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【るいは智を呼ぶ】
るいは智を呼ぶ



メーカー暁WORKS
シナリオ■■■■■■■■□ 8.5
グラフィック■■■■■■■□ 7.5
キャラクター■■■■■■■■ 8
音楽■■■■■■■■ 8
絆ゲー■■■■■■■■■ 9
総合【A】 81点

矢は束ねれば折れない

とんだ伏兵がいたものです。08年は、完全にG線上、リトバスEX、スマガの頂上決戦であると予想されていましたが、暁WORKSの第二作目である本作、2008年三つ巴に楔を打ち込む見事な良作でした。

【シナリオ】
誰もが振り向く美少女にて優等生、和久津智。彼女が死んだ母の遺言に従い「皆本るい」を探すところから物語は始まります。迫る事件を乗り越えていく中で出会い、運命に導かれるように集う智、るいをはじめとした6人の仲間たち…。彼女たちは全員、身体のどこかに共通の"痣"と、各々を孤独に追いやる"事情"を持っていることがわかり、結果彼女たちは自分たちの不幸を打破するため互いに協力する「同盟」を結びます。しかし、それでも仲間に言えない秘密を持つ智。それを明かすこと即ち死であるその秘密…なんと智は男の子だったのです。


という設定が面白いですね。孤独な少女たちが集まることで仲間となり自分たちの問題を解決していく・・・田中ロミオリスペクトを公言する日野亘さんが描く、「家族計画」的な集団生活ものなのでしょう。また、主人公が止むを得ず女装しているという(しかも一番かわいい)、稀に見る前提設定がかなりいい感じに物語の起伏を作ります。

「呪い」という言葉も、引用などではなく死をもたらす本当の意味での「呪い」です。また各々のヒロインが持つ、「呪い」と表裏になった「能力」、これらの超常現象を絡ませながら進むストーリーはなかなか読み応えがありますし、その呪いや能力の活用の仕方も、あくまで人間関係を描き込んでいくためのスパイスとして程よく扱われていて、その部分に頼り過ぎないバランスの良さも好印象です。また、それぞれが逆方向に向いている性格の6人ですが、ひとまとまりになると非常に良いチームに見えるのは、間違いなくテキスト作りのうまさがゆえです。


本作は、最初にるいルートが固定、最後に茜子ルートが固定されています。意外なことにサブヒロインレベルと思われていた茜子ルートで伏線回収を一気にはかるため、どうもタイトルにまで入っていてメインヒロイン扱いのはずのるいが後半薄くなってしまうのが難です。このことわざを使いたかったというだけではなく、タイトルにちなんだ大掛かりな設定が最後に仕組まれていたら、もうひと段階評価が上がっていたような気がします。最後の方は、ただの腹ばっか減ってるキャラになっていますから笑。

実はるいルート自体は全ルートの中でも1,2を争うほどに感動的なラストで、アクションありホラーあり仲間あり感動ありの、ひとつの完結するエンターテイメント作品としてある程度の完成度を以てまとまっています。ですが、一周目固定のため、謎や人物の絡みが非常に小さいルートなんですね。彼女のルートは、伏線云々解消というよりも、伏線提示の役割が大きいです。

その後ひとりひとりのルートで少しずつ伏線が解消されていきます。花鶏、こよりルートは閑話といった感じでかなりあっさりとしているのですが、最後の伊予、茜子ルートでの畳みかけるような伏線消化の連続は目を見張るものがあり、一連のヒロイン攻略すべてを経て本作が完結するという構成は個人的には好きな作りでした。


特に評価したいのは、仲間モノであるという空気を最後の最後まで崩さなかったこと。この手のゲームは、個別ルートに入ると、途端に「主人公とヒロインの物語」となってしまうことが多いのですが、本作はどの個別ヒロインルートに入っても、仲間である他ヒロインがしっかり活躍します。恋愛が前面にあるのではなく、あくまで仲間であることが優先されるんですね。特に、茜子ルートでのラストで、仲間全員で呪いを破棄する一連のシーンは、泣きと熱さを併せ持つ名シーンでしょう。「絆」が挿入歌として流れるのも鳥肌モノでした。

また、サブキャラクターである裏社会で生きる中国人少女尹央輝と、パルクールレースで協力を申し入れてくれる謎の少年才野原恵。この2名の使い方が非常にうまかったです。彼女たちは実は呪い持ちであるという設定を隠し持っているうえに、特に恵は呪い解除を阻止する役割を負っていますので、否が応にも盛り上がります。正直ラストの方は、彼女たちはヒロインよりも目立っています。


逆に良くなかった点は、共通パートのテキストがくどすぎる。各々の出会いと同盟、パルクールレースを経ての結束など、展開自体は面白いのですが、田中ロミオさんを意識しすぎているのか、とにかく無駄な言い回しや御託が多すぎて、物凄く読みにくいテキストになってしまっています。尺の長い共通ルートを経てOPが流れたのちに個別ルートに入るのですが、ここからは「今までのは何だったの」ってくらいに途端に読みやすくなりますので、まずはそこまで読み進めてからって感じですかね。


個別ルートでの呪いの行方や、恵と後見人との関係、央輝と企業とのつながり背景など、細かいところを見れば書き込みの薄い部分も粗もあります。さらに設定が素晴らしい「智が男である」ことがヒロインにバレるシーンは各個別ルートもっとうまく書き込んでほしかった。このシーンがどのヒロインルートでもあっさりしすぎていて、恋愛とちっともうまく絡めていないのはもったいないです。

それでも各々の思いと「呪い」というイレギュラーを立体的に絡ませて最後爽快に完結させたシナリオは評価できます。次作も期待される人気ライターさんであることは間違いありません。




【グラフィック】
原画はさえき北都さん、少しクセがあるように思えますが、キャラに躍動感を持たせるいい絵を描く方ですね。総じて問題なく高次元でまとまっている印象です。

るいのベースを弾いているCG、茜子を抱きしめるCG、央輝の能力発動のCGなど、残るいい絵がけっこうあります。それから能力発動の際の目のカットインは燃えますね。

あと、あかべぇ系列の会社すべてに言えることなんですけど、背景に力をもっと入れてほしいですよね。ここはマイナス点っす。


【キャラクター】
お気に入りヒロインはこれといっていません。これは悪いことではなく、6人のヒロインが本当に同じくらいの魅力を持っていたと思えるからです。しかし、仲間のヒロインたちよりも、智の方がかわいいというのが太刀悪いです笑。

でも一番好きだったのは尹央輝、彼女です。見た目の良さもさることながら、一見悪役で自己の信念を貫きながらも義は果たしてくれる、花鶏とはまた違ったタイプの孤高のキャラクターでした。彼女がもしヒロインの一角でしたら必ず良質なツンデリズムが体感できたというのに勿体無い。

脇役陣は少ない気もしましたが、バランスは実に良かったような気がします。上記の央輝、そして才野原恵、物語における超々キーパーソンである彼女たちの存在あっての本作です。彼女らの書き込みはよく出来ていましたし、特に恵に関しては、一連の事件でのジョーカーたる重要人物であると同時に泣きの部分も一手に担当してもらっているため、痛烈に印象に残っています。

一方で、記者三宅はたいした仕事もせずに常にさっくりと死んでしまう不憫な悪役キャラだったり、「語り屋」というおいしすぎる設定の割には、ヒントらしいヒントは何もくれないままほとんど登場しない蝉丸いずるさんなど、もったいない部分があったのも確かです。こよりのお姉さんの書き込みも圧倒的に足りていませんでした。CAコーポレーションが黒幕ってわけでもなかったし。


【音楽】
主題歌の「絆」、これいい歌ですね。マイナー調を入れ込んだ綺麗なメロディーが頭に残ります。BGMは、その「絆」をアレンジした類の曲と、泣きどころで流れる「必ず」、このあたりが印象に残っています。


というわけで、ダークホースるい智でした。
最初のもってまわったテキストを読み越えればひとまずOK、ラストの茜子ルートまでプレイしてはじめて評価のできる作品です。ネット上での評価も非常に高いですね、オススメです。


関連レビュー: るいは智を呼ぶファンディスク



テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

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