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エロゲ レビュー ブログ
【スマガ】
スマガ



メーカーNitro+
シナリオ■■■■■■■■□ 8.5
グラフィック■■■■■■■■■■ 10
キャラクター■■■■■■■■ 8
音楽■■■■■■■■■■ 10
ポップ■■■■■■■■■■ 10
総合【A+】 89点

オシャレ!ポップ!リベンジ!

なんとポップでオシャレな作品なのでしょう。本来のNitro+とは全く違う路線ですが、その作品細部に渡るまで妥協無しの高クオリティを叩きつけてくる姿勢というものが、ニトロお得意のハードボイルド路線よりも、他のエロゲーと同じようなノリの本作をプレイすることで余計際立って見えました。

何か書き終えて読んでみると、ほとんどがネタバレになっていましたので、本レビュー伏字なしでいきます。これからプレイ予定の人は見ない方がいいかと思われます。

【シナリオ】
舞台は伊都夏市、この街は、空から落ちてくる原因不明の巨大悪魔(ゾディアック)とそれを打破する魔女(エトワール)の戦場となっている街。冒頭、主人公が何故か空から落下しているところから始まります。本人が記憶喪失であるために原因は不明、わけもわからぬままに地面への激突を待つ中、3人のエトワールが現れます。主人公のありえない登場の仕方にとまどうエトワールたち、しかし彼女らがゾディアックと対決している中、時間及ばず主人公は地面に激突死してしまいます。

目が覚めるとそこは天国、主人公の前に幼女の姿をした神様が現れます。主人公のことを「うんこマン」と呼ぶ下ネタ好きの神様は、彼が望むならば生き返らせてくれることを約束します。死の際、世界を背負って悪魔と戦い続けるエトワールたち、とりわけ前世で自分をかばい共に死んだ魔女スピカのことが離れないうんこマン。彼女と他エトワールを救う決意をした彼は、人生リベンジを神様に告げます。

と、いうわけで冒頭から一気に引きこみますね。この話、完全無欠のハッピーエンドを願ううんこマンの諦めの悪さが高じて凄まじく長く、また力の入ったシナリオ群となっております。シナリオ担当は下倉バイオさん、ニトロプラスの新しい柱になることは間違いありません。彼の魂の叫びが感じられる渾身作でした。

人生リベンジの前提は、一番直近で目を覚ましたところからスタートする、重要な選択を迫られる場面で記憶が甦る、この二点。時には失敗してゾディアックに殺され、時にはゾディアックに世界を滅ぼされ、うんこマンはこの条件下で繰り返し死んでは生き返り続け、最良の未来をつかみ取るために努力を重ねます。


まずはスピカ編「SHE MAY GO」。冒頭でスピカを救うことを決意したうんこマンですから、本ルートはスピカをなんとか救い近づくためにあれこれ試行錯誤するルートとなります。「超人じゃないから世界は救えない。でもおまえの涙くらい、拭くことはできると思うんだ」と告げるうんこマンは超かっこよかったですね。直後のスピカ泣き顔のCGもガハハグッドだー。うんこマンのいいところは、決して自分が世界を救おうとしないところ、彼は超人でも何でもないので、自分のできる範囲でエトワールを救いたいと考えているのですね。最後の戦いを終え死に行くスピカを受け止め、名曲アイノコトバに流れる展開は見事。セカイに絶望している彼女を支え続け、彼女の満足いく物語を受け止め、そして共に死に行く…本作全体の中で最も儚く感動的なルートでした。正直、すべてのリベンジの中で物語として綺麗にまとまっているのは一発目の本ルートだったと思います。

ガーネット編「SAD MAD GOOD-BYE」、鬱々としたルートでした。スピカを救うためにリベンジするうんこマンですが、節々の行動の違いにより運命が変わり、スピカは早々に戦死してしまうあたりが悲しかった。この世界の仕組みであるアルマゲストの秘密が明かされる本ルート、それはエトワールひとりの世界観が舞台世界を形作るという超設定。前世と違い本ルートはスピカではなくガーネットがアルマゲストになっているために違う展開を成しているという並行世界の作り方は見事。結局世界はどうでもよくて、一人の愛する人がいればいいと思っている彼女の世界観が独自の世界を作ってしまいますが、それが破綻してしまう物語でした。

ミラ編「SHOOT THE MIRACLE GOAL」、ハッピーエンドルートとなります。世界の根幹が提示されるルートでもあり、ゾディアック本体を叩くために宇宙の果てへ旅立ったりと無駄に壮大なルートです。と、いうかミラはいいですね。僕はロリじゃないですが、3魔女のうちで一番人間的に出来ていて、皆の幸せを願っていて、優しいのが彼女です。主人公がループし続けること、すなわち皆の行動を知りつつ行動していることに罪悪感を感じ諦めそうになった時、彼を抱きしめ「ヒーローに秘密はつきもの」「つらいけどがんばろう」と諭すシーンにはグッときました。

しかし何周も何周も死んでは立ち上がるうんこマンを見ていると、「全員幸せの結末を迎えたい」という彼の痛烈な思いを応援している僕自身に気付きます。何度も失敗しては蘇るある種の鬱陶しさが、徐々に努力と執念への共感に変わってきます。ですので、ミラの回でラスト、幸せな結末を迎えた時の「人生リベンジ、完了だろ?」、このうんこマンのセリフには熱くこみ上げるものがありました。

正直なところ、アルマゲストの設定とそれにまつわる物語の進め方には強引だなと思う部分もそれなりにあり、全体を理解し切りながら読み進めるには少しライターよがりなところがあるっちゃあります。ですが、ご都合主義上等で突っ走っている姿勢には爽快感すら覚えますし、「あの時よくわからなかった」という部分も、その後の誰かしらの考察や独白でちゃんと説明補完されていて、最後まで読めばなんとかわかって読み終えられるところは、よくサポートしきったもんだと思います。

このミラルートを以て、皆が一応幸せになる大団円ハーレムルートを迎え、とある少女が強い願いを込めて具現化した世界が本作であるという、伊都夏市設定の仕組みもわかります。アリデッドがアルマゲストを後輩魔女に譲っていることから、創られ管轄されていたこの世界も、独立した世界としてしっかり神様陣の手を離れ回り出しています。本来ならばここで終わりになるはずでしょう。

しかし、一度EDを迎えて始まる、さらなるハッピーエンドを目指しての別視点での物語。「まだあるんかい!」とうれしい悲鳴です。うんこマンが、一度幸せな結末を迎え物語の視聴者側にまわったことにより、新たに物語に挑戦する別のうんこマンからは声を聞くことができます。主人公にもCVがついていたのに何故かずっと無声だったことがここで初めて明らかになりますよね。基本的には同じ物語を追っていくことになるのですが、それまでの主人公が神側の視点に移っているため、ところどころで新しい主人公にアドバイスを送ることができます。これで世界が少し変化していくのですね。


さて、新スピカ編「SAKURA MAU GAKUEN」、いいタイトルです。彼女の世界への諦念を、信じる心でなんとか覆すルートです。二郎が作ったミラのロボットにスピカを会わせ、彼女の世界観を打破する流れはシナリオ勝ちだったかと思います。死んだと聞かされ続けてきたエトワールたちが実は生きていたという価値観をスピカが持つ、という流れですね。そしてラスト、気休めではなく本当に死んでいなかったエトワールたち…ミラも結局生きていて復帰しますしガーネットもゾディアックから奪還します。あれだけ物語山場の仕掛けを担ったミラが実は生きていたところはちょっと冷めましたが笑、未来に絶望していることがスピカ編の共通設定で、前主人公のスピカ編もその設定に準じた儚いラストでしたので、主人公のがんばりでそのスピカの世界観を覆しStarMineGirlハッピーエンド、たまらないですね!!

新ミラ編「SEE THE MAGICAL GOLD-STAR」、若干強引なサブタイトルです笑。学園祭の演劇を通して成長するミラ、劇の主役を務めることで距離を縮める樋ヶとパイオツニアなど、学園モノの体が最も出ているのが本ルートでした。ラストも友情部分が前面に押し出されていたところが僕好みです。終盤、ゾディアック本体をたたくために宇宙に出なければならない彼女に会うことを恐怖する中、日下部と沖のアシストを受けミラの言葉を聞く主人公。心を変えるのはたった一言の言葉で足りる。走り出すうんこマンに熱くなったのは僕だけじゃないでしょう。そして、時空を超えることにより1万年の彼方に行ってしまうミラに追いつくため、時空理論を二郎と共に学習しては一日の終わりに自殺をし、何千回も一日を繰り返し理論と記憶を蓄積し続けていたうんこマンの努力にも熱い涙がほとばしります。

新聞部部長の日下部ルート、「SWEET MEMORY GOES ON」。彼女は神出鬼没の忍者で妄想暴走キャラであり、どのルートでも変人サブキャラとして大活躍するので、普通の少女のように恋をするこのルートのかわいさは反則ものです。人生を繰り返しているうんこマンのからくりを知ることで、その存在に恐怖してしまう彼女。つまり、初々しく結ばれた二人は、うんこマンが何度もいろんな可能性を試して一緒になったのではないか、今結ばれている自分は彼にとって何人目なのだろうという恐怖ですね。これはある意味当然の感情だと思いますが、グレンツェンをふたりで出ることで記憶喪失になって改めて結ばれよう、というビターなラストでした。出る直前で物語が終わるのがいいですね。

しかし…妄想で鬼太郎化する彼女は、声優さんの怪演も手伝って凄まじきキャラクターを放っていますねぇ。


新ガーネットルート「SUPER MIND GAME」、うんこマン超がんばりました。新ミラ編と同様うんこマンが何千回もルートを繰り返し試み続けることで奇跡を起こす流れを追っています。ミラ編は、トリックを鮮やかに明かす「仕掛け」としての役割でしたが、二番煎じになってしまうガーネット編では、それを用いてじっくり物語を見せる「文章」としての役割を持たせている点にシナリオ作り込みの丁寧さを感じます。なにもできないのに走り続けゾディアックに向かっていく熱さ、幸せをつかんだガーネットのために神様に無理と言われながらも奇跡を起こす決意をする熱さ、死んでは学習し徐々に状況を進展させていく熱さ、正直ここまでループし頑張りを見せつけられると、主人公への感情移入度は相当数まで上がっていますので、fate士郎のような鼻につく「自己満足自己犠牲」みたいな変な印象も持ちません。

そしてヒロインの最後を飾る沖姫々ルート「SARABA MITSU GETSU」、正直なところ無乳ながら笑、他ヒロイン以上の魅力を持ち合わせている彼女(張れるのはスピカくらい)、沖ルートがなかったらスマガの評価は多少なりとも下がっていたことは否めないんで、待ってましたの展開でした。沖は一番最初のループから、真摯でまっすぐで、どのルートでもうんこマンの誠実さや反則設定を信じてくれるナイスヒロインですからね。その沖と互いに支え合い、かりそめの世界である舞台を打破するルートです。途中、沖の「諦めるな」には鳥肌。なんでここだけセリフが画面中央に出るのよ。ひぐらしの赤坂登場を思い出してしまうではないですか。そしてふたりでともにアリデッドの世界観をぶち壊すラストシーンは痛快でした。

本ルートは、それまで少しずつ明かされてきた世界の根幹を、物語の主軸に沿えて全てが明かされるルートでもあります。もちろん1周目のミラルートでざっくり語られるわけではありますが、それがより細かく正式に明かされるのが沖ルートです。現実世界が隕石衝突で崩壊する寸前、川嶋有里という一人の少女が大好きな先輩への告白を決意し呼び出したものの、その緊張から永遠に終わりのない世界を願ったことでこの舞台が形成されました。そして、このセカイを続けたいと思う一方で、無意識のうちにこのセカイを閉じなければならないという葛藤の果てに生まれたのがゾディアックです。さらに、その有里のセカイでの彼女自身の具現化が初代魔女のアリデッドというわけですね。


そしてラストのTRUEエンド「STAR MINE GIRL」長かった…物語も長かったですが、ここまで書いたレビューも長かった。死んでは生き返り、特定ヒロインと幸せな結末をつかみ、その度に新たな世界を紡ぎ、ついに世界の根幹にいるアリデッドを救って真の意味で全員が幸せになるハッピーエンドです。

ここはすぐピンと来ますが、このセカイを作った少女有里のあこがれの「先輩」がズバリうんこマンですね。有里と先輩が結ばれるだけでなく、現実世界を終末に陥れる隕石を破壊して本当の本当のハッピーエンドを迎えるラスト、各々の幸せをつかんだこれまでのルートも、並行しているパラレルワールドとして話にしっかり関わってきているところが良いですね。すべての並行世界における4エトワールが魔法を込めることにより、根幹世界の少女と先輩(うんこマン)のハッピーエンド―奇跡を起こす。ほんっとうに全員が全員幸せを掴みます。ご都合主義ではありますが、その爽快感たるやそんなもん関係ねぇってなもんですよ。奇跡を起こすのは魔法、信じる力だ!!
そしてエンドロールもまたポップでオシャレ。長かった…長かったよ。。。


ちなみに、すべて「SMG」にまつわるサブタイトルがついているのが良かったですね。ミラの「Shoot the Miracle Goal」はこれをもとにストーリーを組み立てたんじゃないかと勘繰ってしまうくらいに図ったようなタイトルでした。

うおー、めちゃくちゃ長くなってしまいました!


【グラフィック】
一番言及しておきたいのは、作品の構図、メニュー画面やコンフィグ画面、エフェクトなどにおけるポップ感です。正直今までプレイしたエロゲの中で最もサブカル的なツボというか洗練され具合を感じました。全体的に、大胆にホワイトを基調として用い、赤黄青で味付けしたデザインのポップさは非常にセンス溢れるものでした。

演出やエフェクトも細部までこだわりを感じ、スタッフの血の努力を感じます。どのエロゲにもある作品ムービーやシナリオにあわせたキャラの動きの部分も秀逸な出来ながら、ゲーム終了時のおまけ画面や早送りシーンなどキリがないくらいの独自の細かい画面演出の遊び心。

このあたりの演出面でのグラフィックは文句なしの満点レベル、過去最高峰です。

原画は津路参汰さん、総じて良い絵師さんです。CG枚数も相当数ありますし、表情差分もかなりの数、彼も気の遠くなるような仕事量であったことは間違いありません。ダメ!って人はいないと思いますが、若干絵が特徴的ですので、好みは分かれそうなところです。実は僕個人としては津路さんの絵はなんともいえないところです。いや、すごく上手な方だと思いますし、スピカとか沖とか文句なしにかわいいんと思うんですが、なんというかな、下半身とか全体的に肉感的にすぎるんだよなー。

他、背景や塗りも文句なしです。


【キャラクター】
なんといっても主人公うんこマン、彼ありきのスマガであり、彼なしには物語の盛り上がりはありえません。ガーネットのアルマゲスト効果によりトンデモ展開で悪魔になったりすることもありますが、基本的には彼はただの一般人であり、凡人がただひたすら皆の幸せを願い何度も何度も物語をリベンジし続けます。本来のニトロ路線のハードボイルドで出来る男って匂いはまったくなく、ダメなときはホントダメで、愛すべき人間臭さをもった主人公ですが、ことあきらめない一点に関しては凄まじいものがあり、何千回も人生リベンジし続けるその果てに彼がつかむラストシーンは鳥肌が止まりません。

ヒロイン勢で一番良かったのは、スピカと沖姫々。ただ、スピカのために人生リベンジを決意するきっかけの割には、スピカは後半に行くにつれ少々影が薄くなるのが寂しかったかな。ミラは、ヒロインとして、というよりキャラとしては非常に良かったですね。また、アリデッドと日下部雨火はその怪演が見事、日下部はキャラとあいまり独自路線を突っ走っていました。アリデッドは一色ヒカルさんですね、さすがのキャラづくりです。

他キャラクター、どいつもこいつもよく立っていますが、頭ひとつ抜けているのは、おっぱいに異常な執着心を燃やす宮本武。登場シーンのほとんどがギャグシーンとなります。しかし完全ギャグかと思いきやシリアスシーンでも結構いい働きをしますし、本作一番の名脇役と呼んでいいでしょう。


【音楽】
なんともレベルの高い、力の入った音楽群でした。まず、魔女3人にそれぞれテーマソングがあるのが凄い。しかもどれもいい曲なんですよ。特にスピカのテーマソングの「アイノコトバ」は大名バラード、「SHE MAY GO」のラストは非常に泣けます。これ、歌ってるの「Rio」となってますが、どうやらあの超人気AV女優のRioのようで…こんないい声してたなんて驚きです。ミラの「イデアリズム」も、サビのキャッチーさが頭に残ります。歌から入るイントロが魅力的なこれまた名曲。ガーネットの「真実の灯」はちょいスペイシーなイントロと力強いサビボーカルが印象的な曲です。3曲ともが違うタイプの曲ながらしっかり主張できています。

そしてリベンジを決め込むときに決まって流れる挿入歌が大槻ケンヂだというのが驚きです。何やってんすか、大槻さん笑

OPも名曲です。ロックの王道にして正解のスネア頭打ちのリズム、それに乗せたギターメインのアレンジときれいなメロディがバランス感バッチリ。BGMも量、質申し分なし。特に熱いシーンで流れる、同じリフをギター2本で重ねる「No.31」、日常の温かみのあるシーンで流れる「No.1」が良い。ギターストロークをうまく使った曲が歌もの、BGMともに多いのが特長です。ニトロプラスは音楽がバンド路線なので僕は凄く好きです。


以上!超長くなりましたスマガです。リトバスやG線上を抑えて、2chエロゲ版で2008年ベストゲームに選ばれたのもよくわかります。

好みはそれぞれなので評価は分かれるところでしょうが、少なくとも本作品すべての要素に妥協が一切ないどころか、むしろ他の追随を許すまじとする威勢がありありとみて取れます。ニトロプラスの次の世代のスタッフたちの、うんこマンのような努力の結晶がここにあるのだと思います。



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【fate/stay night】
fate/stay night



メーカーTYPE-MOON
シナリオ■■■■■■■■■ 9
グラフィック■■■■■■■■□ 8.5
キャラクター■■■■■■■■■ 9
音楽■■■■■■■■□ 8.5
完成度■■■■■■■■■■ 10
総合【A+】 87点

エロゲ界の金字塔

いわずとしれたTYPE-MOONの商業デビュー大ヒット作ですね。エロゲというものはターゲット層もかなり絞られるし、販売予算も微々たるものであろうこの手の企業ですから、ユーザーの口コミやサービス力がものを言う部分は非常に大きいと思います。つまり言ってしまえば「内容如何」というなかなかシビアな世界なのでしょう。そして本作、10万本出ればメガヒットと呼ばれるそんなエロゲ界において、販売本数35万本(もっと?)以上という史上最も売れたエロゲとして数々の伝説を残しました。その軌跡はPCに留まらず、テレビアニメ、小説、プレステ2、PSPから対戦アーケードまで移植される始末。PS2版「Realta Nua」ですら20万本近く出たというのは凄まじいものです。


【シナリオ】
シナリオは圧倒的支持を得ている奈須きのこさん、独特の世界観を持っています。同人時代の「月姫」、小説「空の境界」も同一世界内の出来事ですんで、彼の頭の中には、細かい設定まで全て定められた妄想世界が独立して動いているんでしょうね。

ストーリーはあまりにも細かいんでホントさわりだけ。持ち主の願いを何でも叶えるという「聖杯」をめぐり、7人の魔術師「マスター」と、彼らが契約する英霊「サーヴァント」同士で殺し合う「聖杯戦争」が数十年に一度、日本の冬木市で起こります。偶然この聖杯戦争に巻き込まれてしまった半人前の魔術師衛宮士郎は、これまた偶然か最強のサーヴァント「セイバー」と契約を交わしてしまいます。そして彼が望む望まないに関わらず聖杯戦争の大きなうねりに巻き込まれていくわけですが…。


3つのまったく違うルートが用意されており、セイバー⇒凛⇒桜ルートと順番のロックもかかっています。いろいろな謎や伏線は、ルートを追うごとに解明されていきますね。最も出来がいいのはセイバールート、最も仕掛けが鮮やかなのは凛ルート、最も好きなのは桜ルートですが、どのルートもそれぞれの色がありとても良かったです。

初期段階で数名のマスターとサーヴァントこそ出てきますが、一体誰がマスターでどんなサーヴァントがいてどんな宝具(各サーヴァントが持つ一撃必殺のマジックアイテム)が飛び出すのかドキドキしながら読み進めることになります。セイバーにしてもかわいらしいメインヒロインですが、その正体が伝説の騎士アーサー王だったことは中盤あたりまで伏せられ続けますよね。アサシンで佐々木小次郎が出てきた時なんかはかなりテンション上がりましたねー。最古の王ギルガメッシュはセイバールートでは反則だと思って萎えましたが、凛ルートだとまた違った立ち回り方で魅力がありました。

サーヴァント同士のぶつかり合いや、主人公やヒロインに巧妙に張られた伏線、敢えてここには書きませんが、その展開たるや心躍るものがあります。


セイバールート「Fate」は、作品タイトルをそのまま冠しているように、一番オーソドックスでまとまりの良いルートですね。おおまかな聖杯戦争の仕掛けと、各キャラクターの大体の立ち回り方などがこのルートで把握できます。シナリオを追うごとに明かされていく彼女の悲痛な願いと士郎君のセイバーに対する思い。あまりにも不器用なふたりが互いを想い合う関係を作り上げ、やがて大きな決断と行動を共にしていく過程は熱くさせられますよう。

また、セイバーというキャラを作りだした奈須&武内さんにお布施を捧げたい気分です。彼女は、圧倒的戦闘力を誇る戦闘シーンのかっこよさもさることながら、日常シーンでのわがままっぷりや穏やかさも非常に魅力的です。ラストシーンもかなりグッと泣けてしまうこと請け合いです。ラスト切ないですよー。


クラスメイトにして実力派魔術師の遠坂凛ルート「Unlimited Blade Works」は、とにかくキャラたちが実に熱かった。特にこのルートはアーチャーにひたすら燃えるルートですね。他のキャラたちの存在感を霞ませるが如く、アーチャーアーチャーによるアーチャーのための感動。

英霊は過去現在未来という時間軸の概念に縛られない、という設定を使った…というかわざとその設定にしたのでしょうが、アーチャーの正体には度肝を抜かれました。彼がひとつの未来の可能性において、己の信念を全うし多くの者を救い英雄になった「衛宮士郎」の英霊だとは。しかし彼は自身の願いと現実とのギャップに失望してしまっているがゆえに、ひたすら直情的に皆を救うことにこだわる現在の士郎に嫌悪を示しているんですね~。なんというスーパー設定。

そしてそんなアーチャーが凛ルートの最後で見せるあまりにも優しい笑顔は、本作中で最も感動するシーンです。あのシーンは、アーチャーがかつての自分を改めて振り返り、とある結論を得る最高のシーンですが、凛の呼び方が「遠坂」に戻ってるんすよ!


桜ルート「Heaven's feel」は他と比べるとちょい異色ですね。というのも、他ルートでは日常の象徴として描かれる桜が積極的にシナリオに関わってくるからです。それも一般人が巻き込まれちゃいましたとかってのではなく、聖杯戦争の当事者たる絡み方。桜が、調教済み、近親相姦、凛の妹、間桐の正当後継者、聖杯に取り込まれ暴走…と、他ルートからは想像もつかない暴れ方をするルートです。それから、僕らのアイドルセイバーが不遇な扱いを受けるのが本ルートの悲しいところでもあります。それでも数々の伏線が回収され、聖杯という存在がしっかり描かれ完結し切るのが本ルートなんですね。一応これがTRUE END扱いになるのだろうと思います。

そして基本的に士郎君を好きになれない僕ですが、それは彼が頑固で幼稚であるがゆえです。しかし桜編の士郎君は違う。本ルートで彼は究極の選択を迫られます。上記したように聖杯に取り込まれ暴走する桜を前にした彼が、すべての人の正義の味方になるという信念を捨て、最も大切な人――桜だけを守ると決断する部分がこのルートにおける最大の肝です。他2ルートは、彼のその信念こそが物語を形作る大事な設定であっただけに、この流れは逆に凄く良かった。


ちなみに冬木市は聖蹟桜ヶ丘と神戸の街並みがモチーフとなっていて、さらにちなみに龍洞寺は僕の地元にある寺がモチーフとなっています。どうでもいいですかそうですか。


んまぁしかし長いですよ。3シナリオすべて読み終えるのに僕は70時間くらいかかりました。テンポが良いわけでもありませんし、途中あまりのマイワールドについていけなくなってダレる場面もあるにはありますが、それでもこれだけの世界を創出し、堂々たる結果を残したというのは、エロゲ界における金字塔であると言い切ってよいでしょう。


【グラフィック】
当初、武内崇さんの絵にそれほど魅力を感じられなかったものでして、皆さんがこぞってfateのグラフィックに賛辞を送るのに疑問を感じていました。別にうまくないですしねぇ。しかし、fateの世界観を堪能してしまった今では、この絵でないと違和感を感じるようになってしまうものですから、奈須月型効果なのでしょうか。おもしろいものです。

それにしても立ち絵とエフェクトが凄いですね。画面上をところ狭しとキャラが動き回る回る。戦闘シーンの演出もエロゲですかコレは、と目を見張るものがあります。



【キャラクター】
その長くて濃いシナリオもあって、ひとりひとりにかける思い入れが当然強くなります。メインヒロイン3名の魅力は非常に強く、セイバー、凛、桜、甲乙丙つけがたい。世間的にはセイバー、凛の2トップみたいになってますが、僕はむしろ桜大好きですよ。調教済み&兄に犯されているという設定はメインを張るヒロインにしては強烈でしたが、だからゆえの物語のアンバランスさというか、士郎君の判断の真価が問われるのが桜ルートでした。

とにかくかっけーのは英霊ランサーとアーチャー。着てるものこそ正直ダサイですが、彼らの男気溢れるセリフと行動は思わず「兄貴」と呼びたくなります。それから桜編の言峰もいきなり武闘派になるので熱いですね。

さて、主人公の衛宮士郎君ですが、彼に魅力を感じられるかどうかというのは非常に重要かと。上記しましたが僕はどうーーもダメでした。努力家でもあり直情的でもありかっこいいにはいいんですが、ちょっと頭が弱いんですよね。直観力はあるのですが、思考が短絡的で、無鉄砲さと頑固さが際立っています。物語ですんで結果的には良い方に転がっていくのですが、「すべての人を救いたい」「正義の味方になりたい」という、マクロを見据えない自己犠牲はあまりスッキリしません。


おっと、ここまでイリヤと藤ねえのことを言及していませんでした。まずはロシアからの刺客マスターであるイリヤスフィール、もともと彼女には正規ルートが用意されていたようですが、結局彼女はサブヒロインになってしまいました。彼女は自身が聖杯を受ける器そのものである人造人間という設定自体が重要な伏線となっていて、なかなか幸せな結末に向かいにくいキャラクターですが、日常シーンでの純真なキャラクターと戦争時の非情なキャラクターのギャップが魅力です。

ヤクザの娘にして主人公の担任、ギャグシーンの象徴である藤ねえですが、個人的には藤ねえルートがほしかった。まぁ藤ねえにしても同級生の美綴サンなんかにしても、とてもいいキャラしていたので、聖杯戦争が激化していく中で影が薄くなっていくのは少しさみしかったです。


【音楽】
OPは幻想的な雰囲気が漂う良曲「disillusion」です。当初あまり惹かれなかったのですが、今でもしっかり頭に残っています。ムービーと相まって効果を発揮したのでしょう。BGMは及第点かな。あまり頭に残っていませんが、作品の雰囲気にはよく合っていましたし、戦闘やスピード感のあるシーンで使われている曲はどれも高揚感を煽るものでした。


と、「fate/stay night」です。シナリオを細かく追うレビューはしませんでした。まぁ18禁ゲーム界において超重要作ですので、この手のゲーム好きなら通っておかないといけない作品だと思います。そのぶっ飛んだ世界観と尺の長さから、個人的には初心者にはおすすめできないんですけどね。


関連レビュー: fate/ hollow ataraxia



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

【CROSS✝CHANNEL】
CROSS✝CHANNEL



メーカーFlyingShine
シナリオ■■■■■■■■■□ 9.5
グラフィック■■■■■■■ 7
キャラクター■■■■■■■■■ 9
音楽■■■■■■■■ 8
破滅型群像劇■■■■■■■■■ 9
総合【A+】 86点

友情は見返りを求めない

2003年発売、この作品を「俺的最高ゲーム」と豪語する人も少なくない、紛れもない名作です。その舞台設定といい、空虚で殺伐とした雰囲気といい、鬼才田中ロミオの真骨頂ともいえるその世界観と伏線の妙は目を見張るものがあります。

【シナリオ】
この作品について書こうとするならば、ネタバレに始まりネタバレに終わるようなものです。おそらく全てが伏字になってしまいますので、伏字はせずに書いていくことにします。未プレイにしてプレイ予定のある方はこの先は見ないようにしてくださいね。


FlyingShineのHP上で製品紹介を見ると、「放送部員たちの夏の青春ゲー」といった印象を抱きますが、とんでもない。本作「CROSS † CHANNEL」、すべての生物が消失してしまったパラレルワールドに迷い込んでしまうSFモノです。さらに言うと、ほとんどの登場人物が、社会で生きていくことが困難なほどに何かしらの心の障害を抱えています。そんな設定ですので、人間関係の歪みからバッドエンドにバッドエンドを重ねていくことになり、鬱ゲーとしても有名なようです。さらにさらに、このパラレルワールドは同じ一週間を延々と繰り返し続ける世界であり、ループものの代名詞でもあります。これだけのトンデモ設定を伏せたまま発売に至らせたFlyingShineの決断たるや、アホすぎます。もちろん褒めてますよ。

僕は、HPとデモムービー見たくらいで他に何の事前情報もなく、すすめられるままに本作を始めました。ですので、本当の本当に「普通の青春ゲー」だと思っていたのです。なので本作一週目ラスト以降の超展開にはハッキリ言って圧倒されました


さて、上記しましたが、社会で生きていくことが困難とされる、「適応係数」の高い生徒のみが通う群青学園が舞台です。主人公黒須太一自体も偶発的に強烈な破壊衝動を発現させる学園トップクラスの適応係数を持つ少年として描かれています。登場人物たちも一見普通なのですが、何かしらの心の不備を抱えていまして、その各々の不安定さをシナリオに非常にうまく絡ませてあります。

物語冒頭ですが、群青学園放送部は各々の心の歪みから崩壊寸前、そこで太一が一念発起し放送部全員での合宿を提案し実行するのですが、結局それも失敗に終わります。バラバラの状態で帰路につくのですが、そこに待っていたのは自分たち8人以外の生物全てが消失した世界…というのはまだ最初の段階では明らかにされません。確かに部員以外の登場人物が出てこないのですが、夏休みで学校が閑散としているはずだということや、回想シーンで多くのキャラが絡んでくることなどから、「何かおかしいな」とは思いつつもそこまで気にさせない流れは見事でした。

部活動どころではないうえにそもそも絆がほぼ切れてしまっている面々ですが、とりあえずこの非現実の中でいつもどおりの学園生活を送ることを選択します。そんな中、課題であった放送用アンテナを建てることで現実逃避をし、ひとり作業を続ける部長の宮澄見里。太一は彼女の行動を起点にひとりひとり部員の説得しを試み、皆を和解させることに成功します。そして夏休み最終日、8人での部活動を成し遂げアンテナは無事完成するのですね。「いやーえがったえがった、なかなかエエ話じゃないの」と完全に油断していたワタクシですが、最後のセリフ、ラジオ放送のDJ役を担うことになった太一の放送第一声目が、

「生きている人、いますか?」


ここで一週目のEDです。

うそーん!


そしてこの世界はここまでの一週間を延々とループしているのですね。同じような導入でまたゲームが始まるのですが、微妙に違うんですね内容が。世界の流れはちょっとしたきっかけで変わるもの、毎回毎回同じ結路をたどるわけではないということが、2,3週目でなんとなくわかってきます。週によっては、太一はバーサーカーになってしまったり、誰かと恋人になっていたり、誰かに殺されたり、自殺したり、前ループでは生きてた奴が死んでしまったり殺されたり…。そしてまた週終わりにリセットが成され、新しい一週間が始まるのです。


また、8人とは別に、ループ冒頭で必ず太一が出会う「七香」という謎の少女が少しずつ太一に助言をしてくれます。彼女が太一の母親だったという設定は正直個人的にはかなり微妙だったのですが、そのおかげで太一は町外れの祠の中に置いてある、ループし続ける毎週の状況を自分が記載しているノートを発見します。そして、祠周辺がループの影響を逃れることに気づくと同時に、自分のせいで皆をこの世界につれてきてしまったこと、自分が元の世界とこのパラレルワールドとの架け橋役になっていたことに気づくんですよね。

そこからの太一は良かったですね~。そこまではイマイチ好きになれなかった彼ですが、皆を元に戻すことを決心した後の彼の行動には大変感服致しました。


全ループの中では、美希がフォーカスされるループが一番おもしろかったですねー。彼女はのほほんとしているようで、自分のためなら他者を盾にするも捨て駒にするも全く厭わない、強烈な自己愛から高い適応係数を持っています。祠のからくりに気づいてしまった彼女は、自分が初期化されるのを恐れ、週終わりになると祠周辺に赴くことで何十週にも及ぶ回数、ひとり記憶と行動を継続させています。つまり彼女は本編何週目からかは知りませんが、とにかくすべてを"わかっている"のですね。ここは衝撃であると共に、彼女の不安の描き方と、その鮮やかな場面展開は、本作の評価をループもの最高峰に押し上げる瞬間ですね~。

物語冒頭で、美希が太一のセクハラを軽くいなす場面がありますが、そのギャグシーンですら、美希だけが成長し続けているからという伏線につながっていると考えると鳥肌もんですね。冒頭で美希と霧と三人で夕日を見るシーンがあるのですが、そこで美希が流す涙もとても意味合いの強いものとなっています。


また、自殺してしまった霧の義兄、豊の存在!彼は回想シーンにしか出てきませんが、超重要なキーパーソンです。太一が壊れた人間になるきっかけは、かつて彼と彼の親族が太一のことを延々と慰みものにし続けたこと、そして太一と、太一の超人幼馴染支倉曜子の手により彼らを皆殺しにしたこと、というあまりにも鬱すぎる闇過去があるため。命だけは助かった豊は記憶を喪失していたのですが、太一によりその記憶を呼び起こされ自殺してしまいます。

この設定に絡んだストーリー展開も非常に巧みでした。この狂った世界の中で、霧が太一に対して殺意を以って接し続けるというのもそうですし、何よりも全員を送還していく過程で、太一とふたりだけの世界を創ろうとした曜子を揺さぶる切り札への伏線もすばらしかった。彼女はループによってはメンバーを皆殺しにするくらい戦闘能力も半端ではないですし、記憶がリセットされても毎回世界の異常に気づくほど洞察力も優れています。そんなスーパーウーマンに対抗する切り札、それは「豊の一族皆殺しを実行したのはすべて太一で、彼女は何もできないままだった」という大ドンデン返しな事実。ここは、あぁ「家族計画」青葉ルートを書いた人だなぁと思いましたねー。


ラストは泣き所でしたね。ループを繰り返しながら、祠でひとりひとりを元の世界に戻していくのですが、太一からそれぞれに送られる言葉が堪らなく悲しく切ない。そして逆に、それまでアホなことばっか言っていた桜庭が唯一主人公の心情を見抜いていて「親友」だと語るシーンは一番の感動シーンでしょう。

全員を送還した太一は、世界に自分だけという静かな狂気に自分を見失いそうになるのですが、七香つまり母親の愛を感じ取ることで、世界が終わるまで放送を続ける決意を固めます…いや、なんてビターで切ないENDなのでしょう。


ただ、ラストのラスト、太一が寝ているシーンがあるのですが、この背後で鳴っているのは蝉の声。パラレルワールドではすべての生物が消失しているはずなので、彼は現世界に戻ってこれたのでは?というのが定説のようです。そしてゲーム一週目の幸せなENDも、すべてうまくいくことは決してなかったという途中の説明にそぐわないループなので、これはループ内のことではなく、その寝ている太一の希望を反映した夢なのだ、とも言われています。


とまぁ結局レビュー的というよりは、大体のあらすじを追った感想になってしまっていますが、ここまでの設定をうまく絡ませて完成させた本作、実に見事でした。



【グラフィック】
凄まじい完成度を誇るシナリオやキャラ造形に比べてしまうと、少し弱い気がします。とはいえ全体的に改めて見ると、綺麗で悪くはないんですけどね。コミカルな絵も含めて良いです。みんなマッチ棒のように線が細いから気になるのかな。

例に漏れず本作ムービーのニコ動を貼り付けておきますが、この販促ムービーではとても楽しげなポップな作品を想像してしまいます。非常によくできていますが、しかしてその内容は正反対。完全に狙ったつくりになっています。見事です。



【キャラクター】
まずは桜庭という男のセンスに脱帽です。彼が一番のお気に入りであり、最高クラスのお笑い要員です。女装した太一に恋をしてレイプしようとしたくだりや(でもこれも豊のレイプ事件への伏線になってるのかなぁ)、カレーパン好きなくせにカレーは嫌いなくだりは笑えます。中でもピーナッツ入り柿の種のくだりは尋常ではないセンスで、『ピーナッツ入り柿の種』に対して「ピーナッツはいらない」というのは『ピーナッツ入り柿の種』の尊厳を損なうものであり、それならば純正の柿の種を食え、と彼は言います。そして、「だから俺はピーナッツだけを食べるようにしている」とのたまう。なんというセンスの高さや。…のくせに彼が最後一番泣かせてくるものだからタチが悪い。


もうひとりの男友達、島友貴も良かったです。太一と桜庭のキャラがあまりにも強すぎるため隠れがちではありますが、彼のような中立的な存在は物語にはやっぱり必要ですね。まぁだからこそアンテナ壊したりする犯人が友貴だったときは衝撃なんですけど。突っ込み役で、太一と桜庭と3馬鹿と呼ばれていますが、僕は学園モノで男が馬鹿をやっている設定が凄く好きなのです。彼は宮澄里見と姉弟であり、規律遵守にこだわりすぎるため高い適応係数を持つその姉により、家族の仲を裂かれた過去を持ちます。上述のアンテナのくだりもそうですが、姉に対して大きな反抗心を持っている彼の心の糸を太一がほぐすのも、本作の見所のひとつです。


主人公の黒須太一君は最初どうも好きになれなかったんす。ノリがぶっ飛んでいてキチガイ的でどうも…でもバーサーカー化しないように、敢えてそうしている彼の背景が明らかになってくるあたりからは、「おいおい、この性格すらも伏線かよ」とむしろ好感度が反転しましたねー。


ヒロイン勢ではやっぱり美希が一番良かったですね~。ルートの盛り上がりがダントツですし、本当は凄く臆病で寂しがり屋だというのが、よくわかるからです。それなのに何十周も記憶を持ったまま絶望をループをし続けてきた彼女の孤独を考えると、やっぱり美希が一番になっちゃいますよ。

あとは太一の元カノである冬子。ツンデレ冬子はそのプライドの高さゆえメンバーの助けを拒絶し、大半のルートで餓死してしまいます。これは痛すぎる。またその反面、依存しだしたらそれが凄まじいものになるという設定、かつて太一にふられたのを覆すために切腹を図るほどです。これは痛すぎる。しかしツンデレ具合が実に良い。


【音楽】
うらびれた音楽が印象的です。本作の設定にふさわしい、どこか穏やかで空虚なBGMがうまく絡んできます。静かなものばかりなのですが、シナリオとのバランスがとてもイイ感じなんです。そして、全員を送還するシーンで流れる「Signal」、EDの「CROSSING」は非っ常ーに良いです。歌詞がモロですしね。この2曲が評価を高めていることは否めません。


と、いうわけでクロスチャンネルでした。
いや書き疲れた。




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