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【G線上の魔王】
G線上の魔王

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メーカーあかべぇそふとつぅ
シナリオ■■■■■■■■■■ 10
グラフィック■■■■■■■■□ 8.5
キャラクター■■■■■■■■□ 8.5
音楽■■■■■■■■■■ 10
ラストスパート■■■■■■■■■■ 10
総合【S】 93点

サヨナラ場外満塁ホームラン

2008年トップクラスです。本当に素晴らしい作品でした。シナリオるーすぼーい+原画有葉+あかべぇそふとつぅは、「その横顔を見つめてしまう」「車輪の国、向日葵の少女」で人気爆発した、ユーザー支持の非常に高い人気チームですね。そんな期待を一新に背負い、且つ発売時期の大幅延期という状況にありながらも高いユーザー評価を得たことは、単純に凄いことだと思います。

【シナリオ】
まずはシナリオのすばらしさに賛辞を送りたい。スピード感のあるシナリオ展開に読み手を唸らせる構成の巧みさ、そしてとにもかくにもラストシーン!!ラストシーンの感動は半端ではないです。第五章の怒涛の展開とラストシーンの大号泣が本作を一気にS評価まで押し上げました。

主人公浅井京介は、高校生であるかたわらヤクザの組長である養父権三のビジネスを手伝い、冷淡で容赦のない手口で確実な手腕をふるい頭角を現しています。そんな彼も昼はクラシックを愛しクラスメイトや妹と仲良くやっている一介の学生、裏の顔を持つ彼にとって昼の生活はかけがえのない安息の時間となっています。

ある日、一部の人間しか知らないはずの彼の仕事用PCに、シューベルトの歌曲「魔王」に謎らえた一通のメールが届きます。差出人は「魔王」。最近、浅井興業のビジネスを妨害している人物の名前や、街で噂になっている少年失踪事件の首謀者としてささやかれている名前も、同じく「魔王」。

そんな中、宇佐美ハルという一風、というかかなり変わった転校生が京介に対して問い掛けます。

「魔王、知らないか?」

基本的にダウナーながらも、時として常人を逸する推理力と判断力を見せるハル。魔王を追う、という一点において利害が一致した二人は共に謎の人物「魔王」を追うことになるのですが…。

かつてない事件と命をかけた純愛が幕をあげる―。


んー、これは面白そうですね~!!実際僕もこのシナリオ導入と、疾走感あふれるOPムービーを見て、是が非でもプレイをしなければと思ったものです。発売延期をしてもその思いは衰えませんでした。

ハルと魔王、加えて権三への恐怖もありビジネスを失敗させないように躍起となる京介の暗躍なども手伝い、非常に読ませる心理戦が展開されます。そもそも魔王とは誰なのか。様々な伏線は、京介が魔王であることをリードしていますが、それは恐らくミスリード…と思いきやそれこそが真実なのか!?
…と、書きましたが、魔王の正体は実は比較的わかりやすく、誰もがあっと驚く超展開というわけではありません。本当の超展開はさらに後に待っているわけですから。

基本は、一本道のハルルートに向かう根幹シナリオがあって、選択肢により各章でヒロインルートに枝分かれする感じです。2章で分岐するのはクラスメイトの椿姫ルート。ここで描かれるのは家族愛、魔王にそそのかされ自己欲と家族愛との間で揺れ動く椿姫と、当初はビジネスのために椿姫を切り捨てようとしていた京介が温かさに触れ変わっていく話です。

続いて3章で分岐するのは義妹である花音ルート。フィギュアスケート界の期待の新星である花音に魔王から脅迫状が届き、大会演技に向き合う花音と、脅迫を阻止しようと動く周囲が並行して描かれるこのシナリオ、ここで描かれるのは親子愛です。妄信的に子を想う歪んだ母親と世間の期待をひとり背負い続ける花音との和解が描かれるわけですが、その展開のもっていき方といいますか、フィギュアスケート大会本番に向けての山のつくり方ですね、それは魔王とハルたちの攻防戦においても、そして花音と母親の関係においても、非常に巧みです。

ハル以外の3ヒロインの中では頭ひとつ抜けているのが花音ルートだと思います。ラストの、演技後の花音のインタビューシーンでは存分に泣きも入ります。

そして第4章はクラスメイトの水羽ルート、ここで描かれるのは姉妹愛でしょう。このルートは他と違い、京介と水羽が恋人となって数年後、といった描かれ方がされます。ハルの友人であるユキが姉であり、歪んだ家庭環境を持ってしまっている彼女と水羽の心の通わせ合いが肝です。…とはいえど、ちょっと水羽という人物のシナリオへの関わり具合が希薄なのもあって、書き込みが足りないのが残念なところですかね。


そしてそれらの枝をせっせと切り捨てていくと笑、本筋ハルルートが待っています。ここで描かれるのはまさに純愛、ゲームの謳い文句、「命をかけた純愛」に恥じないストーリーが待っています。これまでの章が霞んでしまうくらい、第5章は圧倒的なスケールで魔王の計画が実行されていきます。読む者を引きこむ展開はるーすぼーいさん見事すぎますね。

テロリストとしての魔王の一連の行動も壮大且つ派手で、京介の兄という伏線も、予想こそできるものの、鮮やかな演出で魅せてくれます。

とにかく第5章の京介はかっこいいです。それまでは行動も後手後手で、周囲の人間を利用することしか考えていない、主人公としてはイマイチの彼だったんですが、この章ではふっきれたかのようにすべての行動、ハルへの思いが男気に溢れています。

そしてそして最後の最後、死んだと思いきや魔王が生きていた最終章はやばすぎるでしょう。魔王の正体よりも、これこそが本当に狙っていたドンデン返しなんでしょうね。その後の京介取り調べシーンは、エロゲ界の超重要シーン認定します。問答無用です。

いやね、おかしいと思ったんですよ実際。エンドロールで"挿入歌「Close your eyes」"というくだりを見たときに、「挿入歌なんてあったっけ…?」と思ったわけですよ。そういうことかい!!そういうことなのね!!


わたし、大号泣ですよ!!


難点としては、第5章以降のハルルートがあまりにも際立っていることと、伏線がそこで一気に回収されることから、4章までで分岐していく他ヒロインルートがやはりどうしても薄い。それぞれのシナリオは、そりゃあそこらへんのゲームに比べたらレベルが違うのですが、それでも伏線未消化で魔王の存在も有耶無耶に終わりますし、どうしてもオマケ感が否めないのは残念なところですね。

とはいえどシナリオ10点です。まさに命をかけた純愛を見せてくれたラストの展開は、涙泪のスタンディングオベーションです。


【グラフィック】
原画は言わずもがなの有葉さんです。実力派ですし、かわいいし上手いですが、正直なところこの幼めの絵がシナリオにあっていたのかどうかは少し疑問なところです…と根本を疑問に思っちゃダメですかね。有葉さんの絵自体は嫌いじゃないです、ハイ。

また、OPムービーは最高の出来でしょう。あれを見て一気に引き込まれたわけですからね。


【キャラクター】
すでに述べましたが、ヒロイン勢が正直少し弱めです。シナリオは圧倒的にハル、キャラもやっぱりハル、ということでどうしても他ヒロインが薄くならざるを得なかった、というのが実際のところですね。しゃーない、これは。

繰り返しますが、メインヒロインの宇佐美ハルだけはそのキャラクターや存在感が突出しています。普段はスーパーダウナー系で、この手のメインヒロインというと「あしたの雪之丞2」のあきらを思い出します。ハルはそのダウナーぶりが半端じゃないものの、推理モードに切り替わった時は「別人ですか」と思うほどかっこよくなります。やっぱギャップてのは大切な要素ですよ。まぁただ普段のダウナー部分は、こんな女の子実際にいたら引きますけどね

花音がハル以外の3ヒロインの中では一番かな。独特の声質で独特の台詞まわしをする河合春華さんがまたいい。彼女のあの舌足らずな感じの声は賛否分かれそうですが、僕は凄く好きなんですね。

主人公の浅井京介は当初、父親への恐怖から、裏稼業を失敗させないため常に「仕事>仲間・ヒロイン」という価値観で、そのためにヒロインを踏み台にするのも厭わないという人間でした。しかしだからこそ変わっていく彼はかっこいい。はじめから主人公としてカッコよさが立っているのも勿論良いですが、京介のように、ダーティヒーローが変化していく様はまた違うかっこよさがあります。

ヤクザの養父、権三は最初から最後までキャラが立ちまくっていました。彼の存在感は本作に大貢献しています。彼の死に様と"父親"としての責務には心を打たれました。そして友人の栄一、彼もギャグ担当だったのが一転、第5章、最終章ではやってくれたぜ。特に留置所に送られてくる手紙はやばすぎるでしょ。

そして、魔王。彼ありきの本作であり、最高の立役者でした。結局とても不幸な人で最後の最後まで救われないまま死んでしまいましたが、あなたの仕掛けた最後の罠のおかげでいったい何人のゲーマーが温かい涙で満たされたことでしょう。うん。


【音楽】
音楽にも10点をつけたいと思います。量も申し分なく、また往年のクラシック名曲をリメイクしたBGMの数々。

はっきりいってどれもいいのですが、その中でも特に、タイトルやシナリオ内でも引き合いに出されている「G線上のアリア」、タイトルメニュー画面でもBGMとして利用されていますが、各ルートをクリアするごとに楽器が多重奏に増していく仕組みは非常に高評価ですし、全ルートをクリアしたときに完成する曲と、街に朝陽が差したCG画面は感動的です。

さらに疾走感あるOP「Answer」が素晴らしいです。片霧さんはこの手の勢いある曲の方が生きてくる気がします。そしてなんといっても挿入歌「Close Your Eyes」、これが流れるシーンは神がかっています。嗚咽せよ!


以上、G線上の魔王です。2008年最大級作品であることは間違いなし、絶対プレイすべし。とにかくラストシーン!このラストシーンを経てなんも感じない人は、ヒトぢゃねえよ!!




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