けるから  Ver1、2」など、同じ曲で2~3パターン、アレンジを変えて用意している類のBGMがいくつかあって、これは凄く良いですね。


以上、コンチェルトノートでした。
物語や設定も少し似ていますが、PULLTOPの「ゆのはな」をプレイしたときを思い出しました。読みやすシナリオに、全体的に活躍するキャラクターたち、程よいサブヒロインルートと伏線回収する起伏の大きいメインヒロインルート、後を引く余韻。エロゲ初心者の方にやってほしい作品です。



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

コメント
コメント
コメントの投稿
URL:
本文:
パスワード:
非公開コメント: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
トラックバック URL
トラックバック